「古都京都の文化財」の一つとしてユネスコ世界文化遺産に登録されている、真言宗御室派の総本山。平安時代前期の仁和2(886)年、第58代光孝天皇の勅願で建立が始まり、次代宇多天皇によって仁和4(888)年に創建された。寺号の仁和は元号に由来している。
宇多天皇は寛平9(897)年に譲位し、後に仁和寺第1世宇多(寛平)法皇として入寺。境内に御室(御座所)を設けて居住したことから御室御所と称され、その後も皇族が代々住職を務める門跡寺院として高い格式を誇った。
境内奥にある金堂は、桃山時代に建てられた京都御所の紫宸殿を江戸時代前期の寛永年間(1624−1645年)に移築。当時の宮殿建築を今に伝える貴重な遺構として、仁和寺で唯一国宝に指定されている。堂内には、御本尊である阿弥陀三尊像をはじめ四天王像や梵天像などを安置し、壁には浄土図が極彩色で描かれている。
宸殿、白書院、霊明殿などの殿舎と、北庭、南庭、茶室からなる御殿は、かつての宇多天皇の御室。明治から大正時代にかけて再建されたもので、建造物は国の登録有形文化財に指定されている。
広い境内でもひときわ目を引くのが、高さ約36mの五重塔だ。建立は寛永21(1644)年で、同時期に建てられた東寺の五重塔とともに、江戸時代前期を代表する名塔として知られる。各層の屋根幅や層高にあまり差がない端正な姿が特徴的で、真下に立って見上げるとその素晴らしさを実感できる。京都一の遅咲きといわれる御室桜とともに、仁和寺のシンボル的存在だ。
ポイント
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門跡寺院の格式を留める、御殿の宮廷建築。
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御所の宮殿建築を移築した国宝、金堂。
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江戸前期を代表する名塔、五重塔。
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遅咲きで樹高が低い、御室桜。