富山県・南砺市2泊3日の旅〜城端、井波、そして世界遺産の五箇山へ

富山県・南砺市2泊3日の旅〜城端、井波、そして世界遺産の五箇山へ

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筆者 : GOOD LUCK TRIP

東京駅から約2時間半。北陸新幹線の新高岡駅でJR城端線に乗り換えて、のどかな砺波平野を南下して行きつく終点は南砺市城端駅。
今回の旅は、歴史と文化に彩られたこの南砺市城端を基点に、数多くの木彫り職人の工房が軒を連ねる井波の町、どこか懐かしさを感じさせる合掌造りの集落、五箇山へと足を延ばして、富山県南砺市の魅力をお届けします。

Day1. 江戸情緒たっぷりの曳山祭りが行われる城端の町を巡る旅

北陸新幹線新高岡から城端線で約50分、城端の町に降り立ちます。
江戸時代(1603~1868)に絹織物で財をなした城端には、町家づくりの家並に格子戸、白壁、石畳の通り、路地が数多く残っています。

城端曳山会館

最初に訪れるべきスポットとしては城端曳山会館がおすすめです。会館のロビーで放映される城端曳山祭のドキュメンタリー映像を観るためです。

300年の伝統を誇るこの祭りは、毎年5月4日から始まり、本祭りの5月5日になると、6台の山車が町中の路地を練り歩き、笛や三味線と唄をともなう「庵屋台」が山車を先導する独特の世界感を持っています。

ユネスコ世界無形文化遺産に登録された城端曳山祭の山車は圧巻
ユネスコ世界無形文化遺産に登録された城端曳山祭の山車は圧巻

館長によると、「山車は京(京都)の文化、歌は江戸(東京)の文化」と言われ、日本の東西文化の融合がみられるそうです。2016年には全国33の曳山行事とともに、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。城端の町を歩き出す前に、山車が練り歩く映像を、ご覧になってはいかがでしょうか。

山車には豪華な装飾がいたるところに。精緻な木彫刻と城端塗。
山車には豪華な装飾がいたるところに。精緻な木彫刻と城端塗。

城端曳山会館 基本情報

住所
〒939-1864 富山県南砺市城端579-3
TEL
0763-62-2165
営業時間
9:00 - 17:00
定休日
年末年始(12/29~1/3)
料金
大人520円、高校・大学310円、中学生以下無料
公式サイト
公式サイト

城端曳山祭

開催日
毎年5/4~5/5
開催時間
9:00 - 23:00頃まで(宵祭りの4日は夕方から)
電話
0763-62-1201(南砺市観光協会)
公式サイト
公式サイト

城端の中心地にある城端曳山会館から、さっそく歩いてみることにしましょう。
町中には土蔵が立ち並ぶ通りや銅版の外壁がレトロな旧銭湯など、思わず立ち寄りたくなるスポットが点在しています。

善徳寺

まずは城端がその門前町として発展した善徳寺へ。創建から540年とその歴史は古く、樹齢370年という糸桜が咲く春には、「しだれ桜祭り」が行われ、普段は公開されていない「式台門」などを見学することができます。

城端は善徳寺の門前町として栄えた。
城端は善徳寺の門前町として栄えた。

また、善徳寺は蓮如ゆかりの品々や加賀藩前田家から寄進された寺宝をなんと1万点以上も所有しており、毎年7月の「虫干法話」の時期には宝物の展示や解説が行われています。
さらに驚くべきことに、毎日朝と昼の2回、法話が365日かかすことなく行われています。誰でも自由に聴聞できるので、その時間に合わせて訪れてみたいところです。

善徳寺の本堂。毎日2回の法話はどなたでも参加可能。
善徳寺の本堂。毎日2回の法話はどなたでも参加可能。

善徳寺 基本情報

住所
〒939-1863 富山県南砺市城端405
TEL
0763-62-0026
営業時間
9:00~17:00
定休日
無休
料金
400円(係りの方が別途ご案内します)
公式サイト
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法話(毎日)

晨朝勤行
6:30~7:30頃まで / 常例勤行:14:00~15:30頃まで
※どなたでも聴聞は自由。
公式サイト
公式サイト

今町通り

善徳寺の山門から出て右に歩くと、今町通りに入っていきます。
土蔵と白壁と石畳が続く趣ある通りは、城端の数ある路地の中でも人気の高いスポットと言えます。ここ今町通りに現存しているフォトジェニックな4棟の土蔵は、旧野村銀行を経営していた野村家のもので、格子と白壁は往時をしのぶ城端のシンボルとなっています。

ちょうど城端曳山会館の裏手となる場所で、祭りのときには山車が練り歩く巡行路となっています。それもそのはず、車輪の轍のような跡が、石畳の上にうっすらと残っているではありませんか。高さ約7メートル、重さ6トンの山車が、車輪をきしませながら石畳を静かに進む映像を思い出します。

格子と城壁の土蔵が残る今町通り。祭りでは山車の行列が通る。
格子と城壁の土蔵が残る今町通り。祭りでは山車の行列が通る。

今町通り 基本情報

住所
〒939-1864 富山県南砺市城端579-3
公式サイト
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手作りの店 桂湯(かつらゆ)

さらに通りを進んだ右手には、その昔銭湯だった「桂湯」のレトロな建物が見えてきます。いまは、手作りの小物の販売や雑貨ギャラリーとして、この通りのユニークな存在となっています。

旧銭湯の桂湯は、銅版を貼った外壁がレトロさを醸し出している。
旧銭湯の桂湯は、銅版を貼った外壁がレトロさを醸し出している。
住所
〒939-1864 富山県南砺市城端590
TEL
0763-62-0661
営業時間
10:00 - 16:00
定休日
不定休

オススメ宿泊情報 - 城端で泊まりたい里山のオーベルジュ

城端の中心部から少し離れた美しい里山にひっそりたたずむ「薪の音」は、お箸でいただくフレンチや薪で炊いたごはん、のどかな風景を眺めながら浸かれるお風呂などが楽しめる小さな宿です(1日3組限定)。

自家菜園で採れたての季節の野菜。彩り豊かで見た目も楽しい。
自家菜園で採れたての季節の野菜。彩り豊かで見た目も楽しい。

もともとこの土地の農家であるご主人と、そのご家族が営なむオーベルジュで、自家菜園の野菜など、季節ごとの素材を活かした料理とおもてなしが自慢です。
宿泊プランや料金の詳細はホームページから確認してみてください。

この景色を見て育ったというご主人の思いをお聞きして納得。
この景色を見て育ったというご主人の思いをお聞きして納得。

里山のオーベルジュ 薪の音

住所
〒939-1844 富山県南砺市野口140
TEL
0763-62-3255(受付時間:10:00 - 18:00)
公式サイト
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Day2. 木彫り職人の工房が、石畳の通りに軒を連ねる井波の町へ

城端からバスで約20分、名刹「瑞泉寺」の門前町として発展した井波の町へ足を延ばしてみます。実はここ井波は知る人ぞ知る木彫刻の町なのです。

瑞泉寺

井波の彫刻が発展した歴史は、瑞泉寺が1763年に火災によって焼失したことに端を発しています。その再建のために京都本願寺から派遣された御用彫刻師の前川三四郎が、地元の大工たちにその技術を伝えたことが井波彫刻の始まりです。

その後、幾度かの再建により井波彫刻の技術の粋を集めた瑞泉寺は、現在も本堂、太子堂、山門には精巧な彫刻の数々を見て取ることができます。特に前川三四郎の「雲水一疋竜(うんすいいっぴきりゅう」は、精緻でありながら大胆な動きを感じさせる作品で、山門正面からいまも私たちを見下ろしてくれています。

前川三四郎作「雲水一疋竜」は、瑞泉寺の山門正面にある。
前川三四郎作「雲水一疋竜」は、瑞泉寺の山門正面にある。

瑞泉寺 基本情報

住所
〒932-0211 富山県南砺市井波3050
TEL
0763-82-0004
営業時間
9:00 - 16:30
休館日
無休
料金
大人500円 中学生以下無料
公式サイト
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南砺市いなみ国際木彫刻キャンプ

井波では4年に一度、世界各国から木彫り職人が招かれて公開制作が行われています。野外で原木を作品に仕上げるという制作過程がみられる「南砺市いなみ国際木彫刻キャンプ」は2019年に第8回目が開催されています。

壮大な世界感を持つ作品に圧倒される。見学自由なのが驚きだ。
壮大な世界感を持つ作品に圧倒される。見学自由なのが驚きだ。

八日町通り

瑞泉寺に向かってまっすぐ伸びる「八日町通り」を歩いてみると、」木彫り職人の工房が数多く軒を連ねています。
ここには若い職人が全国から入門してくるという、木彫刻とともに歩んでいる町といえます。瑞泉寺の幾度の再建とともに木彫刻が発展してきた歴史があるように、現代においてもその技術を後世に伝えていく工夫が作品づくりの工程にあるようです。

師がざっくりと形を彫り出す「粗落とし」と、その後に仕上げを弟子が行う、という仕組みが息づいているのです。そのせいなのか木彫り職人の工房前には、「ご自由にお入りください」という案内版が下がっているのが目につきます。工房に自由に入ることなど、よほどの顔見知りにならないと無理なのでは、と考えがちですが、井波の彫刻工房が実にオープンなのには驚かされます。表の戸をがらがらっと開けて、「こんにちは」と入っていっても、職人さんは作業を進めながら「どうぞ」とおっしゃってくれるのです。こんなところにも井波彫刻の粋と懐の深さを感じさせられます。木彫り職人の工房は心地よい木槌の音と静寂に包まれています。

作業中であってもこの案内板が下がっていたら見学ができる。
作業中であってもこの案内板が下がっていたら見学ができる。

八日町通り 基本情報

住所
〒932-0211 富山県南砺市井波(八日町通り)
公式サイト
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オススメ体験情報 - 木のぐい呑み作り体験が楽しめる

井波で彫刻体験ができるというので、さっそく訪ねてみました。職人さんの指導のもとに、実際の木彫刻の作品作りに使用する道具を使って「木のぐい呑み」が手作りできます。ぐい呑みができたら八日町通りにある「若駒酒造」で地酒の試飲ができるプログラムとなっています。

木彫り体験では自由に「のみ」を入れて自分のぐい飲みが作れる
木彫り体験では自由に「のみ」を入れて自分のぐい飲みが作れる

木のぐい呑み作り体験

TEL
0763-62-1201(予約電話受付8:30 - 16:00)
予約
2名から受付(最大8名、予約は3日前の16時まで)
営業時間
毎日5回 10:00~ / 11:30~ / 13:00~ / 14:30~ / 16:00~
定休日
年末年始(12/28~1/5)
料金
ひとり3,000円(所要時間は60分ほど)
公式サイト
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合名会社若駒酒造

住所
〒932-0211 富山県南砺市井波360
TEL
0763-82-7373
営業時間
9:00 - 19:00
休館日
不定休
公式サイト
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Day3. 城端から気軽に立ち寄ることができる、世界遺産の集落、五箇山へ

世界遺産に登録されている五箇山は、江戸時代(1603~1868)から大正時代(1912〜1926)にかけて建てられた合掌造りの集落です。その昔、冬の間、五箇山の集落は雪に閉ざされてしまっていたようですが、交通が発達してからは、城端とは国道304号線で結ばれていて、バスでも約20分でアクセスが可能です。

「世界遺産バス」が高岡、城端、五箇山、白川郷を結んでいる
「世界遺産バス」が高岡、城端、五箇山、白川郷を結んでいる

五箇山

五箇山には、相倉(あいのくら)と菅沼(すがぬま)という2つの集落があって、その山あいの素朴で美しい景観は、日本の原風景ともいわれています。人々の暮らしがあり、手入れの行き届いた茅葺き屋根、田んぼやあぜ道、池や林などその環境すべてが、生きた世界遺産としての重要な要素となっています。だからこそ早朝や日没後には立ち寄りを遠慮するというルールがあるのです。

合掌造りは、その形が掌(てのひら)を合わせたように見えることからそう呼ばれていて、3メートルとも言われる豪雪に耐えるために、60度という急勾配の屋根を持つ建物になっています。
城端からは五箇山だけでなく白川郷へのバスもあり、世界遺産の集落に気軽に立ち寄ることができます。

五箇山の相倉集落。世界遺産に登録された2つの集落がある。
五箇山の相倉集落。世界遺産に登録された2つの集落がある。

五箇山 相倉集落

住所
〒939-1915 富山県南砺市相倉611(相倉合掌造り集落)
TEL
0763-66-2123(世界遺産相倉合掌造り集落保存財団)
営業時間
8:30~17:00(日没後~早朝の立寄りはご遠慮ください)
休館日
無休
公式サイト
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五箇山 菅沼集落

住所
〒939-1973 富山県南砺市菅沼578(菅沼合掌造り集落)
電話
0763-67-3008 菅沼世界遺産保存組合
営業時間
4月~11月は8:00~17:00/12月~3月は9:00~17:00
※駐車場入場は16:00まで (日没後~早朝の立寄りはご遠慮ください)
定休日
12月31日・1月1日のみ.
公式サイト
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村上家(国指定重要文化財 合掌造り)

五箇山の建物は古いもので約400年前に建てられたといわれています。上層階では養蚕を行い、土間では和紙を漉き、床下では火薬の材料となる塩硝を作るという、家屋兼作業場になっていたようです。

往時の生活を垣間見ることができる「村上家」には、1階から3階まで江戸時代より使用してきた数千点の民族資料が展示されています。加賀藩の配下であったこと、冬の間の生活のこと、鉄砲のための火薬づくり、かつては20~25名くらいで住んでいたことなど、村上家のご主人から話を聞きくことができます。

合掌造りでの生活について村上家のご主人から話を聞いた。
合掌造りでの生活について村上家のご主人から話を聞いた。

村上家 基本情報

住所
〒939-1914 富山県南砺市上梨742
電話
0763-66-2711
営業時間
8:30 - 17:00 (冬期:12月~3月の9:00 - 16:00)
定休日
毎週火曜日、水曜日(ただし祝日は営業/年末年始、その他臨時休業有)
料金
大人300円 小中学生150円
公式サイト
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五箇山和紙作り体験

また、五箇山では、かつての冬場の作業であった和紙作り体験もおすすめです。
良質な和紙として評価が高い「五箇山和紙」は楮(コウゾ)というクワ科の植物を原料にした貴重なもので、何百年ももつという強さをしなやかさが特徴です。かつては風雨や雪を防ぐ障子戸にも使用されていた五箇山和紙は、今ではインテリアや小物から古文書などの修復にも使われているそうです。

五箇山の冬場の産業であった和紙作りが体験できる
五箇山の冬場の産業であった和紙作りが体験できる

オススメ宿泊情報 - 山菜や川魚料理と地酒を味わうなら、五箇山での宿泊がおすすめ

世界遺産の五箇山では、囲炉裏を囲んで山菜や川魚料理といった郷土の味を、昔ながらのスタイルで楽しんだり、郷土料理の後は温泉に浸かってゆったりと過ごしたりと、合掌造りの民宿から温泉宿まで宿泊のタイプは実にさまざまです。
ここ五箇山荘は、郷土のおもてなしと露天風呂が自慢の温泉宿で、村上家からほど近く、五箇山観光に便利な宿としておすすめです。

五箇山には宿泊がおすすめ、岩魚の骨酒は夕食のおもてなし。
五箇山には宿泊がおすすめ、岩魚の骨酒は夕食のおもてなし。

五箇山温泉 五箇山荘

住所
〒939-1913 富山県南砺市田向333-1
電話
0763-66-2316
公式サイト
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  • 撮影:ミクニケンイチ

  • 取材・文:植木 孝(一部撮影)

  • 取材協力:南砺市/南砺市観光協会