日本の伝統と仏教文化を体験!高野山の観光ガイド
「高野山」は弘法大師・空海(くうかい)が開創した、真言密教の聖地だ。
広い境内に117のお寺が点在する「高野山」は、1,200年以上の古い歴史を持ち、現在も多くの僧侶が修行に励んでいる。
日本の伝統や仏教文化を体験できるのが魅力で、国内外から訪れるたくさんの観光客で賑わう。
この記事では、初めての「高野山」観光でも満喫できるようにお勧めの見どころを中心に詳しく紹介しよう。
目次
高野山ってどんなところ?
和歌山県伊都郡の標高約800メートルに位置する「高野山」は、弘法大師・空海(くうかい)が開創した真言密教の聖地。
高野山内は「一山境内地」と呼ばれ、高野山全域が「総本山金剛峯寺」の境内とされている。
名称は高野”山”だが、正式には「高野山金剛峯寺」というお寺で、1,200年以上の歴史を持つ。
山内には「塔頭寺院(たっちゅうじいん)」と呼ばれる、117ものお寺が点在しており、空海や弟子が造った仏像や経典、将軍の位牌などの貴重な文化財が収められている。
また、その内51カ所のお寺では宿泊施設の「宿坊」があり、僧侶たちと一緒に食事や朝の勤行体験ができる。
世界遺産としても登録されている「高野山」の魅力と言えば、宗教行事・瞑想体験などの日本の伝統や仏教文化に触れられることだろう。
阿字観(あじかん/呼吸法)・授戒・写経を通じて、空海の教えを目で見て肌で感じられる。
護摩行(ごまぎょう)の見学・体験や、肉魚を禁じられた戒律の中で工夫を重ねて作られた伝統の精進料理も味わってほしい。
特にお勧めの見どころは、後述する「金剛峰寺」・「奥の院」・「壇上伽藍」だ。
高野山の歴史と成り立ち
「高野山」は空海が真言密教の道場を建立するために、816年に「高野山」の土地を嵯峨天皇(さがてんのう)から賜ったのが始まり。
空海はこの地に「金剛峯寺」を創建し、即身成仏を遂げる835年まで修行者のために真言密教の教えを広めた。
「金剛峯寺」は、「金剛峯楼閣一切瑜伽瑜祇経(こんごうぶろうかくいっさいゆがゆぎきょう)」のお経から名付けたと伝えられている。
空海の死後は弟子によって「金剛峯寺」の整備が進められ、真言宗の総本山として発展した。
2004年には由緒ある歴史や美しい景観などが評価され、「紀伊山地の霊場と参詣道」の名義で世界遺産に登録された。
今日でも多くの僧侶が修行に励み、国内外からたくさんの参拝者で賑わう。
高野山へのアクセス
国際線が通る西日本の玄関口である「関西国際空港」を起点とした、「高野山」へのアクセスを紹介しよう。
- 経路
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1.「関西国際空港」から「関西空港駅」まで徒歩で移動
2.「関西空港駅」から南海線空港急行・難波行(1番乗り場)に乗車し、「天下茶屋駅」で下車
3.「天下茶屋駅」から南海高野線急行or特急りんかん・橋本行(1番乗り場)に乗車し、「橋本駅」で下車
4.「橋本駅」から南海線高野線・極楽橋行(4・5乗り場)に乗車し、「極楽橋駅」で下車
5.「極楽橋駅」から南海高野山ケーブル・高野山駅行に乗車し、「高野山駅」で下車
6.「高野山駅」から南海りんかんバス「奥の院前行き」へ乗車し、バス停「千手院橋」にて下車
7.「千手院橋」から徒歩約5分で(総本山金剛峯寺に)到着 - 所要時間
- 約2時間50分
高野山の参拝可能時間と拝観料
「高野山」は「総本山金剛峯寺」の境内となっているものの、「高野山」に入ること自体には入場料や拝観料はかからない。
24時間開放されているため、好きな時間に観光できる。
「高野山」にある寺院ごとに参拝料や参拝可能時間は決まっているため、観光するスポットが決まったら、スポットごとに料金と時間を調べてみよう。
高野山のお勧め観光シーズンは?
「高野山」を観光するなら、秋をお勧めしたい。
「金剛峯寺の正門」をはじめとする、境内を彩る紅葉を楽しめるからだ。
カエデ・イチョウ・ブナなど、種類も豊富な紅葉の黄・橙・紅のコントラストが美しい。
ライトアップで煌びやかな姿を見せる「蛇腹路(じゃばらみち)」など、紅葉の名所が多いのも魅力。
見頃の10月下旬~11月上旬に合わせて可能な限りスケジュールを調整し、紅葉シーズンの「高野山」を観光してほしい。
ここだけは外せない!高野山の人気観光スポット7選
1,200年以上の歴史を持つ「高野山」は、日本仏教の聖地や伝統を感じられる場所が盛りだくさん。
開創者の空海の他にも、徳川家や武田信玄(たけだしんげん)など戦国武将や偉人にも馴染みがあり、崇高な雰囲気が漂う。
数多くの魅力を持つ「高野山」の中でも外せない見どころを厳選して7つ紹介しよう。
1. 金剛峯寺
金剛峯寺の屋根は、檜の皮を幾重にも覆った檜皮葺になっているのが特徴。
屋根には天水桶と呼ばれる消火用の木桶が設置されている。
一般参詣入口より中へ入り大広間へと進むと、齋藤等室が描いたという群鶴&松の襖絵が目の前に。
さらに奥へと続く梅の間、また狩野探斎が描いたとされる柳の間の襖絵も見事だ。
渡り廊下から別殿の回廊を巡ると国内最大級の広さを誇る石庭、蟠龍庭(ばんりゅうてい)がお出迎え。
ほかにも山内一円という広い境内には壇上伽藍、奥之院などさまざまな名所・旧跡があるので、履き慣れた靴を着用して事前に参拝ルートを確認してから現地へ訪れよう。
2. 高野山奥之院
高野山の「高野山奥之院」は、弘法大師が入定する聖地にして多くの参拝者が訪れる信仰の中心地。
樹齢800年にも及ぶ杉の木立の中に、20万基以上の墓石や記念碑、慰霊碑などが立ち並ぶ。
入り口である「一の橋」から「弘法大師御廟」まで続く石畳の参道の両脇には、織田信長や武田信玄、伊達政宗といった戦国武将の墓碑や供養塔、松尾芭蕉や高浜虚子の句碑、「汗かき地蔵」や「化粧地蔵」などそれぞれにエピソードのある個性豊かなお地蔵様などが並び、じっくりと見て回りながら約2kmの道のりを歩ける。
3. 壇上伽藍
弘法大師が高野山を開いた際、まず整備に取り掛かった場所がこの「壇上伽藍」。
伽藍とは、「僧が集い修行する閑静な場所」を意味し、弘法大師が眠る「奥之院」と並ぶ二大聖地として、高野山における信仰の中心地である。
高野山開創1200年の2015年に再建された中門をくぐった正面に建つのは、秘仏の薬師如来を祀り、高野山全体の総本堂としての役割を持つ「金堂」。金堂の仏像がある方向に右肩を向け、時計回りに参拝するのが正式な方法だ。
4. 大門
「高野山」の総門として表玄関の役割を担っているのが「大門」。
高さ約25mの堂々たる姿をしており、朱色に染まった二階二層門が印象的。
再建・修理が複数回行われ、1986年の解体修理で完成を迎え、門の色も白色から朱色に変わった。
「東大寺」に次ぐ日本で2番目に大きいとされる金剛力士像に注目してほしい。
「阿吽」の形で一対となった口を開いた阿形(あぎょう)と口を閉じた吽形(うんぎょう)は空海の思想を表現しており、写実的な描写や滑らかな作りが美しい。
極彩色で装飾された中備えの蟇股(かえるまた/荷重を支える建築部材)の透かし彫りも見どころ。
孔雀・竹とタケノコなど様々な種類があるため、探しながら観光すると楽しいだろう。
「大門」の手前にある展望台からは、「日本夕陽100選」に指定された綺麗な夕日や紀淡海峡が眺望できるのでお勧め。
5. 根本大塔
「壇上伽藍」の北側に位置する「根本大塔(こんぽんだいとう)」は、空海が設計した「高野山(真言密教)」の象徴的な存在。
四辺造りの初層に方形屋根をつけた2層構造の「根本大塔」は、日本初の多宝塔としても知られている。
高さ約48mを誇る外観にも圧倒されるが、堂内に広がる空海が創造した「立体曼荼羅」が魅力だ。
本尊(信仰の対象)の「大日如来」の周りに「金剛界の四仏」が配置され、「金胎不二(こんたいふに/金剛界と胎蔵界は一体という考え)」を表現している。
なお現在見られる姿は、空海入定1,100年記念して1937年に再建されたもの。
昭和を代表する画家・堂本印象(どうもといんしょう)によって「十六大菩薩」が描かれた16本の柱も必見。
6. 徳川家霊台
「徳川家霊台」は、1643年に江戸幕府3代将軍・徳川家光(とくがわいえみつ)によって、初代将軍・徳川家康(とくがわいえやす)と2代将軍・徳川秀忠(とくがわひでただ)を祀るために建てられた霊舎。
向かって右側に家康霊舎、左側に秀忠霊舎が並び、それぞれが透塀で囲まれ、正面に唐門があるのが特徴。
2棟はほぼ同じ造りがされているが、2人の干支にちなみ、家康には「虎」、秀忠には「兎」の彫刻が蟇股に彫られているので、確認してほしい。
「徳川家霊台」の魅力は、近世初期の霊廟建築の代表例として屈指の造形美を誇る豪華な造りだ。
外観は一重宝形造(ほうぎょうづくり/4枚の屋根が全て三角形で造られる)に細やかな彩色や彫刻が施され、内部は金箔や絵画で装飾されている。
7. 丹生都比売神社
創建約1700年の歴史を誇ると伝わり、高野山や熊野、吉野などを合わせた「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成遺産のひとつとして世界遺産に登録されている古社。
紀伊国一宮であり、全国に約180ある丹生都比売神社の総本宮。
「高野山」とは少し離れた場所にあるものの、「高野山」とも関係が深い神社なので、その他のスポットと併せて訪れてみよう。
寺院に宿泊して仏教文化を体験!高野山の宿坊4選
宿坊(しゅくぼう)とは、神主や僧侶、参拝者に向けてお寺・神社の境内に建てられた宿泊施設を指す。
現在は観光客も宿泊可能で、寺社文化を体験できるスポットとして人気だ。
「高野山」では、朝勤行(読経・座禅など)体験、野菜・豆類中心のヘルシーな精進料理を食べられる。
お酒が好きなら名酒・般若湯(はんにゃとう)もお勧め。
代表的な宿坊「福智院」・「一乗院」をはじめ、特徴・歴史が異なる50以上の宿坊があるため、伝統・建築・自然など目的に応じて楽しめるのも魅力。
代表的な宿坊を3つ紹介するので、静けさに包まれた非日常的空間で、心安らぐ時間を過ごしてみてほしい。
1. 恵光院
弘法大師が眠る「奥之院」一の橋入口から徒歩すぐの場所に位置する宿坊。
弘法大師の弟子である道昌僧都が住職となり、多くの人たちを供養したことから「廻向院(えこういん)」と呼ばれるようになったと伝わる。伝統と歴史を重んじつつ、Wi-Fiなど最新設備も完備している。
仏前で読経や回向を行う朝の「勤行」や、供物を焼きその香りを天に届ける「護摩祈祷」に、宿泊者は自由に参加が可能。
2. 一乗院
平安時代の開基以来1100年以上の伝統を誇る総本山金剛峯寺の塔頭寺院。
高野山の中心部に位置し、金剛峯寺や壇上伽藍といった主要スポットへも徒歩圏内と非常に便利。
寺院ならではの特色や一流の宿にも引けを取らない細やかなホスピタリティで52の宿坊がある高野山のなかでも特に人気が高い。
3. 福智院
1,200年続く聖地のなかでも800年の歴史をもつ「福智院」は、高野山唯一の天然温泉を有する宿坊として名高い。
男女それぞれ異なる浴場を完備した天然温泉に、宿泊者は滞在中いつでも入浴が可能。
15時から20時までは露天風呂も利用できる。朝6時から始まる勤行は基本的に自由参加だ。
4. 不動院
弘法大師空海彫像の不動明王(秘仏)が本尊の寺院で、907年に済高大僧正が開基した寺院。
本堂には、不動明王のほか、日輪大師尊像、舟板名号八幡菩薩などの霊牌が安置され、日々の供養が行われている。
高野山と併せて訪れるべき「熊野古道」
「熊野古道」は、「熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)」へ人々が巡礼するために通った道で、和歌山・三重・奈良・大阪・京都にまたがる。
上述した世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に含まれており、長い道のりの中で様々な史跡や神社仏閣、美しい自然景観を楽しめるのが魅力だ。
「高野山」からは、「小辺路(こへち)ルート」と呼ばれる約70kmの行程だが、険しい道のりが続くため注意が必要。
「熊野古道」を詳しく紹介した、こちらの記事も合わせて参考にしてほしい。
高野山に関するよくある質問
Q
高野山の紅葉の見頃は?
10月下旬から11月上旬です。
Q
高野山で桜は見られる?
見られます。4月下旬から5月上旬にかけてソメイヨシノなどの桜が咲き誇ります。
まとめ
真言密教の聖地「高野山」の見どころを紹介してきたが、いかがだっただろうか。
宿坊での宿泊から朝勤行や宗教行事体験など、日常で味わえない日本の伝統に触れられるのが大きな魅力と言えるだろう。
117のお寺が密集した宗教都市は日本でも珍しく、長い歴史によって作り出された荘厳な雰囲気も楽しめる「高野山」にぜひ一度訪れてほしい。
和歌山の定番観光スポットを厳選した、こちらの記事も参考に和歌山観光を満喫しよう。