【日帰りモデルコース】壮大な眺望と稀有な乗物に出会う立山黒部アルペンルート
富山と長野を結ぶ世界有数の山岳観光ルートが「立山黒部アルペンルート」だ。
その魅力はなんといっても、珍しい乗り物に乗り継ぎながら山深い黒部渓谷とダムが織りなす壮大なスケールの眺望に出会えることにある。
今回は富山の「立山駅」からスタートする「立山黒部アルペンルート」を日帰りで楽しめるモデルコースを紹介したい。
「立山黒部アルペンルート」とは?
富山県東部に位置する「立山駅」を起点にケーブルカーや高速バス、トロリーバス、ロープウェイ、電気バスを乗り継いで、長野県・扇沢へと抜けるルートが「立山黒部アルペンルート」と呼ばれている。
「立山駅」は、3000m級の山々を有する立山連峰やその麓にある街にある駅で、JR北陸新幹線「富山駅」から車や電車で1時間ほどの場所だ。
この立山エリアは日本有数の豪雪地帯としても知られており、富山県山岳観光の最大の拠点として知られている。
「立山黒部アルペンルート」は一方通行のルートではないため、どこの地点からも折り返すことできる点もポイントだろう。
「立山駅」を出発し、終着点の長野県「扇沢」まで全工程を網羅すると8時間。
「立山駅」から「黒部ダム」まで行き、「立山駅」へと折り返す場合は6、7時間ほど。
前後の旅程や一緒にルートを楽しむ家族や友人に合わせてルートを選択できる、観光のしやすさも魅力のひとつである。
壮大なスケールの景色と珍しい乗り物に出会える「立山黒部アルペンルート」日帰りモデルコース
さまざまな楽しみ方ができる「立山黒部アルペンルート」。
今回はその中でも、緑に繁る山々と雪景色を同時に見られる春から夏(4〜6月)にかけて楽しめる、日帰りモデルコースを紹介していこう。
10:00 富山地方鉄道「立山駅」からケーブルカーで出発!
日帰りモデルコースの出発地の「立山駅」は、山深い自然の中に佇んでいる。
ここから立山ケーブルカーに乗って、「美女平」まで移動する。「立山駅」と「美女平」駅までは1.3km、標高500mを7分かけて一気にのぼっていく。
10:15 日本有数の原生林の宝庫「美女平」に到着!
樹齢200〜300年のブナの原生林や樹齢1000年を超える立山杉の巨木が出迎える「美女平」。
春から初夏にかけてはブナの新緑と野鳥に出会える、バードウォッチングスポットとしても知られている場所だ。
11:15 登山者たちの拠点となるターミナル「室堂」へ
「美女平」から立山高原バスに乗り換え50分ほどで到着する「室堂」は、「立山黒部アルペンルート」のなかで最も高い標高2450mに位置するターミナル。
立山登山や室堂平の散策の拠点になっており、駅の2階には「立山黒部アルペンルート」最大規模のレストランや売店、ティーラウンジがある。
春といっても気温は1〜6℃ほど。「立山黒部アルペンルート」の工程もまだこれから。
「室堂」で温かい食事をとってしっかりと体を温めておこう。
12:15 雪の大壁がそびえ立つ「雪の大谷」は見応え抜群!
立山黒部アルペンルートの名所とも言える「雪の大谷」は、4月〜6月期間限定で見られる特別な景色だ。
豪雪地帯である周辺エリアの中でも「室堂」付近にある「大谷」は吹きだまりになっているため特に積雪が多く、その高さは20mを超えることも。
積もりに積もった雪をGPSで道の位置を確認しながらブルドーザーで少しずつ掘り進め、通常の除雪車の2倍近い吹き上げ能力を持ったアルペンルート専用の除雪車で雪の壁を切り抜いていくことで「雪の大谷」が出現するのだそう!
13:30 3.7kmある立山トンネルをバスで突き進む!
「室堂」から立山の主峰・雄山の直下を貫通している立山トンネルを走る、バスへと乗り換えて「大鑑峰」へ。
道幅が広くないトンネル中央付近で上下線のバスがすれ違うシーンも見どころとなっている。
14:00 断崖絶壁にそびえ立つ「大観峰」
トンネルを抜けて現れるのは目が覚めるような壮大な眺望が広がる「大観峰」。
標高2316mの高さから黒部湖や後立山連峰の絶景を見下ろすことができるスポットだ。
「大観峰雲上テラス」にはテラス席が完備されているので、壮大なスケールの自然の中でひと息つこう。
14:30 「大観峰」から「黒部平」まで空中散歩
そして「大観峰」から「黒部平」へ。
この区間を結ぶ日本最長のワンスパンロープウェイとしても知られているこのロープウェイは、景観と環境保全の観点から「大観峰」から「黒部平」の間に1本も支柱がない。
動く展望台ともいわれ、西には大斜面の「大観峰」、東には後立山連峰の絶景が広がる。
360度の大パノラマが見られる、7分間の空中散歩を楽しもう!
15:30 日本唯一の全線地下式・黒部ケーブルカーに乗車!
「黒部平」へ到着したら、黒部ケーブルカーに乗り換え。
標高差1455mの「黒部湖」に向かうべく、ケーブルカーでトンネル内を下っていく。
ケーブルカーには動力が組み込まれてないため、運転は黒部平で行なっているそう。
車両には運転手は乗車せず、代わりに安全を監視する車掌が乗車している。
15:45 「黒部湖」から地下道を抜け「黒部ダム」えん堤を歩く
「黒部湖」から地下道を抜けて、黒部ダムレストハウスを目指して歩いていく中で出会うのが「黒部湖」と「黒部川」。
それらを見下ろしながら歩くこと15分、黒部ダムレストハウスへと到着。
16:00 日本ダム界の王者「黒部ダム」に到着!
黒部ダムレストハウスの脇から「黒部ダム」駅へと、トンネル内の階段をのぼるとダム展望台に続く階段がさらに現れる。
その階段を220段ほどのぼった展望台からは、 “ダムの王者”とも呼ばれている巨大なアーチダム「黒部ダム」を俯瞰して見ることができるのだ。
約2600基以上ある日本国内のダムの中でも堤高186mほどで数あるダムの中で日本一の高さで、堤体積日本一、総貯蓄水容量は4位。
スケールの大きさもさることながら、周囲の黒部渓谷との見事に調和した景観に心奪われる。
17:00 電気バスで「黒部ダム」から「扇沢」へ
関電トンネル電気バスに乗って終着地の「扇沢」へ。
「黒部ダム」建設時に、資材搬送用に掘削されたトンネル内を走る電気バスで、ディーゼルバスの車体からエンジンを取り外し、モーター・バッテリーを取り付けられてつくられたものだ。
16分ほど電気バスで走ると、富山側から訪れる「立山黒部アルペンルート」の終着駅
「扇沢」へ到着。
およそ8時間かけて「立山黒部アルペンルート」をじっくりと堪能する日帰りモデルコース。
エリアごとに違った絶景と乗り物を楽しめ、全工程を制覇した満足感と心地のよい開放感を感じられるはずだ。
他の季節もおすすめ!「立山黒部アルペンルート」
麓の山々が緑に茂る時期ながらも、標高が高いため「雪の大谷」も見ることができるお得な季節の春から初夏(4月〜6月)のモデルコースを紹介したが、実はそのほかの季節も一見の価値ある眺望だ。
登山やトレッキング、自然散策に最適な夏(6〜7月)
一年の中で最も「立山黒部アルペンルート」が賑やかになるのが夏。
3000m級の山々に高山植物たちが一斉に咲き始めるこの季節は、沢や渓谷を渡る清々しい風を感じながらの登山やトレッキングに最適。
毎年多くの散策者が訪れている。
紅葉に染まる「三段紅葉」の秋(10月上旬〜中旬)
「立山黒部アルペンルート」では、山頂から麓にかけて1975mの標高差があるため、山頂の雪景色と中腹の紅葉・黄葉、麓の緑樹の3色の紅葉「三段紅葉」が特徴。
例年、北海道の大雪山と並んで日本で最も早く、9月頃から室堂平付近より染まり始める。
時期をずらすことでさまざまな色合いの紅葉を鑑賞できるスポットだ。
雪で覆われた幻想的な初冬(11月上旬)
冬の「立山黒部アルペンルート」では、雪一面に覆われた山を見下ろすことができる。
豪雪地帯のため真冬は立ち入れなくなることから「立山黒部アルペンルート」の冬を楽しめる期間は短く、11月上旬の限られた期間しかない。
初冬の貴重な景色は一見の価値あり!狙って出かけてみては?
「立山黒部アルペンルート」日帰り観光に関するよくある質問
Q
「黒部ダム」は危険ですか?
今回紹介したモデルコースは初心者向けのルートのため、危険ではありません。ただ、大自然の中での観光なので落石など危険な場所には近寄らないように注意。また、歩きスマホなどは危険なので散策中は控えましょう。
Q
個人旅行に適していますか?それともツアーがいいですか?
標高差もあり、さまざまな乗り物に乗り継ぐ必要があることからマイペースにルートや時間配分を変更できる個人旅行がおすすめです。何か不安がある方は、添乗員付きのツアーなどもあるのでチェックしてみてください。
Q
長野へ抜けず、富山の往復でも楽しめますか?
もちろん楽しめます。「黒部ダム」まで行かなくとも、「室堂」や「大観峰」あたりで引き返しても「立山黒部アルペンルート」の魅力に触れることができます。「黒部ダム」が目的であれば、長野県の「扇沢」を起点にした「黒部立山アルペンルート」からスタートするのがベストです。
Q
おすすめの季節はありますか?
どの季節も違った魅力があるので一概に言えないのですが、新緑と雪を楽しみたい方は初夏、山々が赤や黄色に染まる紅葉鑑賞をしたい方は秋、雪が一面を覆う銀世界を見たい方は初冬を選びましょう。
Q
混み合う時間帯は?
最も混雑が予想されるのが、立山ケーブルカーの始発〜8:00頃。少し遅めの10時頃に「立山駅」をスタートするとストレスなく散策できそうです。
まとめ
壮大なスケールの眺望と珍しい乗り物と出会える「立山黒部アルペンルート」。
今回は「立山駅」から「扇沢」を抜けるモデルコースをピックアップしたが、どの地点でも折り返しでき、また「扇沢」を出発地として楽しむこともできるのが「立山黒部アルペンルート」の面白いところ。
前後の予定や一緒に巡る家族や友人などの好みに合わせてルートを選択し、自分好みにアレンジして体験してみてほしい。