
【万華鏡徹底ガイド】覗けば広がる美しい万華鏡の世界
反復するきれいな模様。一度現れた模様は二度と同じものを見ることができません。とても刹那的で儚い美しさがあります。これが万華鏡の最大の魅力です。
多くの日本人は子どものころ、万華鏡を手でくるくると回しながらいろいろな表情を見せる万華鏡に夢中になり、遊びました。色と形が瞬時に変化し、思いもよらない模様が現れるその一瞬のきらめきに、理由もなく心を奪われた記憶は、大人になったいまでも懐かしく残っています。その万華鏡は、いま、「おもちゃ」としての側面だけでなく「アート」としての側面も併せ持つようになりました。筒状のものだけでなく、変わったデザインのボディのものや、想像がつかないような模様を生み出す万華鏡までさまざまです。
今回は、万華鏡の誕生と歴史を紐解くだけでなく、万華鏡の奥深い世界や魅力を体験できる施設「京都万華鏡ミュージアム」や、万華鏡作りの体験教室まで、万華鏡の徹底ガイドをお送りします!のぞけば広がる無限の世界へお連れしましょう。
万華鏡とは
万華鏡は英語で「カレイドスコープ」。ギリシャ語である「きれいな模様を見る」といった意味から作られた造語です。万華鏡のミラーは鏡を2枚以上組み合わせて作る角筒状の多面鏡です。組む枚数や組み方によって多くの種類があり、映し出される映像も異なってきます。多面鏡のため、ひとつの実像(オブジェクト)が複数の鏡に反射し、その反射を繰り返して美しい映像を生み出しています。
一般的な万華鏡は、円筒の中に長方形の鏡を、正三角形、二等辺三角形、直角三角形のどれかに組み合わせて作ります。規則的できれいな模様を生み出すためにはこの3つのどれかである必要があるんだとか。とても奥が深く、考えて作られているのが万華鏡です。

万華鏡の歴史
1. 生まれはスコットランド!
万華鏡が生まれたのはスコットランドです。偏光と屈折に関する「ブリュースターの法則」や光は赤、青、黄の3色から作られるという「光の三原色」を発見した物理学者のディヴィッド・ブリュースターが、1816年に発明しました。その発明は実に偶然的なもの。「灯台の光をより遠くへ届かせる方法」などの光の反射や屈折について研究している中で、光が遠く届くように鏡の組み合わせを工夫している最中に偶然発明したそうです。その後、その美しさに魅了され、万華鏡はヨーロッパ中に広まりました。
2. 江戸時代に日本へ
万華鏡は江戸時代に日本にやってきました。江戸時代日本は鎖国をしていましたが、唯一、長崎の出島でオランダと貿易を行っていました。万華鏡がヨーロッパ中に広まったということは、もちろんオランダにも出回っています。日本へは、出島を通じて伝来し、出島に来ていた大阪の商人が万華鏡を持ち帰って日本中に広めたと言われています。当時の大阪で万華鏡が出回り始めたのは、ブリュースターが万華鏡を発明してから、たったの3年後のことでした。それくらいのスピード感をもって広まるほど、当時の人たちにとっても万華鏡は美しいもので、魅了されるものだったということがうかがえます。江戸時代の文献にも万華鏡についての記載があります。「攝陽奇観(せつようきかん)」(浜松歌国)には「此頃、紅毛渡り更紗眼鏡流行、大阪にて贋物多く製ス」とあるのです。万華鏡のボディ部分にインドの更紗が巻かれていたことから「更紗眼鏡」と呼ばれていたようです。それにしても、「贋物」が出回るほど、万華鏡は人気のおもちゃだったのですね。
3. 昭和初期に万華鏡全盛期へ
万華鏡と呼ばれるまで、さまざまな名前で呼ばれていました。江戸時代末期には、錦のように鮮やかな色を見る眼鏡ということから「錦眼鏡(にしきめがね)」、またたくさんの色を見ることから「百色眼鏡(ひゃくしきめがね)」と呼ばれていました。20世紀はじめには中国からたくさん輸入されてきたおもちゃの中に中国で「万華筒(ワンホァトゥ)」と呼ばれていた万華鏡も入ってきました。日本で前からあった「百色眼鏡」の鏡の文字が「万華筒」の筒と入れ替わり「万華鏡(ばんかきょう)」と呼ばれるようになったそうです。そして現在の呼び名の「万華鏡(まんげきょう)」へと変化していきました。その後縁日の露店や駄菓子屋で万華鏡は売られます。駄菓子屋玩具として定番になったのは昭和初期。日本中の子どもたちは万華鏡に夢中になり、全盛期を迎えます。第二次世界大戦後は、万華鏡は日本の復興の平和産業としてアメリカに多く輸出されていきました。
4. 万華鏡はおもちゃからアートへ
1980年代、輸出先のアメリカで、万華鏡はアートに昇華されていきます。アメリカの、万華鏡コレクターのコージー・ベーカーさんが、そのきっかけとなった人物です。コージー・ベーカーさんは息子を交通事故で亡くし、悲しみに打ちひしがれていました。そんな失意の中出会ったのが万華鏡でした。その美しさに癒され、元気づけられていきました。そして、コージー・ベーカーさんは楽しくおもしろい万華鏡を世の中に広めていきたいと考え、ガラス作家たちに万華鏡づくりを呼びかけたのです。そして、ガラス作家たちによって作られた万華鏡はこれまでのおもちゃであった万華鏡と一線を画すアート作品へと変化を遂げました。
現在では、アメリカに本部を置く万華鏡愛好家たちの団体「ブリュースター・カレイドスコープソサエティ」が主催となって、万華鏡の世界大会が毎年開催されていて、過去には日本で開催されたこともあります。また、日本の万華鏡作家の作品がこの大会で最優秀作品賞に選ばれたことも何度もあり、このことからも、世界大会で何度も受賞するくらい、日本の万華鏡は芸術性が高いものになっているということがわかります。
京都万華鏡ミュージアムへ行ってみよう!
京都万華鏡ミュージアムとは
京都市中京区にある京都万華鏡ミュージアム。京都市営地下鉄 烏丸御池駅から歩いて3分ほどのところにあります。

京都万華鏡ミュージアムは、万華鏡を専門に収集・展示しているミュージアムです。2004年6月に開館しました。施設には万華鏡展示スペースのほか、ミュージアムショップやカフェが併設されていて、万華鏡について詳しく学ぶことができる施設になっています。年間3〜4万人が訪れて、外国人の方も数多く訪れているので、英語で対応していただくことが可能です。
入口の手前にも万華鏡が。呼び鈴かと思ってボタンを押すと、柱に取り付けられた万華鏡がくるくると回っていました!

入館する前から万華鏡の世界に入れて、わくわくします。入館したら、廊下にも大きい万華鏡がたくさん並んでいました。
こちらは、カメラのレンズに映った自分自身や景色が万華鏡の映像になれるというもの。大きなモニターに映し出されます。

左右からお互いに顔を覗き込むとお互いの顔が映像になる万華鏡も。

相手の顔がたくさん出てくるため、おもしろく、子どもに大人気だそうです。今回は展示室に入るまでに、手荷物はコインロッカー(返却式)に預けましょう。万華鏡はガラスや陶器でできているものが多く、とても繊細です。万が一当たって壊さないように手荷物は預けてくださいね。
施設概要
- 名称
- 京都万華鏡ミュージアム
- 住所
- 604-8184 京都市中京区姉小路通東洞院東入曇華院前町706-3
- 電話
- 075-254-7902
- 開館
- 毎週火〜日曜日、祝日
- 時間
- 午前10時〜午後6時(最終入館午後5時30分)
- 休館
- 毎週月曜日(祝日の場合は開館、翌平日閉館)、年末年始
- 料金(全て税込)
- 大人500円、シニア(65歳以上)300円、高校生300円、小・中学生200円、幼児無料、各種割引制度有
- アクセス
-
・京都市営地下鉄 烏丸御池駅(出口3-1、3-2)より御池通を東、東洞院通を南、姉小路通を東へ徒歩3分
・阪急電車 烏丸駅より東洞院通を北、姉小路通を東へ徒歩10分
・京都バス・市バス 烏丸御池下車徒歩3分 - 公式サイト
- 公式サイト
多種多様な万華鏡が勢ぞろい!
展示室に入ると、50点ほどの万華鏡が展示されていました。こちらの施設では、日本のものはもちろん、世界のものまで、約400点の万華鏡を収蔵していて、テーマに沿って展示を行っているそうです。テーマはさまざまで、季節や海外の作家、関西の作家など。年に3〜4回展示替えを行っています。また、コレクションしている方から万華鏡を借りて、展示を行うこともあり、何度も足を運びたくなる施設です。

展示されている万華鏡は、実際に触って、中をのぞくことができます。あまり見たことがない形のおもしろい万華鏡が揃っていて、見ごたえがあります。
それぞれに作品名、作家名、万華鏡の見かたが記されています。中にはその場で購入することができる万華鏡もあります。

取材をしたのは2025年12月。このときの展示は「万華鏡で秋冬を楽しむ展」というテーマで、きのこの形をした万華鏡から秋を感じたり、サンタクロースや雪をイメージしたような万華鏡から冬を感じたりすることができました。
こちらがそのきのこの形をした万華鏡。

台にいくつも万華鏡がささっていて、手にとってのぞきながら本体を回すと、きれいな映像が。ボディはガラスでできています。
丸めた雪のようなイメージのこちらの万華鏡は、オブジェクトも青や白のグラデーションのガラス。

映し出される映像も神秘的で美しいものでした。

おもしろいボディの万華鏡も。本が展示されている…!?と思いましたが、こちらも実は万華鏡。

本の上部の天の部分を見ると、隙間から映像を見ることができます。取っ手がついていて、ハンドルをくるくると回すと、映像が変わっていきます。
展示室の出入り口付近にあった、子どもくらいの大きさの大きな壺。京焼の壺です。こちらも、もちろん万華鏡なんです。このサイズの陶器製の万華鏡は世界でも大変珍しいのだとか。

壺の中を見てみると、穴が空いていて、そこから映像を見ることができます。

映像からだけでなく、ボディからも人を驚かせたり楽しませたりしたいという気持ちが伝わってくる作品たちでした。
万華鏡というと、一般的には筒状のもので、手でくるくる回しながら見る「おもちゃ」というイメージでしたが、映像だけでなくボディまでこだわる日本の万華鏡の繊細さはまさに「アート作品」!なかにはオルゴールになっていたり、おもしろい仕組みになっている万華鏡もあり、どうなっているんだろうと考えたり、感動したりする展示の数々でした。万華鏡のボディは、ガラスや陶器のものが多く、万華鏡作家の多くはガラス作家や陶芸家であることも学芸員の方から伺いました。
展示室内は撮影禁止です。ルールを守って楽しくご覧くださいね。写真OKコーナーもありますので、そちらで綺麗な万華鏡の映像を写してみてください。
展示はじっくり見ても所要時間は30分程度です。京都観光の隙間にも楽しめる施設になっています!
万華鏡作り教室
素晴らしい万華鏡の数々を見たあとは、万華鏡を自分で作るのはいかがでしょうか?こちらでは、ドライタイプとオイルタイプの2種類の万華鏡を作ることができます。今回はドライタイプの万華鏡づくりを体験してみました!スタッフの方に声をかけると、ミュージアムで販売している万華鏡キットを購入することができます。さらに、その場でスタッフの方から作り方も教えていただけるので、取材当日も修学旅行生の方々が体験しているのを見かけました。もちろん外国人の方もたくさん体験されているので、英語での案内が可能です。この施設を訪れたら、ぜひとも体験したい内容になっています!
(1) ドライタイプの万華鏡キット
購入すると渡されたのは、ドライタイプの万華鏡キット。内容は、万華鏡の本体になる筒、両面ミラーが3枚、スポンジ、シール、万華鏡の模様になるビーズなどを入れるオブジェクトケースでした。

(2) シールを切る
まず、折り目がついたシールを、折り目に沿って6等分します。これはのちほど、3枚のミラーを貼り合わせる工程で使用します。
(3) ミラーを貼り合わせる
3枚のミラーを貼り合わせていきます。裏と表があって、表面には青色の保護シートが貼られています。裏面はむき出しの鏡です。この裏面を天上に向けて3枚並べます。ポイントは、上下両方水平になるように揃えること。そして、ミラー同士を1mm空けるか空けないかくらいの隙間を作って貼り合わせることです。シールを貼る部分はミラーの端から2〜3mm離したところあたりです。スタッフの方に補助をしてもらいながら、3枚貼り合わせました。

続いて、貼り合わせたものをひっくり返します。そうすると保護シートが貼られた表面になります。この保護シートを慎重に剥がしましょう。ここで絶対にしてはいけないことは指紋をつけること!保護シートが貼られた面は、万華鏡にしたときに、内側になるため、汚れていてはきれいな映像ができあがりません。そうならないように、注意しましょう。

(4) 正三角形を作る
指紋が付かないようにミラーの裏面を持って、ミラーを内側に折り畳み、正三角形になるように組み合わせていきます。そしてテープで固定します。

中をのぞくと、正三角形の連続の模様が広がっています。この三角形が正三角形に近ければ近いほど美しい映像を作ることができるので、ミラーを正三角形にしてテープで固定する際は、きれいな正三角形を作れるように心がけましょう。

(5) スポンジを固定する
次に、スポンジを1ヶ所、ミラーに貼り付けます。

こうすることで、万華鏡本体の筒にミラーを入れても固定されるそうです。滑り止めの役割をしています。
(6) ミラーを本体の筒に入れる
続いて、ミラーを万華鏡本体の筒の中に入れましょう。

このときもミラーの内側を触らないように注意してください。
(7) オブジェクトを選ぶ
万華鏡の映像がどのようなものになるかは、オブジェクト次第。次は、ビーズやクリップなどを選びます。小分けにされた袋から好きなものを選ぶことができます。

スタッフの方にお話を聞くと、クリップや大きいビーズは映像になったときに目立ちやすいということや、いろんな形といろんな色にすると映像に変化が出るということを教えていただきました。今回は、よく目立つクリップや大きいビーズを、自分の好きな色の赤やピンクのものにしました。ちなみにこのオブジェクトは、あとから入れ替えをすることができるので、自宅に帰って好みのものと入れ替えてもOKです。オブジェクトのおすすめは、セロハン、貝がら、ドライフラワーなどのお花、葉っぱ、小石、シーガラス、チラシや広告用紙、色紙だそうです。いろんな形、いろんな色のものを入れて楽しんでみてください!
(8) オブジェクトをオブジェクトケースに入れる
小袋を開けて、すべてのオブジェクトをオブジェクトケースに入れます。

(9) 取り付け
オブジェクトケースを本体に取り付けます。
(10) 本体に折り紙を巻く
本体の筒に折り紙を巻いていきます。こちらも好きなものを選ぶことができます。20種類ほどの折り紙から好きなものを選びましょう。

日本らしい和柄から、数字がポップに印刷されたものまで多種多様でした。人気なのは、さくらやうさぎなどの和柄ということでしたが、迷ったすえ、桜や手まりがデザインされたオレンジ色の和柄にしました。折り紙の裏側にしっかりとのりを貼って、本体に巻き付けるとできあがり!

(11) のぞいてみよう!
中をのぞくと…!かわいい映像が写し出された万華鏡ができました!赤やピンクが目立ってうれしいです。

形も様々なものを入れたので、手で回すたびにいろんな表情を見せてくれました!なかなか自分で万華鏡を作る機会はないので、意外と簡単に作れることに驚きました。所要時間も30分ほど。オブジェクトによって映像が全然ちがうので、友人などグループで体験して、できあがった万華鏡を交換して見せ合うのも楽しそうです。
今回作ったのは、ドライタイプの万華鏡でしたが、オイルタイプの万華鏡のキットも販売していて、そちらも購入すればスタッフの方に作り方をレクチャーしてもらえます。ただ、ドライタイプは持ち帰ったあともほかのビーズなどを入れてオブジェクトを変えることができますが、オイルタイプはグリセリンの中にオブジェクトを入れてしまうのであとから変更することができないため、注意が必要です。映像の違いとしては、ドライタイプはサラッと映像が変わっていきますが、オイルタイプは粘度のある液体の中でオブジェクトが動くので映像の移り変わりがゆっくりです。

購入するときにサンプルを見せてもらうことができるので、映し出される映像のようすでどちらを作るか決めるのもいいと思います。
- ドライタイプの料金…950円(レクチャー料込み)
- オイルタイプの料金…長い万華鏡 2,800円 短い万華鏡 2,900円
ミュージアムショップでお土産を購入しよう!
気に入った万華鏡を購入することもできます。こちらでは万華鏡作家の方が作った万華鏡や、京都万華鏡ミュージアムのオリジナルの万華鏡を買って帰れます。
ほかに、キーホルダーになったミニサイズの万華鏡も販売して、1000円以下のものばかりでちょうど購入しやすいお値段です。(※値段は2025年12月取材時のもの)

日本製のものがほとんどで、人気なのは野菜の形をした万華鏡だそうです。

覗いてみましたが、一般的な万華鏡と変わらない美しさでした!お財布やバッグにつけるのもいいですし、友人や家族へのお土産にもちょうどいいですね。とてもおすすめのひとしなです!
毎正時行われる投影式の万華鏡も見逃さないで!
この施設を訪れたら、見逃さないでほしいのは、11:00〜17:00までの間、毎正時に始まる投影式の万華鏡です!

展示室の中で、プロジェクターによって万華鏡が壁一面に映し出されます。しかもこれは天井の機械が一つ一つが万華鏡で、モーターによって回り、後ろから光をあてることによって壁にライブ映像が投影されています。

時間にして、3分ほどの投影。自分が万華鏡の中に入り込んだような没入体験ができ、とてもおすすめです!
カフェテリアも併設
万華鏡の世界を堪能したら、カフェテリアが併設されているので、ほっと一息つくことができます。現在はコーヒー、紅茶を提供しています。カフェもぜひご活用ください!
まとめ
歴史を知り、仕組みを理解し、実際にのぞいてみることで、万華鏡が作り出す映像がさらに美しく見えてきたのではないでしょうか。回すたびに異なる世界を作り出す万華鏡の“一瞬の美”は、私たちの想像力を掻き立てると同時に無限性も感じさせてくれます。京都万華鏡ミュージアムを訪れ、実際に万華鏡に触れてみると、万華鏡が単なる懐かしいおもちゃではなく、表現力豊かなアート作品だということに改めて気づくことができました。また、万華鏡を作る体験を通して、万華鏡のもつ対称性の奥深さを体感することができる点も、京都万華鏡ミュージアムならではの魅力です。ぜひ京都に来た際は、万華鏡を手にとって、その美しい世界に没入してみてください。
