古くから日本人に愛される麺料理「うどん」とは
腹持ちが良く気軽に食べられるうどんは、国民から愛される日本のソウルフード。
うどんはコシの強さと滑らかなのどごしが魅力で、つゆやトッピングで好みに合わせた楽しみ方ができる。
この記事では、うどんの概要・歴史をはじめに、日本でよく食べられる定番メニューから全国にある個性豊かなご当地うどんを紹介していく。
日本のうどん文化や、うどんの種類を詳しく知りたいと考えている方は参考になるはずだ。
目次
うどんとは
うどん(饂飩)とは、水と小麦粉を練り合わせた後に、麵状に加工したものを指す。
麺の太さによって「そうめん」や「ひやむぎ」など、様々な名称が存在するが、これらは全てうどんに分類される。
狭義では、乾麺(乾燥させた状態の麵類)で直径が1.7ミリメートル以上に成形されたものという定義がある。
他の麺料理と異なる点は、以下のような原料や調理工程の違い。
- うどん:小麦粉・水
- そば:そば粉・水・※少量の小麦粉を使う場合もある
- 中華麵(ラーメン):小麦粉・水・かん水(アルカリ塩水溶液)
うどんは、食物繊維が低く、糖質が多く含まれるため、消化に良く身体に優しいのが特徴。
簡単に調理ができ、気軽に食べられることから老若男女に人気で、日本では身近な料理となっている。
うどんの歴史
うどんの歴史は、西アジアからシルクロードを渡って、小麦粉や粉化技術が中国に伝来したのが始まりだ。
諸説あるものの日本には、遣唐使(中国に派遣した使節団)を通じて、奈良時代(710年〜794年)に伝わったとされている。
起源は、唐菓子の「混飩(こんとん/餡が入った団子)」や、米と小麦粉を混ぜた「麦縄」など、様々な説がある。
現在のうどんの原型は、室町時代(1336年〜1573年)に宋(現在の中国)から伝わった「切麦」を有力と考える声が多い。
江戸時代(1603年〜1868年)に入ると、うどんは全国に浸透する。
また、土地の気候や風土によって、少しずつ変化しながら各地で独自の食文化として発展を遂げていく。
世界的に見ると日本は極東に位置し、海に囲まれているので、流入した文化は国内に留まり、独自の進化をしやすいのだ。
その結果、製麵・保存方法や、つゆ・食材などに特徴が現れ、後述する「讃岐うどん」・「稲庭うどん」など地方を代表する料理が誕生した。
縁起物としての側面も持つうどん
うどんはその太さや長さから長寿の意味を持っており、縁起が良い食べ物だと言われている。
日本では、昔からハレの日(正月・七五三などの特別な日)に食べられてきた。
麵類には"末永く"や”恋愛運の向上”といった意味もあるため、「夫婦生活の長続き」の願いを込めて、うどんを結婚式の引き出物に贈ることが多い。
また、長期保存が可能かつ好みが分かれにくいので、縁起物としてお中元・お歳暮の贈り物の代表でもある。
うどんの種類で、意味合いが変わるのも特徴。
例えば、細くて長いうどんには「細長く丸い関係を築けますように(良好な人間関係)」、太くて長いうどんには「太く長く生きていけますように(健康長寿)」という意味合いがある。
定番のうどん料理
一口にうどんと言っても、提供形態や調理方法によって幅広い種類があるため、日本でよく食べられるうどん料理を5つ紹介する。
これから紹介する料理は飲食店だけでなく、家庭の食卓にも並ぶ日常に定着しているものだ。
かけうどん
「かけうどん」とは、ゆでたうどんが入った器に、温かいつゆをかけた料理を指す。
つゆは出汁が効いており、風味が良くそのまま飲めるのが特徴。
様々なうどんのベースになっている王道のメニューで、具材・薬味のトッピングで多くの楽しみ方がある。
素材の味を堪能できるため、初めてうどんを食べる外国人にもお勧め。
ざるうどん
「ざるうどん」とは、茹でたうどんを冷たい水で締め、ざる等の器に盛った料理を指す。
盛りつけられたうどんは、醬油ベースの麺つゆにつけて食べるのが一般的。
麵のコシやのどごしなど、うどん本来の味を楽しむシンプルなメニューだ。
ねぎ・生姜といった薬味との相性が良く、さっぱりとしているため、特に暑い夏に人気を誇る。
きつねうどん
「きつねうどん」とは、甘辛く味付けされた油揚げを「かけうどん」にのせた料理を指す。
うどんのコシとつゆが染み込んだジューシーな油揚げの食感を楽しめるのが特徴。
その食べやすさから年齢を問わず、あらゆる層に愛されるメニューでもある。
縁起の良いとされるきつねの好物が、油揚げだったことが名前の由来と言われている。
肉うどん
「肉うどん」とは、じっくりと煮込んだ牛肉と玉ねぎを「かけうどん」にのせた料理を指す。
甘辛の牛肉とコシの強いうどんの相性が抜群で、旨みと甘みが溶け込んだつゆが食欲をそそる。
非常に食べ応えがあるため、空腹時やがっつりと食べたい方にお勧め。
地域によっては、牛肉の代わりに豚肉や馬肉が使われており、楽しみ方も幅広い。
カレーうどん
「カレーうどん」とは、ゆでたうどんにカレー汁をかけた料理を指す。
日本で生まれたオリジナルメニューで、カレー汁によって様々な味を生み出すのが特徴。
カレーの丁度よい辛さが旨さを引き立て、絶妙に絡みあったうどんが満足感を与える。
肉・温泉卵・ねぎなど、トッピングで多彩なアレンジも楽しめる。
日本5大うどん
全国各地には、個性豊かなご当地うどんが存在する。
その中でも特に有名な「日本5大うどん」を紹介していく。
外国ではあまり味わえないので、近くの地域に旅行した際に食したい。
1. 讃岐うどん
「讃岐うどん」は、地元にうどんが根付く香川県(旧讃岐国)を代表する料理。
ご当地うどんの中において、もっとも有名な存在と言っても過言ではない。
「讃岐うどん」の最大の特徴は、独特なコシの強さとモチモチとした食感の柔らかさ。
硬すぎず、ほど良い弾力がある滑らかなうどんは、のどごしを楽しみながら味わえるのが魅力。
つゆに使われるイリコ(煮干し)のだしも、うどんとの相性がピッタリで旨みを引き立てる。
一般的には、生麺・半生麺で作られることが多い。
2. 稲庭うどん
「稲庭うどん」は、発祥地でもある秋田県を代表する料理。
約350年の古い歴史を持つが、明治時代(1868年〜1912年)までは、将軍・貴族らのみが口にできる高級料理で、一般市民に伝わったのはここ50年ほどである。
打ち粉にでんぷんを使い、そうめんのように引き伸ばす「手延べ製法」で作られており、平べったい断面が「稲庭うどん」の特徴。
手延べ製法によって、麺に気泡が生まれ、コシのある歯触りと口当たりの良い食感が魅力と言える。
3. 水沢うどん
「水沢うどん」は群馬県を代表する郷土料理。
約1,300年の歴史がある「水澤寺」付近で、誕生したと言われる手打ちうどん。
20以上ある工程を独自製法によって2日間かけてじっくりと作られ、特に最後に天日干しで仕上げるのが重要なポイント。
脈々と引き継がれた職人の技が感じられる「水沢うどん」は、ツルツルとした食感の良さにところどころ透き通った白い麺が特徴。
主に冷たい「ざるうどん」で提供されており、お店ごとに工夫を凝らすつゆでもうどんを楽しめる。
4. 五島うどん
「五島(ごとう)うどん」は長崎県を代表する料理。五島列島名産の椿油を塗りながら、棒状にした生地を引き延ばし束ねる工程を繰り返し、何回も熟成・乾燥を重ねて完成させる。
丁寧に時間をかけて作られた「五島うどん」は、切れにくいコシの強い艶やかな麺に仕上がり、シコシコした食感はひと味違った美味しさを生む。
一般的なうどんよりもやや細く、そうめんに近い断面が丸みを帯びた形状も特徴のひとつ。
地元周辺で獲れるトビウオを使った「アゴ出汁」も、うどんと共に親しまれている。
5. 氷見うどん
「氷見(ひみ)うどん」は、富山県を代表する郷土料理。
「手延べ製法」を軸に、温度や湿度に合わせて水や塩加減を調整する「手打ち製法」を織り交ぜながら、手間ひまをかけて作られる。
かつては生産量に限りがあり、「幻のうどん」とも呼ばれていた。
やや細めの麺は十分な食べ応えと粘り強さを感じられるので、"餅のよう"という例え方もされる。
温・冷の両方で美味しく味わえるため、季節や体調に合わせて食べ方を選択できるのも魅力。
個性豊かなご当地うどん3選
「日本5大うどん」を紹介してきたが、この他にも個性豊かなうどんが多数存在する。
最後に全国に散らばるご当地うどんの中でも、特に個性が強く人気のうどんを3つご紹介。
日本文化や食生活にも触れられるので、ご当地うどんの食事を日本旅行の楽しみのひとつに加えても良いかもしれない。
1. ひもかわうどん
「ひもかわうどん」は、群馬県を代表する郷土料理。
麺の厚みが薄く、幅(太さ)が広いのが最大の特徴。
お店によって異なるが、厚みは0.1cm程度、幅は1.5cmから10cm以上のものまで、極端に太いうどんも存在する。
食べやすいように短く切らず、1本1本が長い状態で提供されるため、見た目が他のうどんと大きく異なる。
平たくした餅やラザニアに近く、初見ではうどんに思えないほど個性が強い。
表面積が広い麺にはつゆがしっかりと染み込み、独特の食感・のどごしを味わえる。
2. 味噌煮込みうどん
「味噌煮込みうどん」は、名古屋(愛知県)を代表する郷土料理。
真水のみで練られた麺を、生の状態のまま土鍋で煮込む調理方法が大きな特徴。
塩を使わない生麺で作るため、一般的なうどんより嚙み応えがあり、麺の硬さに驚く人も少なくない。
つゆは東海地方で親しまれる濃いめの豆味噌がベースになっており、コクのある味わいとともに香りも楽しめる。
また、鶏肉やかまぼこ、きのこ類など具沢山かつボリューム満点で地元民から愛されている。
3. 皿うどん
「皿うどん」は、長崎県を代表する郷土料理。
うどんと名が付くが、実際はうどんよりもかた焼きそばに近い。
出前用にちゃんぽんをアレンジしたことがきっかけで、長崎県で誕生した料理だと言われている。
太麵と細麵の2種類があるが、全国的には細麵を使った「皿うどん」が浸透している。
揚げた麺に肉や海鮮、野菜が入ったウスターソースベースのあんかけがかかっており、パリパリした食感が特徴だ。
全国どこでも食べられるチェーン店のうどん
日本ではうどんの専門店だけでなく、チェーン店も充実している。
その中でも特に有名なのが、全国規模で展開する「丸亀製麵」・「はなまるうどん」の2店。
それぞれの特徴や違いを以下の表にまとめた。
店名 | 丸亀製麵 | はなまるうどん |
---|---|---|
国内店舗数 | 約820店 | 約500店 |
うどん | 讃岐うどん:国産小麦100% | 讃岐うどん:国産と外国産の小麦を独自ブレンド |
かけうどん1杯の値段※税込 | 並:390円/大:550円/得:710円 | 小:330円/中:480円/大:650円 |
特徴 | オープンキッチン型の店内で製造工程を間近で見られる臨場感/小麦粉から打ち立ての新鮮なうどんの提供 | セントラルキッチンで作られたバラツキのないうどんの提供/全てのうどんにレタス1個分の食物繊維が入るヘルシーさ |
魅力 | うどんメニュー・トッピングの天ぷらが豊富/ファミリー層でも入れる安心感 | 1杯あたりのうどんの量が多く、コストパフォーマンスが高い/女性客に配慮したメニュー設定 |
いずれも日本に旅行すれば見かける機会は多く、手軽かつリーズナブルにうどんが食べられる。
テイクアウトも可能なので、時間がない時や店を探す手間を省きたい場合にもお勧め。
コンビニでも購入できるカップうどん
カップうどんとは、お湯を注ぎ数分待つと食べられるカップ入りの即席うどん。
カップヌードルのうどん版だと思ってもらえばわかりやすい。
特にマルちゃんの「赤いきつねうどん」と「どん兵衛」が有名で人気だ。
「赤いきつねうどん」は、かつお節をブレンドして使ったこだわりのつゆが特徴で、"だし"本来の風味を味わえる。
"だし"に分厚く甘めの油揚げとちぢれ麵がしっかりと絡み、より一層の美味しさが生まれる。
一方で「どん兵衛」は、ふっくらした甘みのあるおあげと、もちもちの食感が味わえる厚みのあるストレート麺が特徴。
つゆの風味を引き立てる彩り七味も刺激があって癖になる魅力を持つ。
地方ごとの好みに配慮するために、地域別につゆを変えて販売しており、全部で「赤いきつねうどん」は4種類、「どん兵衛」は3種類の味がある。
コンビニで簡単に購入できるので、ホテルで食べても、お土産に持ち帰っても良い。
うどんに関するよくある質問
Q
うどんとは、どのような料理ですか?
うどんとは、水と小麦粉を練り合わせた後に、麵状に加工したものを指します。
Q
そばとの違いは?
うどんは「小麦粉」を使うのに対し、そばは「そば粉」を使用します。
Q
ラーメンで使う中華麺との違いは?
中華麺では小麦粉と水だけでなく、かん水(アルカリ塩水溶液)も使います。
まとめ
日本のソウルフードである「うどん」を文化的側面からも紹介してきたが、いかがだっただろうか。
記事でも紹介したように、一口にうどんと言っても地域やお店によって特徴が異なる。
ご当地ラーメンのように、その土地ならではのご当地うどんが全国各地にあるため、ぜひ旅行プランの中にご当地うどんを食す時間を入れてほしい。