東京下町満喫の旅、柴又丸一日散策ガイド

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筆者 : GOOD LUCK TRIP

高層ビル群や流行の発信地を巡る最先端の東京旅もいいけれど、歴史と文化をゆったり味わう下町散歩も東京旅の魅力の一つ。日本の国民的映画『男はつらいよ』の舞台となった「柴又」は、由緒正しい門前町。懐かしい街並み、和食に和菓子、風情、人情といった下町の魅力が凝縮されている。東京にきたら、柴又をのんびり散歩すれば、タイムスリップしたような懐かしさと日本の魅力を存分に味わえるだろう。

東京下町散歩にぴったりの「柴又帝釈天参道」
東京下町散歩にぴったりの「柴又帝釈天参道」

柴又へのアクセス方法は?

東京の北東部に位置する葛飾区柴又。400年以上の歴史を持つ寺院・柴又帝釈天と、その参道を中心に発展した街で、京成金町線「柴又駅」から徒歩数分で行ける散策に適した街だ。

この柴又駅を有する京成線は、羽田空港とも成田空港ともつながっているため、各空港からも比較的アクセスが良く、1時間30分程度でたどり着ける。都心部からはおおよそ1時間程度で、東京観光の目玉・スカイツリーの最寄り「押上駅」からだと、僅か30分で到着できる。

柴又への行き方

  • 羽田空港から:電車で1時間20分。
  • 成田空港から:電車で1時間30分。
  • 新宿駅から:JR山手線で「日暮里」駅へ行き、京成本線に乗り換えて「京成高砂」駅へ行き、さらに京成金町線に乗り換えて「柴又」駅へ(所要時間60分)。
  • 東京駅から:JR山手線で「西日暮里」駅へ行き、東京メトロ千代田線に乗り換えて「金町」駅へ行き、さらに京成金町線に乗り換えて「柴又」駅へ (所要時間50分)。
  • 押上駅から:電車で30分。

東京下町を満喫〜歴史と文化が薫る柴又マル一日お散歩コース

下町情緒溢れる「柴又」を味わい尽くすなら、なんといってもお散歩がおすすめ。
これから紹介する各スポットは、柴又駅からすべて徒歩で巡れる!お参りからの、グルメ、懐かしい街並み、歴史的建造物、そして雄大な自然。散策の楽しみがギュッと詰まった、充実のコースを紹介しよう。

1. 柴又駅前から帝釈天参道

京成金町線の「柴又駅」に降り立ったあなた。まずは寄り道せず、参道を通ってまっすぐ帝釈天を目指そう。

寅さんの銅像がお出迎え

柴又駅で出迎えてくれるのは映画『男はつらいよ』の主人公・寅さんと妹さくらの銅像。「旅に出る寅さんが振り返った姿」をモチーフとした寅さん像。寅さんの表情やしぐさがとてもリアル。映画の1シーンのようで思わず記念写真を撮りたくなる人気の写真スポット。

柴又駅前の寅さん像 
🄫Shochiku Co.,Ltd.
柴又駅前の寅さん像
🄫Shochiku Co.,Ltd.

柴又観光案内所で観光の情報を入手

柴又駅前から帝釈天参道に向かって歩く途中、参道入り口手前に柴又観光案内所がある。葛飾区や柴又、東京全体のMAPや観光パンフレットを設置してあるので、柴又散歩の前に立ち寄ってチェック。

2. 柴又帝釈天を参拝

まずは柴又のシンボル「帝釈天」を目指そう。
柴又駅から帝釈天に続く参道は、賑やかで美味しそうなお店も多い。食べ歩きや散策をしたくなるが、最初に参拝をするのが日本人のマナー。誘惑に負けず真っ直ぐ帝釈天を目指し、参拝後に参道を散策しよう。

帝釈天参道の入り口
帝釈天参道の入り口

柴又帝釈天を参拝

病気平癒のご利益があるとされ、400年近く、庶民に広く信仰されている帝釈天。芸術的な美しさの二天門から入ると正面に「帝釈堂」が建っている。
帝釈堂は、帝釈天のメインスポットとして多くの人が参拝している。帝釈堂に覆いかぶさるかのように茂るクロマツは「瑞龍の松」と呼ばれる。樹齢は400年をゆうに越え、「東京都指定天然記念物」に指定されている。上方にまっすぐ伸びる幹と三方に長く伸びた大枝から成る姿が、龍が天に昇るように見えることから、この名がついたと言われている。

帝釈堂。手前には「瑞龍の松」
帝釈堂。手前には「瑞龍の松」

帝釈堂の右手から彫刻ギャラリー、大客殿へとつながる廊下は拝観料400円(子供200円)かかるが、国宝級ともいわれる精巧な彫刻が並んでおり、一見の価値あり。また、大客殿から見られる邃渓園(すいけいえん)という庭園は、都心部とは思えない優美な景色を見せてくれる。

邃渓園から見られる美しい庭園
邃渓園から見られる美しい庭園

3. 帝釈天参道でグルメとお土産散策

お参りをすませたら、参道を折り返し、ぶらぶらお散歩。帝釈天で視覚と聴覚を満足させたので、次はいよいよ味覚かしら。活気あふれる参道のあちこちからおいしそうな香りも漂ってくる。帝釈天参道には百年以上続いている老舗がたくさんあるし、珍しいお土産も多い。歩いて、見て、食べてじっくり楽しもう。

持てば開運?!歴史ある郷土玩具「弾き猿」

帝釈天を出たら、門前に園田神仏具店がある。ちょっと覗いてみよう。そこで売られているのは、伝統的な柴又の郷土玩具。棒にしがみつく猿をはじいて遊ぶ、その名も「はじき猿」。猿は帝釈天のお使いとされ、「災難をはじき去り、運を跳ね上げる」という意味が込められていることから、開運のご利益があるといわれている。お土産にぜひ。

「災難をはじき去り、運を跳ね上げる」弾き猿
「災難をはじき去り、運を跳ね上げる」弾き猿

柴又と言えば「草だんご」

柴又グルメの代表である草団子。映画『男はつらいよ』の寅さんの実家も団子屋。お店に入って落ち着いて食べるもよし、食べ歩きをするもよし、数ある団子屋の団子を食べ比べてみるもよし。

柴又グルメの代表「草団子」
柴又グルメの代表「草団子」

帝釈天から一番近いおだんご屋「亀家本舗」は、創業1901年という老舗。『男はつらいよ』寅さんの実家であるお団子屋さんのモデルになったお店の1つで、ロケ地としても有名。当時のままの店構えというわけではないが、懐かしい雰囲気は残っている。

「亀家本舗」の雰囲気たっぷりの店構え
「亀家本舗」の雰囲気たっぷりの店構え

亀家本舗の他にも、映画『男はつらいよ』の出演者・スタッフに愛された「高木屋老舗」、映画に使用された「とらや」、店頭で作っている様子も見られる「吉野家」、「大和家」など、参道にはたくさんの老舗団子屋が並ぶ。少しずつ買って食べ比べてみるのも楽しい。

江戸前グルメ最高峰。ちょっと贅沢に川魚料理「鰻重」

川が近い柴又では、昔から鰻や鯉などの川魚がよく捕れ、旅人や寺社の参詣客に川魚料理をもてなす店があった。日本の小説などの文学作品にも柴又の川魚料理店が度々登場するほど、名物として世に知られている。現在も多くの川魚料理店があり、中でも「川千家(かわちや)」は250年以上愛されてきた老舗。由緒ある旅館のようなたたずまいで、「元祖川魚割烹」と書かれた看板は重厚感があり、貫録がある。

由緒正しい佇まいの「川千家」
由緒正しい佇まいの「川千家」

食堂、お座敷(コース)、仕出し、持ち帰りが可能で、お一人様から大勢様まで幅広く利用できる。
食堂から見える中庭は、四季折々の景色でわたしたちの目を楽しませ、心を和ませてくれる。

食堂から見える美しい中庭
食堂から見える美しい中庭

お店を語るうえで外せないのが、「うな重」。創業当初からの味を大切に受け継いできた、こだわりのうな重。経験と技術を重ねた職人だけがたどりつける、絶妙な焼き加減。
主役のうなぎは、季節に応じて養殖の産地を変えるなど、選び抜かれたもの。

高級江戸前グルメ「鰻重」
高級江戸前グルメ「鰻重」

川千家の他にも、「ゑびす家」「川甚」など創業200年を超える歴史ある川魚料理店がたくさんあるので、柴又にきたら川魚料理をぜひ味わってほしい。

伝統を生かした新しいスイーツ「米米ロール」

参道の中ほど、甘い香りで道行く人を惹きつけているのは和菓子屋「い志い」。
名物・人気商品はたくさんあるが、特にオススメなのは「米から生まれた 米米ロール」。和菓子には米を使ったものが多いことから、米を使用した洋菓子を開発しようと作られた。米粉を焼き上げたもちもちの生地で、純生クリームをたっぷりと包み、仕上げに高級和砂糖の「和三盆」をふりかけ、直に炙っておこげ仕上げにしてある。良い素材をシンプルに味わえる、表面はカリカリ、中はもちもちのふわふわの新感覚ロールケーキ。

外はカリカリ、中はふわふわ「米米ロール」
外はカリカリ、中はふわふわ「米米ロール」

お土産にも食べ歩きにも最適「煎餅」

団子、川魚料理と並んで有名な柴又グルメがせんべい。焼きたてをサクサク食べるもよし、お土産に買って帰るもよし。香ばしい香りに誘われるまま、せんべい屋も覗いてみよう。
柴又駅から5分程の帝釈天参道にある「浅野屋煎餅店」。生地から手造りで、店内では一枚一枚網の上でお煎餅を手焼きしている。醤油の焦げるいい匂いが漂ってくる。製造元こだわりの手造り煎餅はお土産にも喜ばれる。他にも「金子屋」「立花屋」などの煎餅屋がいろいろな味の煎餅を販売している。

店頭に煎餅の入った瓶が並ぶ
店頭に煎餅の入った瓶が並ぶ

童心に返って遊ぼう「柴又ハイカラ横丁」

グルメを堪能しながら帝釈天から引き返し、参道の出口まで来ると、異彩を放つ建物が。ここは「柴又ハイカラ横丁」。入り口にはロボット型の自動販売機。ここはいわゆる昔の東京の子供たちの社交場、駄菓子屋。

異彩を放つ「柴又ハイカラ横丁」
異彩を放つ「柴又ハイカラ横丁」

懐かしい物から最近のものまで、所狭しと駄菓子が並ぶ。値段もバラのものは数十円のものがほとんど。童心に帰って物色しよう。少しだけ買うもよし、大人買いもよし。ゲームができるコーナーもあるが、勿論今のゲームセンターにあるようなゲームではなく、レトロで原始的な物ばかり。

1階入口を入るとすぐ、駄菓子に包まれる幸せな世界が現れる
1階入口を入るとすぐ、駄菓子に包まれる幸せな世界が現れる

2階はおもちゃ博物館。入場券は1階駄菓子屋さんのレジで購入でき、半世紀前の子供たちをとりこにしたおもちゃの数々が展示されている。

4. 足を延ばして江戸川沿いのエリアへ

下町グルメを堪能しながら「柴又駅」前まで戻ったら、今度は、腹ごなしもかねて少し歩こう。10分程度歩けば、眺めも空気も気持ちが良い江戸川沿いのエリアへ出る。山本亭柴又公園葛飾柴又寅さん記念館矢切の渡しなど、このあたりも見どころたくさん。

日常を忘れて、優雅な時間を。世界が認める美しすぎる日本庭園「山本亭」

柴又にあったカメラ部品工場の創立者・山本氏の元自宅。およそ100年前に建てられたこの邸宅は、趣ある書院造に西洋建築を取り入れた、近代和風の建築が特徴。山本亭の一番の魅力は美しい日本庭園。米国の日本庭園専門雑誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」で毎年上位。僅か100円でその美しい庭園を眺めながら、抹茶と和菓子(別料金)を頂きつつ寛げる。池の最も遠いエリアに滝が設けられ、奥行き深い庭園。

「山本亭」から見える美しい日本庭園
「山本亭」から見える美しい日本庭園

木漏れ日の下、純和風の庭園を眺めながら、抹茶やコーヒーといったドリンクから、ぜんざいなど甘味もある。有形文化財でありながら、その邸内で飲食を楽しめるという贅沢。しかも、各メニュー500円前後というお手頃価格なのも嬉しい。

練り切り付きのお抹茶
練り切り付きのお抹茶

日本昭和レトロな雰囲気をたっぷり感じられる、映画の世界へGO。「葛飾柴又寅さん記念館」

日本の国民的映画『男はつらいよ』の世界にもっと深く触れたければ、葛飾柴又寅さん記念館へ。その館内には、寅さんが必ず帰ってくる場所、葛飾柴又の団子屋「くるまや」が再現されている。これは実際に使用されていたセットを移設したものなので、自身が映画の世界に入り込んだような気分になれる。

実際に使用されていた「くるまや」のセット
©Katsushika Shibamata Tora-san Museum 🄫Shochiku Co.,Ltd.
実際に使用されていた「くるまや」のセット
©Katsushika Shibamata Tora-san Museum 🄫Shochiku Co.,Ltd.

作品中で使用した小道具など、貴重な資料の数々を陳列している。映画を観たことがない人も、もちろん楽しめるのでご安心を。1950~1960年頃の葛飾柴又の町並をイメージしてつくられたコーナーがあり、絶好のフォトスポット。こだわりの模型、懐かしい音声が聞こえるホールなど、半世紀前の日本を体感できる。

1960年前後の日本古い町並みを精巧に再現
©Katsushika Shibamata Tora-san Museum 🄫Shochiku Co.,Ltd.
1960年前後の日本古い町並みを精巧に再現
©Katsushika Shibamata Tora-san Museum 🄫Shochiku Co.,Ltd.

映画についてさらに深く知るなら「山田洋次ミュージアム」

寅さん記念館のチケットで、山田洋次ミュージアムにも入館できる。山田監督の紹介、撮影に使ったフィルム、山田監督作品の予告映像なども見られる。

山田洋次監督の映画作りへのおもいが込められた「山田洋次ミュージアム」
©Yamada Yoji Museum 🄫Shochiku Co.,Ltd.
山田洋次監督の映画作りへのおもいが込められた「山田洋次ミュージアム」
©Yamada Yoji Museum 🄫Shochiku Co.,Ltd.

5. 雄大な川の風景の中でゆっくりした時間の流れを楽しもう

柴又散歩の締めくくりは、江戸川河川敷。川を眺め、のんびりとした懐かしい雰囲気に浸ろう。

江戸川沿いの風景
江戸川沿いの風景

広々のんびり「柴又公園」

江戸川河川敷に広がる柴又公園は、江戸川の青い水と木々の緑がとても気持ち良い広場。野球場もあり、レクリエーションやスポーツの場として楽しまれている。

江戸川河川敷に広がる柴又公園
江戸川河川敷に広がる柴又公園

川に浮かぶ気になる建物。「金町浄水場の取水塔」

川の中腹にある、とんがり帽子の屋根のかわいい建物は「金町浄水場の取水塔」。1941年竣工の取水塔で、映画『男はつらいよ』や漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』にも登場している。近づいてみるとその大きさに驚くはず。

青空に映える「金町浄水場の取水塔」
青空に映える「金町浄水場の取水塔」

ゆったりと川を渡ろう「矢切の渡し」

柴又に来たらぜひ体験したい「矢切の渡し」。木造の船で、柴又から対岸の千葉県松戸市までわたる、東京都内に唯一残る貴重な渡し場。天気が良ければ、風が心地よく、遠くにスカイツリーも見える。街の喧騒が遠のき、水音、鳥の声、時折鉄橋を走る電車の音が聞こえる。

江戸川を満喫できる「矢切の渡し」
江戸川を満喫できる「矢切の渡し」

6. 疲れたら柴又で1泊してはいかがでしょうか?

疲れたので柴又で一泊してゆっくりしたい!という方におすすめなのが「SHIBAMATA FU-TEN BED&LOCAL」。葛飾区役所の職員寮だった建物をリノベーションしたおしゃれなホステル。
一泊4000円弱から宿泊できるので、ふらっと泊まるもよし、ここを旅の拠点にするのもよし。シンプルな和室や和洋室といった一般客室の他、4階には14名の日本国内外のアーティストとコラボしてつくられた「アーティストルーム」がある。アーティストそれぞれの手法やイメージで「柴又」を表現した客室になっており、個性あふれるフォトジェニックな客室。

斬新な内装の「アーティストルーム」
斬新な内装の「アーティストルーム」

東京下町は柴又だけでない!柴又周辺も古き良き東京情緒がいっぱい

柴又から少し足を延ばしてまた違った雰囲気の下町へ訪れてみるのもいい。少し電車で移動するだけで、別世界なのもこのあたりの魅力。

柴又から少しだけの電車移動で東京下町の旅が続く
柴又から少しだけの電車移動で東京下町の旅が続く

柴又から亀有へ

京成金町線で「金町駅」まで出て、そこからJR常磐線に乗り「亀有駅」へ。15~20分ほどで到着する。「亀有」といえば、人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の舞台として有名。

柴又から立石へ

京成金町線で「京成高砂駅」まで出て、そこから京成本線に乗り「京成立石駅」へ。15~20分ほどで到着する。「立石」といえば、味も雰囲気も抜群の安くておいしい酒場が点在していることで有名。昼から梯子酒もできるし、一日の締めに軽く一杯というのも楽しい。

【まとめ】レトロな町柴又を散策して、思い出に浸ろう

下町散歩に適した柴又の魅力がおわかりいただけただろうか。
人情にあふれ、歴史ある建築物や懐かしい街並み、雄大な川沿いの風景を眺め、下町らしい賑わいや、帝釈天の鐘の音、江戸川のせせらぎに耳を澄ませる。帝釈天参道に漂うおいしそうな香りに誘われるまま、団子や和菓子、煎餅に川魚料理といった下町グルメに舌鼓を打つ。駄菓子や昔懐かしのレトロなゲームに興じたり、映画『男はつらいよ』の世界に触れたり、都会の喧騒と旅の疲れを忘れさせてくれます
…。
五感を楽しませ、癒してくれる街、柴又。おまけに400年以上信仰されている帝釈天というパワースポットで勝負運をチャージ。初めてでも何度も東京に訪れた方でも、ここ東京柴又をのんびり散歩すれば、古い日本の歴史と文化をゆったり味わい、タイムスリップしたような懐かしい気分に浸れること間違いなしだ。