
心地よい香りにリラックス!「お香」のススメ
暮らしをより豊かにしてくれる“お香”。いい香りが漂ってくると心がほっとしますよね。日々めまぐるしく生活する現代人のリフレッシュ方法として、“お香”をたく文化が日本にはあります。古くから日本人の生活とともにあった「お香」の世界の奥深さをご紹介します。
日本のお香の歴史
日本にお香が入ってきたのは1400年以上も前のこと。お香は仏教とともに飛鳥時代の538年頃に入ってきたと考えられています。595年に日本ではじめてできた歴史書である「日本書紀」の中でお香の原料となる「沈香(ぢんこう)」(沈香の詳細は後述)についての記述があり、これが日本で最も古いお香に関する記述です。
その後、奈良時代でのお香は、仏前を清めるといった、宗教的な意味合いで使われる場面で使われることが多かったようです。そして日本における仏教の発展に大きく貢献した鑑真和上(688~763年)が753年に唐から来日した際に、仏教とともにたくさんの香薬とお香の配合技術を伝えたといわれています。
そしてお香を唐様の教養として学んだ貴族たちがこれまでの宗教的意味合いから日常生活の中でも楽しむようになり、平安時代には、政治の中心だった貴族にお香文化が広がっていきます。この時代の文学「枕草子」や「源氏物語」でもお香が使われている様子が描かれています。このときは自ら香料を複雑に練り合わせて作った「薫物(たきもの)」を炭火でくゆらせて、部屋や頭髪、着物などの衣服にたきしめていました。薫物には沈香、丁子、白檀などの香料を粉末にして、梅肉や蜜で練り固めて作っていたようです。その後禅宗が広まった鎌倉時代には、香木の香りに心を傾けて、その香りをゆっくりと味わう「聞香」の方法が確立されます。
江戸時代になると、貴族や武士だけでなく、経済の中心を担う町人にも組香が広まりました。香りを楽しむための香道具が作られ、香りを鑑賞する作法ができあがり、「道」として確立されていきました。一方で、中国からお線香の製造技術が伝わってきました。そして庶民のあいだにもお線香の使用が広がっていったのです。
お香の原料と産地
香木
お香の原料のひとつは香木という香りのする天然の木です。香木として代表的なものは3種類。白檀、沈香、伽羅です。同じ種類の香木でも木によってそれぞれ香りが異なっていて、なかには入手困難で貴重なものもあります。

・白檀(びゃくだん)
インドやインドネシア、マレーシアなどで栽培されている、最も一般的な香木です。インドのマイソール地方で育てられている「老山白檀」が最高品質のものとされています。お香以外にも、彫刻工芸品や扇などの材料から薬用まで幅広く使用されています。
・沈香(ぢんこう)
インドシナ半島やインドネシアなど東南アジアの熱帯雨林で長い時間をかけ、自然の力で作られた希少な香木です。傷など、外部からのさまざまな要因によって木の一部に樹脂が集まって固まり、樹木自体が枯れていくなかで熟成されてできあがる香木です。“水に沈む香りのする木”という意味の「沈水香木」を略して「沈香」と呼んでいます。薫香料のほか、薬用としても昔から用いられています。
・伽羅(きゃら)
沈香の一種です。沈香とほぼ同じ過程でできますが、その香気や油質の違いによって別格なものされています。昔はベトナムの限られた地域で採取されていましたが、現在は困難になり、とても貴重な香木のひとつになっています。
また、これらの香木は使い方に合わせて、いろいろな形に加工されます。
・刻(きざみ)

香木を細かく刻んだものです。お焼香のほか、空薫(そらだき)にもおすすめです。
・爪

仏事のほか、空薫に最適。細長くカットした形状です。
・木(ぼく)

もっとも自然に近い形です。使う人が好みの大きさに切り分けて使います。
・重(かさね)

白檀のみに使われる形状です。掛け軸や巻物の防虫に役立てます。
・割(わり)

茶会や仏事のほか、お茶のお稽古や空薫などでよく使われている形状です。
・角割(かくわり)

仏教儀式や茶道で使われる、四角く端正に整えた形状です。
ちなみにこの香木の形は、日本人が古くから大切にしている概念「ハレ」と「ケ」によって使い分けることもあります。「ハレ」はお祭りや儀礼など特別な日をさし、「ケ」は何事もない日常を意味します。不揃いな形状のゆえ少しお得になった「爪」や「刻」が「ケのお香」として普段使いにおすすめ。いっぽうで、ひとつひとつ整えられた「角割」は特別な日のための「ハレのお香」として使われています。
天然香料
香木のほかにもお香の原料になる天然香料は数十種類あって、天然なもののため入手困難なものも多くあります。なかには香辛料や漢方薬として親しまれてきたものもあり、耳馴染みのある香料も少なくないはずです。
・桂皮(けいひ)

シナニッケイ(クスノキ科)の樹皮を乾燥したものです。別名シナモン。中国南部やベトナムなどで採れます。
・丁子(ちょうじ)

チョウジノキ(フトモモ科)の花のつぼみを乾燥させたものです。西洋では香辛料のクローブとして古くから使われています。
・大茴香(だいういきょう)

ダイウイキョウ(マツブサ科)の果実を乾燥させたものです。別名八角茴香(スターアニス)で、中華料理には欠かせない香辛料としても使われています。広東や雲南省の中国南部で産出されています。
・安息香(あんそくこう)

アンソクコウノキ(エゴノキ科)の幹に傷を付け、染み出てくる樹脂を集めたものです。スマトラで多く産出されています。
・竜脳(りゅうのう)

リュウノウジュ(フタバガキ科)の樹液の結晶です。お香の原料や防虫剤として使われています。主にスマトラやボルネオで産出されていますが、日本のマルコ山古墳からも出土し、話題になりました。
・乳香(にゅうこう)

ニュウコウジュ(カンラン科)という木の幹から染み出てくる樹脂です。アフリカ東北部、アラビア海沿岸部で産出されています。キリスト教の儀式でも使われています。
・山奈(さんな)

ベトナム原産の植物で、主に中国南部やベトナムで採れるバンウコン(ショウガ科)の根茎を乾燥させ切片にしたものです。
・藿香(かっこう)

フィリピン原産のシソ科の草本を乾燥させたものです。パチュリーとも呼ばれる植物で白色から薄紫色の花が咲きます。
・貝香(かいこう)

巻貝の蓋です。香りを長時間持続させる保香剤として使われています。唯一の動物性の原料です。現在ではアフリカ東北部沿岸原産の貝香が多く使われています。
これらの香木と天然香料を調合することによって、お香が作られています。お香は日本古来のものですが、お香の原料は東南アジアや中国、インド、西アジアなどの世界各国から輸入しているものがほとんどです。
お香の種類
お香は直接火につけるものもあれば、何もしなくても常温で香るようなものなど、形が違ったり使い方が違ったり、さまざまです。どのようなシーンで使いたいかによって使い分けるといいでしょう。
1. 直接火をつけるお香
香炉や香立てにお香を置いたり立てたりして使います。
・お線香(スティック状のもの)

仏事でよく使われるため、日本人が一番慣れ親しんでいるお香です。室内線香、仏事線香など、目的によってさまざまな種類や長さがあります。お線香が長いほど燃焼時間も長くなります。簡単に折ることができるので、自分の使いたい時間の分だけ折って使うことができ、時間の調整がしやすく便利なのも特徴のひとつです。燃えている面積が均一なので、香りも均一に広がっていきます。
☆お線香の使い方☆
お線香を使うときに用意するものは香皿(または陶製の小皿など)、香立、ライターです。ライターは床と垂直に持って火を付けましょう。ライターの炎にお香の先端を近づけて火をつけます。火がついたらお香を真下へ素早く下げて炎を消します。あるいは、手で仰ぎ、強い風圧で一気に消すのがポイントです。お香を振って消すのは危険なのでやめましょう。そして灰を受けられる大きさの香皿に載せた香立にお線香を立て、香りを楽しみます。
・円錐型(コーンタイプのもの)

円錐の先端に火をつけて使います。円錐型のため、燃焼すればするほど燃える面積が広くなっていき、それに伴って香りも徐々に強くなっていきます。短時間で香りを得たいときに便利なのがこのタイプ。灰が円錐型の形で残るので、散らばりにくく片づけやすいのが特徴です。
☆円錐型の使い方☆
円錐型のお香を使うときに用意するものは香皿(または陶製の小皿など)、香立、ライターです。ライターの炎に円錐型の先端を近づけて火をつけます。火がついたらお香を真下へ素早く下げて炎を消してください。手で仰いで強い風圧で一気に消しても問題ありませんが、お香自体を振って消すのは避けましょう。火がついたら香皿に載せた香立にお香を置き、香りを楽しみます。
・渦巻型

渦を巻いている形のため、燃焼時間が長いです。そのため広いお部屋や空気の流れが多いような場所にぴったりです。一度で使い切る必要はなく、途中で消したければ折ったり、金属製のクリップなどで消したい部分を挟んで消したりすれば問題ありません。
☆渦巻型の使い方☆
渦巻型のお香を使うときに用意するものは香皿(または陶製の小皿など)、香立、ライターです。ライターで渦巻きの先端部分に火を付けましょう。お線香や円錐型と違って渦を巻いているため、火をつけるときに隣に燃え移らないように注意してください。お香を少し傾けて真下へ素早く下げて炎を消します。香皿に載せた香立に置いて楽しみましょう。
2. 常温で香るタイプのお香
火を使わず常温で香るように調合されています。そのため香りを漂わせたい空間に置くだけでOK。手軽に楽しむことができます。お部屋飾りや衣裳のアクセントとしても使われています。匂い袋のほかに、しおり型のお香もあります。本に挟んだり財布や名刺入れに忍ばせたりして使います。さらに最近では匂い香のストラップもあり、携帯電話やバッグなどにつければ、いつでもほのかな香りが漂い、色々な場面で香りを楽しめます。香水ほどの香りの強さはなく、ほのかに香る程度なので、どんな場面でも使いやすいです。
・匂い袋

白檀、丁子、甘松、竜脳などの香料を細かく刻んで調合した「匂い香」と呼ばれるものが袋の中に入っています。たんすに入れて使うほか、着物の帯揚げに通したり、袂に落としたりして使う、衣服に香りを移す香嚢の一種です。洋服の場合はポケットに入れたり、ポーチなどの小物に入れたりして楽しむこともできます。
この匂い袋は自分で作ることもできます。大切な匂い袋の香りが薄れてしまったときには、お香を入れ替えればまだまだ使うことができます。用意するものは匂い香、巾着、薄い和紙、テープ、スプーンです。まずは適量の匂い香を薄い和紙でこぼれないように包み、テープで留めます。それを巾着に入れると出来上がり。とても簡単に作ることができます。お気に入りの匂い香とお気に入りの巾着で作ってみてはいかがでしょうか。
3. 間接的に熱を加えるタイプのお香
・練香(ねりこう)

粉末にした香料に蜜や梅肉を加えて練り上げて熟成させた丸薬状のお香です。茶の湯の席では場を清めるために香をたきますが、練香は主にその際に用いられます。
練香は本来さまざまな香料を組み合わせて自分の好みの香りを作り上げて楽しみます。配合の加減で香りが変わるのがおもしろさのひとつ。用意するものは香料、はちみつ、乳鉢、乳棒。香料を好みの香りに配合し、混ぜ合わせます。そこにはちみつを加えて乳棒を使ってよく練り合わせます。手で適当な分量に丸めるとできあがりです。練香の調合キットを販売しているところもあるので、まずはそういったもので作ってみるのがおすすめです。
・印香(いんこう)

香木をたくときには主に2種類の方法があります。ひとつは繊細な香りの味わいを静かに鑑賞する「聞香(もんこう)」。そして部屋の空気を彩る「空薫(そらだき)」です。目的に合わせて、たき方を変えるのがポイントです。
4. 専門的なお香
お寺や仏事で使われるお香を紹介します。
・長尺線香

33cm~73cmの長さがある燃焼時間の長いお線香です。70cmを超えるものは6時間ほど燃え続けます。お経を唱えたり坐禅を組んだりする時間を「線香一本が燃え尽きるまで」と定めて、その時間を計るためにも使われています。
・塗香

粉末状のお香です。本尊にお供えしたり、修行者がからだに塗ったりして身を清めて邪気を近づけないために用いるものです。また写経を行う際にも使用されます。
・抹香

非常に細かい粉末状のお香。沈香や白檀などと混ぜて用います。主に仏前でくゆらせて使います。
・焼香

香木や香草を細かく刻んで混ぜ合わせたお香です。基本の配合の組み合わせは沈香、白檀、丁子、鬱金、竜脳の5種類です。
お香のたき方
・聞香

- 炭をおこす
- 灰に炭をうずめる
- 灰をかき上げる
- 灰を山の形に整える
- 火気を通す火窓を作る
- 銀葉(雲母の板)をのせる
- 小さく割った香木を銀葉にのせる
- 香りを聞く
・空薫

- 炭をおこす
- 灰をあたためる
- あたためた灰の上にお香をのせる
以上のようにお香を楽しむためにはかつては手間や時間が必要でした。しかし現在では電気式の香炉も販売されていて、炭をおこして灰をあたためなくても、電気をつけて数分後にはお香を楽しむことができます。

伝統守る老舗メーカー「松栄堂」
日本人の生活とともにあった「お香」。このお香の伝統を守りながらも、時代の移り変わりとともに、現代人の“いま”の生活にあった香りを提供し続けているのは、京都市中京区にある「香老舗 松栄堂 京都本店」。創業300年余りのお香の老舗メーカーです。伝統に培われた豊かな経験値・情報力・技術力から生まれたさまざまなお香は、これまで一貫して妥協することなく素敵な香りづくりをされてきたからこそ。

二条通から少し北、烏丸通に面した店舗。実は二条界隈にはかつてより薬問屋が多く、江戸時代には幕府公認の「薬の町」だったそうです。最盛期には100軒以上もあったのだとか。薬問屋なのでもちろんお香の原料でもある漢方が手に入りやすく、そんな場所で松栄堂は脈々と“香りの文化”を守り続けてきました。伝統に培われた豊かな経験値・情報力・技術力。宗教用のお香から茶の湯やお座敷のお香、そして趣味性の高いお香や匂い袋まで。伝統を守りながらも時代の移り変わりとともに新しい香りを創造し続けているお香メーカーです。
店内には伝統的な和の香りが特徴のシリーズがずらりと並んでいます。

ほかに、ピュアな香りが特徴の「Xiang Do(シャンドゥ)シリーズ」は「ローズ」や「ミックスベリー」など16種類あります。

「あれ?でもバラもお香の原料でしたか?」と松栄堂の担当者の方に質問すると、バラなどを直接的なものを使わずに古くから使われている原料や精油を使ってバラの香りを表現しているとのこと。
さらに、松栄堂は世界的なキャラクターや日本が誇るアニメなどとコラボレーションすることも。たとえばこちらのお線香。

断面がミッキーマウスの形になっています。ただでさえお線香を作るには繊細な技術が必要なのにも関わらず、こんな風に曲線が入ったミッキーマウスの形まで作れるのです!さまざまな商品から老舗のお香メーカーとしてのプライドを感じずにはいられませんでした。
こちらではもちろんお香や関連商品を購入することができます。どんなシーンでどのように使いたいのか、ぜひ販売員の方に相談しながら商品を検討してみてください。オンラインでの購入も手軽にできる時代ですが、お香を知り尽くした販売員の方にお話しを伺いながら購入することができますし、気になる商品があれば実際に火をつけてその香りを嗅がせてもらうこともできます。火をつけていない状態の香りと、たいた状態の香りとで少し香りも変化するようなので、気になるものがあれば試せるのがうれしいですね。
香りを体感できる施設「薫習館」
松栄堂の隣には、香りの知識を深め、お気に入りの香りと出会える場所があります。それが「薫習館」という施設!香りについて知って・学んで・楽しむことができます!

2018年7月に開館し、年間10万人もの人が訪れる人気スポットです。運営しているのは、上記でご紹介した京都の老舗お香メーカー「香老舗 松栄堂」。この「薫習館」の建物に入ると出迎えてくれたのはとても長いお線香。その長さなんと120cmです。

これは「薫習館」の開館時間(7時間)に合わせて特別に作ったものなんだそう。訪ねたときは半分以上が燃えていました。こうやって見るとお線香は時間の経過を教えてくれるものでもあるなと感じます。そして入ってすぐ右手には「香りのさんぽ」というスペースがあります。

ここでは色々な香りに触れることができます。天井からは白い箱が3つ吊り下がっています。

これは「かおりBOX」と呼ばれる箱。ここに頭を入れてみると、いい香りで満たされていることがわかります。視覚や聴覚などによる先入観をシャットアウトして純粋に香りを楽しんでほしいという願いからこの「かおりBOX」のコーナーを作ったのだそう。3つそれぞれの箱は違ったお香の種類になっているので、どんな香りが使われているのか一緒に行った友人と考えるのも楽しそうですね。フォトスポットにはスマートフォンを設置できる台があるので、箱に頭を入れたまま写真撮影ができますよ!
さらに「かおりBOX」の奥には「香りの柱」のコーナーが。

こちらではお香の原材料の香りを体験できます。白いラッパ状の部分に鼻を近づけ、ポンプを押すと原材料の香りが。桂皮や竜脳などおなじみのものや、いまはワシントン条約で商取引が禁止されているジャコウジカの雄の腹部にある香嚢から採取される麝香まで。麝香は元々研究用に持っていたものを今回展示しているそうです。日本で麝香の香りを体験できるのは貴重で、ここだけかも!?しれません。
ほかにも江戸時代に伝わった当時の製造工程のミニチュアや白檀の大木などが展示されていて、体験しながら香りやお香についての知識を深められます。
また、500円で匂い袋やお線香の「ガチャ」、その名も「Kun Gacha」を回せます。

どんな香りと出会うかはお楽しみ。このように薫習館はさまざまな香りと出会うきっかけがたくさん詰まった建物なのです!
お線香を作る香房へ
今回、松栄堂 京都本店の2階で、お線香ができるまでの様子を見学させてもらいました!この香房では1日に約6万本のお線香が製造されています。さっそく香房の中に入るといい香りが〜!
1. 計量・調合・攪拌
原料となる香料を粉末にし、計量します。複雑に調合した香料の比率は調合師だけの秘密。調合師以外はほかの工程を担う方でも知らないそうですよ。そして香料につなぎの役目をする「椨粉(たぶこ)」を加え、攪拌。攪拌したらふるいにかけて均一に混ぜ合わせます。
2. 練り

続いてふるいにかけた原料を大きな混練機に投入。そして攪拌しながら水、着色料を加え、20~30分かけて粘土状になるまで練っていきます。水は気温や湿度によって分量を変えているそうで、耳たぶくらいの固さになるように調節しています。指先の感覚でその量を調節するため、この工程は熟練のワザと勘が研ぎ澄まされたベテラン職人の仕事になっています。
3. 押し出し・盆切り
今度は練ったものを油圧式押し出し機に入れて、小さな穴から押し出していきます。まだ柔らかいお線香の原型が約70本にょきにょきっと出てきます。

それを盆板という板で受け、竹べらを使って両端を切り落としていきます。
私も特別に体験させていただいたのですが、まず、出てきた粘土状のお線香が重なりあってうまく盆板に乗りません。さらに竹べらで両端を切り落とすときに変に圧がかかってまだ柔らかいお線香が曲がってしまいました。これは難しい…。この工程も何年もこの製造に携わっている職人の方が担うお仕事のひとつだそう。ひとつひとつの工程でスペシャリストが携わっているので、美しいまっすぐなお線香が出来上がるのだなと感動しました。
4. 生付け
さらに盆板に乗った柔らかいお線香を手本板という長い板に移し替えます。

そして隙間のないように敷き詰め、揃えていきます。ここで隙間ができてしまうとお線香が曲がってしまう原因になるそうです。そして手本板からはみ出した部分を切り落とし、乾燥用の板に移し替えます。

ここでは仮乾燥も行い、乾燥が進むとまたわずかながらも隙間ができてしまうので、その隙間を埋めるように寄せます。


次の工程の乾燥室に移すまでの間、1日に2~3回繰り返し揃える作業を行います。
5. 乾燥
お線香を乾燥室に移動させ、送風機で空気を循環させながら2~3日かけて乾燥させていきます。乾燥室は湿度や温度が一定に保たれていて、季節によって変わるそうです。「効率よく一気に熱で乾燥させないのですか?」という質問に「そうすると香りが飛んだり、お線香が曲がったりする原因になってしまいます」とのこと。お線香づくりはとても繊細なものだと再認識しました。
6. 板上げ
完全に乾燥したお線香を束ねて、パッケージに入れていきます。ここで曲がっているようなお線香は規格外としてより分けますが、店頭での香りのサンプルなどに使っているそうです。
昔ながらの製法をほとんどそのままに作っています。予約をすれば見学も受け入れていて、職人の方たちが守り受け継いできた伝統のワザを間近で見ることもできます。詳しくは松栄堂までお問合せください。
松栄堂の直営店
・京都本店/薫習館
- 郵便番号
- 〒604-0857
- 住所
- 京都市中京区烏丸通二条上ル東側 Google マップ
- TEL
- 075-212-5590
・産寧坂店
- 郵便番号
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- 住所
- 京都市東山区清水3-334 青龍苑内 Google マップ
- TEL
- 075-532-5590
・京都駅 薫々(くんくん)
- 郵便番号
- 〒600-8214
- 住所
- 京都市下京区東塩小路高倉町8-3 Google マップ
- アクセス
- JR東海 京都駅 八条口側1F アスティロード内
- TEL
- 075-212-5590(本社代表)
・大阪本町店
- 郵便番号
- 〒541-0053
- 住所
- 大阪市中央区本町3-6-4 本町ガーデンシティ1F Google マップ
- TEL
- 06-6121-5590
・銀座店
- 郵便番号
- 〒104-0061
- 住所
- 東京都中央区銀座7-3-8-1F(外堀通り沿い) Google マップ
- TEL
- 03-3572-6484
・人形町店
- 郵便番号
- 〒103-0013
- 住所
- 東京都中央区日本橋人形町2-12-2 Google マップ
- TEL
- 03-3664-2307
・横浜店
- 郵便番号
- 〒220-0004
- 住所
- 神奈川県横浜市西区北幸1-5-10 JPR横浜ビル1F Google マップ
- TEL
- 045-412-5590
・札幌店
- 郵便番号
- 〒064-0808
- 住所
- 札幌市中央区南8条西12-3-6 Google マップ
- TEL
- 011-561-2307
まとめ
松栄堂や薫習館に入ると、古くから日本人が日常をともにしたお香のいい香りに包まれ、幸せな気持ちになります。今回、香房の見学の帰りにお香をいただきました。後日、自宅でお香をたき、香りを嗅ぐと、当日伺ったお話しや香房での職人さんの息づかい・情熱が記憶として蘇ったのです。香りは我々人間の五感の中でも特に記憶と結びついている感覚なのだと感じました。自身で楽しむのにも、お土産にもぴったりな「お香」。ぜひ日本に訪れた際は松栄堂で香りに癒されて、香りと思い出とを一緒に、母国へ持ち帰ってもらいたいと思います!
※参考:
香老舗 松栄堂.お香のことhttps://www.shoyeido.co.jp/incense/index.html
株式会社講談社ビーシー公式ページ まんが社会見学シリーズhttp://www.toyokuni-bc1.net/bcbook/series_01/