幅広い交流で文化発展に貢献した松花堂昭乗
日本の伝統文化の1つである茶道は、唐(618~ 907年)の時代の中国から伝わり、鎌倉時代(1185~1333年)には、当時の最先端文化であった禅宗の教えと共に日本全国に広まりました。安土・桃山時代(1568~1600年)には茶人・千利休が茶道の様式である侘び茶を完成。以後、茶道は、茶道具や茶の間、掛け軸など、茶を体験する空間や時間そのものを嗜む総合芸術として世に広まっていきました。
日本庭園の魅力を体感する松花堂庭園
江戸時代(1603~1868年)の初期の僧侶で文化人としても活躍した松花堂昭乗。芸術分野において豊かな才能を持っていた昭乗は、書道、絵画などで優れた作品を残し、主催する茶会には数多くの文化人が集まり、交流の場として栄えました。最晩年には京都府八幡市の男山に隠居後の住まいである松花堂を建てて質素に暮らし、1639年に永眠。その後、松花堂は幾度かの移築を経て、2014年には移築先の松花堂庭園において国の名勝に指定されています。
松花堂昭乗ゆかりの庭園である京都府八幡市の松花堂庭園は、2万2000㎡の広大な敷地に広がる日本庭園で、築山や枯山水など露地庭を巡り歩きながら趣のある風景を存分に体感することができます。梅、桜、青もみじ、紅葉など、四季を通して見ることが出来るさまざまな花や木々は、眺めているだけで癒しのひとときを感じさせてくれます。
絶景を見渡す茶室でお茶体験
松花堂庭園では、予約をすればお茶の体験が可能。3月、4月、5月、10月、11月の日曜には日曜茶席を開催。呈茶(ていちゃ)と呼ばれる気軽に楽しめる茶席で、ビギナーでも安心して参加できます。事前予約をすれば茶室を貸し切ることも可能。茶室の中でも一番の大きさを誇る「松隠」は、室内から眺める庭の景色が美しく、お茶の時間をよりいっそう優雅に演出します。
食文化にも影響を与えた松花堂昭乗の才能
松花堂昭乗の名は芸術だけでなく食文化にも見ることができます。日本の弁当のスタイルとして定着している「松花堂弁当」の歴史は、料亭「吉兆」の創業者である湯木貞一が1933年頃、昭乗が作物の種入れとして使われていた器をもとに作った絵の具箱や煙草盆に出会ったことから始まります。後にこの容器が茶懐石の弁当箱として採用され、以後、「松花堂弁当」として、その名が広まりました。この弁当は松花堂庭園に併設された「京都吉兆 松花堂店」でも食べることができます。また、松花堂美術館では昭乗に関するパネル展示があります。