日本の紅葉が持つ魅力と日本人ならではの紅葉の楽しみ方
日本人は古くから秋になると、山や渓谷などに紅葉を見に出かけていた。
今でも秋には紅葉の名所へ足を運ぶ人は多く、海外からも多くの人々が紅葉を見に訪れている。
国内外の人々を魅了する日本の紅葉の魅力と、日本人ならではの紅葉の楽しみ方をこの記事では紹介しよう。
日本で紅葉を満喫するために、ぜひ観光前にこの記事を熟読してほしい。
目次
日本の紅葉の魅力とは
日本以外にも紅葉が見られる国はあるものの、その中でも特に日本の紅葉は評価が高い。
日本の紅葉がそこまで人々を惹きつける理由は2つある。
日本の紅葉の魅力1)色彩豊かな紅葉
ひとつは色彩の豊さにある。
そもそも紅葉が見られる国自体が世界的に珍しく、東アジアの沿岸部やアメリカ、ヨーロッパの一部でしか見られない。
その上、日本以外の国では1カ所で見られる紅葉は「紅」か「黄色」の1色のみ。
紅葉した木々の紅・黄色と常緑樹の緑、という3色が1カ所で見られるのは日本だけだ。
紅葉は標高によっても色づき方が変わるため、山が多い日本では山頂から麓まで、美しくグラデーションがかかったような景観も見られる。
日本の紅葉の魅力2)様々なバリエーションとシチュエーションで楽しめる
日本の紅葉が人々を惹きつける、もうひとつの理由はバリエーション豊かな景観だ。
紅葉に染まる渓谷や山だけでなく、紅葉に彩られた神社やお寺の境内、色づいた木々に囲まれる湖畔、紅葉に染まる景色を見ながら浸かる露天風呂など、様々なバリエーションやシチュエーションで紅葉が楽しめる。
日本に存在する紅葉の美しい樹木の種類
秋になると紅や黄色に染まる樹木が、日本には何十種類も存在しており、その中でも代表的な紅葉の木はモミジ・カエデ・イチョウだ。
様々な種類の樹木が紅葉するからこそ、色彩豊かな紅葉が日本では見られるのだ。
紅葉の代表格「モミジ・カエデ」
深紅に染まる「モミジ」は、紅葉といえば真っ先に名前が上がるほど、日本では見かけることが多い。
中には黄色に染まる「モミジ」もあるが、ほとんどは深紅に染まる。
実は「モミジ」という品種はなく「カエデ」の仲間であり、「モミジ」と「カエデ」を区別しているのは日本だけ。
明確な定義はないが、葉っぱの切れ込みが深いカエデを「モミジ」と呼び、切れ込みが浅いものを「カエデ」と呼ぶことが多い。
都市部で見かけることが多い「イチョウ」
黄色に美しく染まる「イチョウ」。陽のあたり具合によっては黄金色にも見える。
生長が早い上に、大気汚染や寒さに強いため、街路樹や公園樹として植えられることが多い。
そのため、東京の紅葉名所でも「イチョウ」は多く見られる。
春だけでなく秋も美しい「ソメイヨシノ」
春に咲く花のイメージが強い「ソメイヨシノ」などの桜も、実は秋になると紅葉する。
陽が当たる部分は紅く、陽が当たらない部分はオレンジや黄色に色づき、1本の木で紅・オレンジ・黄色の3色が混じる樹木もある。
日本の紅葉の見頃
紅葉の見頃は地域や場所によっても異なるが、早ければ9月下旬には見頃を迎える地域もある。温暖な気候の地域だと12月上旬まで、紅葉が見られる。
沖縄では紅葉に必要な気候条件を満たさないため、残念ながら紅葉が見られない。
標高によっても見頃は変わるため、綺麗な紅葉を見たいなら、紅葉名所ごとの見頃を確認しよう。
参考までに日本各地の紅葉名所の見頃をご紹介。
地域 | 紅葉名所 | 見頃 |
---|---|---|
北海道 | 支笏洞爺国立公園 | 10月中旬〜10月下旬 |
東北(青森) | 奥入瀬渓流 | 10月中旬〜11月上旬 |
関東(東京) | 高尾山 | 11月中旬〜12月上旬 |
中部地方(長野) | 上高地 | 10月中旬〜10月下旬 |
北陸地方(富山) | 黒部峡谷 | 10月下旬〜11月中旬 |
関西地方(京都) | 音羽山 清水寺 | 11月下旬〜12月上旬 |
中国地方(広島) | 紅葉谷公園 | 11月中旬〜11月下旬 |
四国地方(香川) | 栗林公園 | 11月中旬〜12月上旬 |
九州(宮崎) | 高千穂峡 | 11月中旬〜11月下旬 |
紅葉狩りにお勧めの服装
「紅葉狩り」と言えば、元々は木々が色づいた山に紅葉を見に行くことを意味していたが、今では「紅葉を見に行く」という意味でも使われる。
もし山や渓谷へ紅葉を見に行くなら、登山やハイキングと同じ服装を準備しよう。
秋でも標高が高い場所は、気温が低いため、ウール素材の厚手の長袖シャツやフリースなど厚手の服を用意してほしい。
山や渓谷以外の紅葉名所でも、落葉した葉などで滑る可能性があるため、滑りづらく歩きやすい靴がお勧めだ。
日本と紅葉に関する3つの雑学
知らなくても良いが、知っていた方が日本での「紅葉狩り」がさらに楽しくなる雑学を、3つに絞って紹介しよう。
1. 日本人が紅葉を楽しむようになったのはいつから?
奈良時代(710〜794年)から平安時代(794〜1185年)に、その時代の貴族が「紅葉狩り」を始めたと言われている。
階級が高い人々の遊びであり、紅葉を見るために山や渓谷に行ったり、紅葉を見ながらお酒やご飯を食べたり、和歌を詠んだりと、様々な方法で紅葉を楽しんでいた。
庶民が紅葉を楽しむようになったのは江戸時代(1603〜1868年)で、今と同じように人混みや都市部から離れた紅葉名所に訪れていたと伝わる。
江戸時代の観光ガイドである「江戸名所花暦」にも、紅葉名所が紹介されている。
2. 紅葉を見に行くことを紅葉「狩り」というのはなぜ?
今では紅葉を見に行く先がどこでも「紅葉狩り」と言うようになったが、元々は山々や渓谷の紅葉を見に行くことを「紅葉狩り」と呼んでいた。
「狩り」とは動物を捕らえるという意味の言葉だが、なぜ「紅葉を見に行くこと」を「狩り」と呼ぶようになったのだろうか。
その由来は諸説ある。
平安時代の貴族は「歩く」ことを下品だと考えており、移動は牛が曳く車で移動することが多かった。
紅葉を見るためには山や渓谷を歩く必要があるため、「歩く」のではなく「狩り」をしているという表現を用いたという説がある。
もうひとつの説は、平安時代の貴族が紅葉を手に取り集めて、鑑賞していたことから、「狩る」と言う表現になったとされる説だ。
3. 美女が鬼となる「紅葉伝説」
「紅葉狩り」の由来とされるもうひとつの説が、美女が鬼となる「紅葉伝説」だ。
「紅葉狩り」という歌舞伎や能の演目にもなっている。
伝説は各地に伝わっており、地域によって内容は異なるが、「紅葉」という名前の女性が鬼となり、武士によって退治されるというストーリーは共通だ。
歌舞伎や能の演目としての「紅葉狩り」は、紅葉を見に出かけた人物が美しい女性たちに出会うも、その女性たちは鬼だったと言う展開になっている。
長野県の戸隠や別所温泉などに伝わる伝説なので、長野に紅葉を見に行く際は、鬼がいたと伝わる伝説を思い返しながら、「紅葉狩り」してみると面白いかもしれない。
日本人ならではの紅葉の楽しみ方
古くから紅葉を愛してきた日本人が、どのように紅葉を楽しんでいるかを紹介しよう。
秋に日本を訪れるなら、これらの楽しみ方ができる観光プランを立ててほしい。
登山・ハイキングしながら紅葉を楽しむ
国土の3分の2を森林が占める日本では、山や渓谷が紅葉の名所となっていることが多い。
そのため、登山やハイキングしながら紅葉を眺めるのは定番の楽しみ方と言える。
喧騒から離れた静かな場所で紅葉を眺められたり、山一面に紅葉が広がる雄大な景観が見られたり、綺麗な紅葉のグラデーションが見られたりと、登山・ハイキングすることで様々な紅葉を楽しめる。
紅葉ハイキングを楽しめる山として有名なのは東京にある「高尾山」。
標高もそこまで高くなく、遊歩道が整備されており、ロープウェーもあるため、気軽にハイキングが楽しめるスポットとして、国内外から人気だ。
その他にも長野の「上高地」や愛知の「香嵐渓」など、紅葉と登山・ハイキングを楽しめるスポットはたくさんある。
アクティビティと合わせて紅葉を楽しむ
美しい紅葉が楽しめる渓谷や湖では、カヤックやカヌー、SUPなどのアクティビティを楽しむことが多い。
水上から眺める紅葉は、地上から眺める紅葉とはまた違った趣がある。
紅葉の名所である青森の「十和田湖」や栃木の「中禅寺湖」で、カヤックやカヌーに乗って、水上から眺める景色は絶景だ。
定番ではないが、空から紅葉を見渡せるパラグライダーや、歩かずに紅葉の名所を散策できるセグウェイツアーなどもある。
まずは定番のカヤックやカヌーから、挑戦してみよう。
神社仏閣と紅葉が調和した空間で情緒を感じる
日本のお寺や神社の境内には「落葉広葉樹」が植えられていることが多く、秋には紅葉と歴史的建造物が調和した風景を楽しめる。
そのため、紅葉を見にお寺や神社へ参拝しに行く方も多い。
荘厳な雰囲気の中を散策しながら紅葉を眺めれば、日本ならではの情緒を感じられるはずだ。
紅葉の名所となっているお寺と神社は全国各地にあるが、京都の「清水寺」や「高台寺」、岩手の「中尊寺」は特に有名。
紅葉の帷がおりる山や渓谷を散策したら、神社やお寺も巡ってみてほしい。
ライトアップした幻想的な紅葉を楽しむ
紅葉の名所であるお城や神社・お寺・日本庭園では、夜になるとライトアップが行われることが多い。
光で照らされた歴史的建造物と紅葉は、幻想的で雅な空間を作り出す。
同じ場所でも昼間とは異なる景観が見られるため、昼と夜の景観を見比べてみるのも面白い。
絨毯のように敷かれた美しい落葉を楽しむ
紅葉の見頃ではなく落葉の時期に訪れる、といった楽しみ方も日本人ならでは。
モミジが落葉して深紅の絨毯が敷かれたような景観や、イチョウが落葉して黄金色の絨毯が敷かれた景観も美しい。
深紅や黄色の絨毯が敷かれた山を散策するのも、紅葉の楽しみ方のひとつだ。
露天風呂に入りながら紅葉を楽しむ
温泉に入りながら紅葉を楽しむ、といった贅沢な楽しみ方も日本ならでは。
紅葉に染まる山や渓谷を眺めながら、露天風呂に浸かれる温泉旅館があるため、ぜひ探してみてほしい。
共同の浴場だけでなく、部屋に露天風呂が付いている場合もあり、1人で露天風呂にゆっくり浸かりながら紅葉を眺める、といった贅沢な楽しみ方も可能だ。
北海道の「定山渓温泉街」は、紅葉の名所としても知られている温泉地。
秋の観光プランの最後は、露天風呂と紅葉の組み合わせで締めよう。
紅葉と合わせて楽しみたい秋の味覚
日本では昔から「食欲の秋」という言葉があり、秋になると食欲が増すように感じる日本人が多い。
その理由には諸説あるが、秋に旬を迎える食材が多いというのもひとつの理由だ。
サツマイモや秋鮭、サバ、ニシンなど、秋に日本人が楽しむ食材は多い。
その中でも代表的な秋の味覚と秋の味覚を使った料理を紹介しよう。
秋の味覚といえば外せない「さんま」
日本人が秋の味覚といえば、真っ先に思い浮かべる魚「さんま」は、9月〜10月に旬を迎える。
味はもちろんのこと栄養価が高い魚としても知られている。
シンプルに塩焼きにして食べるのが定番だが、「さんまの蒲焼き」や「さんまの混ぜご飯」、「さんまの南蛮漬け」にしても美味しい。
スイーツにしてもご飯と炊き込んでも美味しい「栗」
優しい甘みとほくほくとした食感が美味しい「栗」は、9月〜10月に旬を迎える。
「栗」も秋の味覚の代表的な食材で、蒸してそのまま食べても美味しい。
ご飯と一緒に「栗」を炊き込む「栗ごはん」は、秋になると日本人が食べたくなる定番料理だ。
栗を使ったスイーツである「モンブラン」や「栗きんとん」も、旬の季節に食べておきたい。
様々な食材と合わせて食べられる「きのこ」
松茸や椎茸、しめじなど秋に旬を迎える「きのこ」が多く、「きのこ」も秋の味覚として知られている。
様々な食材と合わせて食べられることが多く、特に秋に旬を迎える鮭と炊き込んだご飯や、アルミホイルに包んで蒸した「包み蒸し」などは絶品だ。
日本で紅葉を見るなら絶対に訪れるべき「日本三大紅葉名所」
日本に数ある紅葉名所の中でも、特に美しい紅葉が見られる「日本三大紅葉名所」。
紅葉を目的に日本へ訪れるなら、これから紹介する3つのエリア・スポットの内、ひとつは必ず観光してほしい。
1. 【京都】嵐山
歴史的建造物と紅葉が調和した景観が楽しめる、京都の「嵐山」。
日本庭園と色づいた山々、整然と配された石庭と紅葉など、日本ならではの風情を感じられる紅葉スポットが多い。
特にユネスコ世界文化遺産に登録された「天龍寺」や「龍安寺」、嵐山を代表する景勝地「渡月橋」は人気の紅葉スポットとなっている。
2. 【栃木】日光
栃木県全体の4分の1を占める「日光市」には、ドライブしながら紅葉が楽しめる「いろは坂」や関東随一の紅葉スポットである「中禅寺湖」、紅葉と滝のコラボレーションが楽しめる「竜頭の滝」など、人気の紅葉スポットが目白押し。
温泉地もあるため、温泉に入りながら紅葉を見られる。
ドライブしながら楽しめる紅葉スポットが多いため、日光で紅葉を満喫するならレンタカーを利用しよう。
【大分】耶馬渓
「日本新三景」・「日本遺産」・「日本三大奇景」に選定されている、大分県中津市の「耶馬渓」では、彩豊かな紅葉と岩峰群とのコラボレーションが楽しめる。
南北32km東西は36kmもある広大な敷地の中には、断崖・岩窟・渓流と奇石が作り出す唯一無二の景色が広がっている。
数ある美しい紅葉を見られるスポットの中でも、特に有名なのは深耶馬溪の中心地にある「一目八景展望台」。
「一目八景展望台」から見える奇景は、ここでしか見られない。
日本の紅葉に関するよくある質問
Q
日本の紅葉の魅力は?
色彩とバリエーションの豊かさ、紅葉を見られるシチュエーションの多さが魅力です。
Q
日本の紅葉の見頃は?
紅葉の見頃は地域や場所、標高によって異なるので、紅葉名所ごとに調べてみましょう。
Q
どこに紅葉狩りに行けばいい?
日本三大紅葉名所である京都の「嵐山」、栃木の「日光」、大分の「耶馬渓」がお勧めです。
まとめ
日本の紅葉を楽しむために知っておきたい情報を紹介してきたが、いかがだっただろうか。
この記事を参考に紅葉名所である山と渓谷を巡り、神社とお寺を参拝し、秋の味覚を食し、露天風呂に浸かりながら紅葉を見る、という観光プランを立ててみよう。
日本の紅葉名所をもっと知りたいという方は、ぜひこちらの記事も参考にしてほしい。