日本三大名城のひとつ!防衛機能と美しさを併せ持つ熊本城の観光ガイド
熊本のシンボルかつ市民の誇りとして、400年以上の歴史を紡ぐ「熊本城」は日本屈指の名城だ。
数々の困難を乗り越えてきた、その巧妙な設計と美しい景観が多くの人々を魅了する。
2016年の熊本地震によって大きな被害を受け、現在も復旧作業が進められている。
この記事では「熊本城」の注目すべき見どころをはじめ、現在に至るまでの歴史や地震からの復旧状態について紹介しよう。
初めて熊本を訪れる人でも楽しく観光できるように、周辺の人気スポットも併せてまとめたので、ぜひ最後まで読んでほしい。
熊本城ってどんなところ?
熊本県熊本市の中心部に位置する「熊本城」は、日本三大名城のひとつに名を連ねる歴史的名所。
築城の名手・加藤清正(かとうきよまさ)が築いた、その堂々たる佇まいと堅牢な構造が特徴だ。
何段にも積み上げられた石垣や複雑に折れ曲がった通路など、戦に備えて様々な仕掛けを施した鉄壁の防御力はまさに”難攻不落”と呼ぶにふさわしい。
歴史的な価値も高く、全13の建造物が国の重要文化財に指定されている。
また、敵の侵入を阻むだけでなく、四季折々の風景が織りなす美しい景観も魅力のひとつ。
黒漆塗りの壁と白い漆喰のコントラストが壮麗な姿を見せる象徴・天守閣をはじめ、いたる所に絵になる見どころが盛りだくさん。
2016年の熊本地震で甚大な被害を受けたものの、2021年には天守閣が完全復旧し、復興の象徴としても希望を集める。
熊本城の歴史
「熊本城」は豊臣秀吉(とよとみひでよし)の家臣、加藤清正が茶臼山丘陵(ちゃうすやまきょうりゅう)一帯に築いた。
加藤清正は1588年に肥後国(現在の熊本県)の領主になると、最先端の技術と労力を投じて、防御力に優れた築城の着手を始める。
1601年に天守、1606年に城が完成すると、1607年に前身の隈本から熊本に名を改め、現在に受け継がれる「熊本城」となった。
清正の死後、加藤家は江戸幕府によって改易(かいえき/領地の剥奪)され、1632年に細川忠利(ほそかわただとし)が城主の座に就く。
以降は幕末まで細川家の治世下で発展を続け、熊本藩の中心地として栄えた。
しかし、1877年の西南戦争で西郷隆盛(さいごうたかもり)率いる薩摩軍の包囲を受け、天守や本丸御殿など建物の多くが焼失してしまう。
1955年に国の特別史跡に指定、1960年に天守閣が再建され、熊本のシンボルが復活した。
熊本城へのアクセス
熊本観光の玄関口である「阿蘇くまもと空港」、観光拠点となる「熊本駅」を起点にした、それぞれ「熊本城」へのアクセス方法を紹介する。
なお、熊本県内の路線バス・市電・電鉄では、SuicaやPASMOといった全国共通の交通系ICカードが利用できなくなった。
支払いは現金かくまモンのICカードに限るので、観光時は気を付けてほしい。
阿蘇くまもと空港からのアクセス
「阿蘇くまもと空港」から「熊本駅」へのアクセスは以下の通り。
対象の4番のりばには、複数の路線が運行しているので乗り間違いに注意しよう。
- 経路
-
1. 「阿蘇くまもと空港」から「空港バス4番のりば」まで徒歩で向かう
2.「空港バス4番のりば」で九州産交バス・空港リムジンバスに乗車し、「熊本桜町バスターミナル」で降車
3. 「熊本桜町バスターミナル」から徒歩10分ほどで、「熊本城」に到着 - 所要時間
- 約1時間
熊本駅からのアクセス
熊本駅からは3つの方法で「熊本城」までアクセスできる。
いずれも運賃は180円なので、近くまで行きたいなら周遊バス、観光気分を味わうなら市電、早く着きたいなら路線バスを選ぶと良いだろう。
周遊バスルート
- 経路
-
1. 「熊本駅白川口」から「熊本駅前2番バスのりば」に徒歩で移動。
2. 「熊本駅前2番バスのりば」から熊本城周遊バス・しろめぐりんに乗車し、「熊本城・二の丸駐車場」で降車、到着 - 所要時間
- 約30分
市電ルート
- 経路
-
1. 「熊本駅白川口」から市電「熊本駅前」に徒歩で移動。
2. 「熊本駅前」から熊本市電A系統・健軍町に乗車し、「熊本城・市役所前」で降車
3. 「熊本城・市役所前」から徒歩10分ほどで、「熊本城」に到着 - 所要時間
- 約27分
路線バスルート
- 経路
-
1.「熊本駅白川口」から「熊本駅前2番バスのりば」に徒歩で移動。
2. 「熊本駅前2番バスのりば」から九州産交バス・宮尾台行などに乗車し、「桜町バスターミナル」で降車
3. 「桜町バスターミナル」から徒歩10分ほどで、「熊本城」に到着 - 所要時間
- 約20分
熊本城の入園料と開園時間
熊本城の入園料・休園日・開園時間は、以下の表にまとめた。
- 開園時間
- 9:00 〜 17:00
- 休園日
- 12月29日 〜 12月31日
- 入園料
-
高校生以上:800円
小・中学生:300円
未就学児:無料
熊本城のお勧め観光シーズンは?
熊本城のお勧めの観光シーズンは春と秋だ。
可能であればいずれかの季節に訪れるように、旅行のスケジュールを調整してほしい。
それぞれの見どころを紹介するので、内容を参考にどちらが好みか考えてみよう。
美しい桜で彩られる春の熊本城
熊本屈指の桜の名所である熊本城は、春になると約800本もの桜が一斉に咲き誇る。
ソメイヨシノを中心に城内全体が淡いピンク色に彩られ、天守閣の黒と白のコントラストが際立ち普段に増して美しい。
見頃は例年3月下旬から4月上旬、満開の桜と復興を誓う「熊本城」が織りなす景色は見応えが十分だ。
春にしか見られない光景は、旅行の思い出に深く刻まれるだろう。
周辺には絶好の花見スポットも多く、たくさんの人で賑わう雰囲気と暖かい春の陽気が気持ちを穏やかにする。
また夜は桜がライトアップされ、昼間とはひと味違った幻想的な夜桜を楽しめる。
銀杏城の別名の由来を感じられる秋の熊本城
秋の熊本城は色鮮やかな紅葉に包まれ、歴史的な建造物との美しい調和が、見事な景観を作り出す。
加藤清正によって築城当時より多くのイチョウが植えられたため、熊本城は「銀杏(ぎんなん)城」という別名を持っている。
城内に植えられた多くの木々は、例年11月中旬から12月上旬にかけて見頃を迎える。
紅や黄に色づいたカエデやイチョウ、モミジが、天守閣をより一層引き立てる様子は圧巻だ。
石垣や櫓に寄り添う紅葉は趣があり、まるで時代絵巻の一部に迷い込んだかのような感覚を楽しめるだろう。
また、風情ある石畳に舞い落ちた葉が秋の静けさを感じさせ、夜風に揺れる紅葉が心に残るひとときを演出する。
熊本城の復旧状況
2016年4月に起きた震度7の熊本地震によって、「熊本城」は甚大な被害を受けた。
重要文化財建造物13棟すべての倒壊をはじめ、天守閣は最上階の瓦がほとんど落ち、石垣も全体の約3割が崩壊した。
復旧作業は2016年直後から開始され、2021年には天守閣の修復が完了、復興の象徴として多くの人々を迎えた。
しかし、現在も気の遠くなるような修復作業が続いており、完全復旧は2052年(2024年12月時点)までかかる見通しになっている。
復旧作業中の様子や被害状況は一部見学できるので、今だからこそ見られる「熊本城」の姿、そして再生されていく貴重な瞬間を目に留めてほしい。
復旧状態は以下の通り、一刻も早い復旧を願うばかりだ。
- 天守閣
- 復旧完了
- 監物櫓
- 復旧完了
- 長塀
- 復旧完了
- 旧細川刑部邸
- 復旧中
- 戌亥櫓
- 復旧中
- 西大手門
- 復旧中
- 南大手門
- 復旧中
- 宇土櫓
- 復旧中
- 平櫓
- 復旧中
- 本丸御殿大広間
- 復旧中
- 飯田丸五階櫓
- 復旧中
- 馬具櫓
- 復旧中
- 北十八間櫓、東十八間櫓、五間櫓
- 復旧中
- 田子櫓、七間櫓、十四間櫓、四間櫓、源之進櫓
- 復旧中
※2024年12月時点の復旧状況
絶対に外せない熊本城の見どころ5選
「熊本城」は総面積およそ98万㎡、周囲は約5.3kmにも及ぶ巨大な名城だ。
城内には魅力的なスポットが多く、普通に巡るだけでも2時間前後、最大限に満喫するならば丸1日以上はかかるだろう。
そこで、「熊本城」の中でも特に外せない見どころを5つに絞って紹介していく。
いずれも歴史的価値と建築美を体感できるので、少なくともこれらは押さえてほしい。
1. 天守閣
復興のシンボル「熊本城天守閣」は、加藤清正が築いた堅牢な構造と美しいデザインが特徴だ。
外観は3重、内部6階地下1階の大天守と、3重5階の小天守からなる複合式天守は、黒漆塗りの板壁と白い漆喰壁のコントラストが美しく、威風堂々とした姿が訪れる人々を圧倒する。
内部は歴史博物館になっており、熊本城・加藤清正らにまつわる資料のほか、戦国時代(1467年~1573年)の武具や城の模型などが展示されている。
復旧完了後にあえて見える形にした耐震性能をはじめ、施設内には見どころが盛りだくさん。
最上階の展望スペースから見下ろす、熊本市街のパノラマビューも外せない魅力。
歴史的風景と現代都市の融合を楽しめ、天気が良ければ阿蘇の山々まで一望できる。
2. 本丸御殿
「本丸御殿」は熊本城の築城時に藩主の居住や政務の場として建てられたが、1877年の西南戦争で焼失。
2008年に職人の技術を通じた伝統的技法による、忠実な復元で往時の姿を取り戻した。
注目すべきポイントは、豪華絢爛な造りと細部の美しさだ。
御殿内部には畳敷きの大広間、武士の威厳を示す格式高い装飾が施され、当時の雰囲気がひしひしと伝わる。
特に藩主が貴賓をもてなすための部屋である「昭君之間(しょうくんのま)」は、金箔をふんだんに使った襖絵や精巧な天井画がひと際輝く。
また、裏手に設けられた隠密性の高い通路の「闇り通路(くらがりつうろ)」も見どころのひとつ。
城の防御と機能性を重視する加藤清正の工夫が読み取れて感慨深いだろう。
※内部の見学不可(2024年12月現在)
3. 宇土櫓
「宇土櫓(うどやぐら)」は、熊本城に現存する数少ない重要文化財のひとつ。
1607年の創建当初から残る貴重な建造物だ。
天守閣並みの構造と規模を誇る3層5階の櫓で、堅牢な造り・荘厳な佇まいは”第三の天守”とも称される。
見どころは、築城当時の姿をほぼそのままに伝える建築美を挙げたい。
外観はシンプルながら力強く、内部では太い梁や柱などの重厚な木造構造で、熊本城の長い歴史を耐え抜いてきた存在感を放つ。
残念ながら熊本地震で深刻な被害を受けたため、2024年12月より全解体が始まった。
現在は軸組だけの姿だが、過去の修理跡・地震の被害といった貴重な様子を外から見られる。
解体は2025年末まで、復旧完了は2032年を予定している。
※公開期間:2025年1月12日より毎月第2日曜日の見込み(要確認)
4. 石垣群
日本有数の規模と技巧を誇る熊本城の石垣群は、加藤清正が築いた”難攻不落の名城”を象徴する建造物だ。
天守閣を支える石垣は急勾配で築かれており、簡単なように見えて登るのを極めて困難にしている。
攻めにくさと美観を兼ね備えた精巧な作りは、ダイナミックながら繊細で訪れた者を驚かせる。
敵を寄せ付けないその力強さから「武者返し」の異名を持つ。
全体に統一感をもたらす独特な色合いや質感の石材も特徴で、一つひとつを近くで見ると面白い。
現在復旧作業中だが、「戌亥櫓(いぬいやぐら)」・「飯田丸五階櫓」周辺などの石垣にも個性があるので、それぞれを比較してみても面白い。
5. 長塀
国指定の重要文化財である「長塀(ながべい)」は、全長約242mの防御施設。
現存する中では日本最長級の塀として知られ、随所に敵の侵入を防ぐ工夫が施されている。
壮大なスケールと均整の取れた木造建築の美しさ、周囲の風景と一体など、見応えが多いのでゆっくりと散策を楽しみ、その長さを実感しよう。
ベンチも多く置かれており、途中で心地よい風に揺られながらくつろぐのも良い。
また、「長塀」の全体像が見渡せる二の丸広場からの眺めもお勧め。
春・秋は城内が桜や紅葉に染まり、自然が織りなす情緒的な光景が広がる。
復旧過程を観察できる特別見学通路の見どころ
特別見学通路とは、2016年の熊本地震で大きな被害を受けた城の復旧過程を間近で見られる350mの見学ルート。
崩れた石垣や建築物の修復作業を目の当たりにできるよう設計され、復旧プロジェクトの進行状況をリアルタイムで体感させてくれる。
一つひとつの石を丁寧に調査し、元の位置へ戻していく石垣の様子は、築城技術と現代の修復技術の融合が伺える。
また、天守閣を間近で見上げられるポイントもあり、威厳のある姿と復元した外観の美しさは今しか捉えられない貴重な瞬間だ。
復興途中の熊本城を支えるたくさんの人々の努力や情熱に触れながら、歴史と未来をつなぐ歩みを実際に肌で感じてほしい。
熊本城の周辺観光スポット3選
最後に熊本城周辺にあるお勧めの観光スポットを3つ紹介する。
いずれも熊本の歴史や伝統に触れられ、食事・ショッピングも楽しめる人気の場所だ。
「熊本城」を満喫後に巡れば、より充実した旅行になるので合わせて観光してほしい。
1. 熊本県伝統工芸館
熊本城の北側にある、熊本県の伝統工芸品について知識を深められる施設。伝統工芸品の展示・販売や体験イベントなどを通し、生活と伝統工芸品を繋ぐことを目的に1982年に開館した。
2階の常設展示室には熊本各地に伝わるさまざまな伝統的工芸品を展示している。熊本県には、国指定の伝統的工芸品である「肥後象がん」、「小代焼」、「天草陶磁器」、「山鹿灯籠」をはじめ、およそ90の伝統的工芸品がある。
2. 桜の馬場 城彩苑
熊本城の麓にある、江戸時代の城下町を再現した屋外型観光交流施設。
熊本のご当地グルメを楽しめるレストラン、特産品に出合えるショップ、熊本の歴史について楽しく学ぶ施設などがある。
20軒以上のレストラン・ショップが並ぶ「桜の小路」では、馬刺し、阿蘇のあか牛、天草の海鮮など熊本県内の名物グルメを堪能できる。
3. 水前寺成趣園
湧水を利用した回遊式庭園で、細川家の初代藩主忠利公が、阿蘇の伏流水が湧き出るこの地に、御茶屋を建てたのが由来となった。
その後3代藩主綱利公による大規模な作庭がなされ、陶淵明の詩から「成趣園」と呼ばれるようになった。
園内には細川家を祀る出水神社や能楽殿、京都御所内から移築された古今伝授の間などが建ち、桜や松を配した庭木や池を飾る浮石、富士山に見立てられた築山などが江戸時代の情緒を今に伝えている。
熊本城に関するよくある質問
Q
熊本城の修復は終わった?
2024年12月時点で2割ほどの修復状態です。当初の予定より遅れており、完全復旧は2052年までかかる見通しとなっています。
Q
熊本城は誰がいつ建てた?
茶臼山丘陵一帯に築城の名手・加藤清正が15年ほどかけて、1607年に完成させました。
Q
熊本城の魅力は?
日本三大名城に数えられる歴史的価値と堅牢な構造美が調和した姿です。四季折々の風景が城内に彩りを添えています。
まとめ
日本三大名城に数えられる「熊本城」の魅力や見どころを中心に、建造物の復旧状態などを紹介してきた。
地震から約8年経った今もなお、各所には崩れ落ちた塀の残骸、崩落した石垣が姿をのぞかせて心が痛む。
しかし、熊本城は被害を乗り越えつつ歴史を守り、新たな未来を築くシンボルとして、多くの人々の希望を集めている。
実際に訪れて、今しか見られない貴重な瞬間をぜひその目に収めてほしい。
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