【熊野古道の観光ガイド】日本の歴史と信仰を辿る旅に出よう
「熊野古道」は参詣道であり、いわゆる神社仏閣へ参拝するための通り道。
神秘的な雰囲気と豊かな自然を満喫しながら、歴史あるスポットを巡れる「熊野古道」は、今でも多くの観光客が行き交う。
この記事では「熊野古道」の観光スポットや、5つのルートについて詳しくご紹介。
「熊野古道」は範囲がかなり広く、見どころも多いため、この記事でしっかり予習をしてから観光しよう。
目次
熊野古道ってどんなところ?
「熊野参詣道」とも呼ばれる「熊野古道」は「熊野三山」へと続く参詣道で、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されている。
「熊野三山」は「熊野速玉大社」(くまのはやたまたいしゃ)と熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)、熊野那智大社(くまのなちたいしゃ)の総称。
和歌山・大阪・三重・奈良・京都と5県にまたがる「熊野古道」だが、目的地となる「熊野三山」は和歌山県にある。
「熊野古道」には5つの道があり、難易度や所要時間は大きく異なる。
どの道も踏破するにはかなりの日数がかかり、最低でも4日間は必要だ。
そのため、一部のルートだけをハイキングして主要観光スポットを巡る、といった楽しみ方が一般的だ。
一部のルートだけでも、「熊野古道」における最大の魅力である、清らかで神秘的な雰囲気は満喫できる。
豊かな自然はもちろん、歴史を感じられる史跡も「熊野古道」の見どころだ。
高野や熊野におけるパワースポットの数々を巡りながら楽しんでほしい。
熊野古道の歴史
その昔、熊野信仰が高まると皇族らが「熊野古道」を通って、熊野詣(くまのもうで)を行い、その波が庶民にも広がっていった。
熊野詣とは「熊野三山」へお参りすることを指す。
熊野信仰は民俗的な信仰のひとつで、「伊勢へ七度、熊野へ三度」という言葉があるほど、「伊勢」と「熊野」は日本人にとっては神聖な場所であり、日本における二大聖地とされている。
古くから多くの人々が歩いた参詣道である「熊野古道」には、小倉百人一首(和歌を一人一首ずつ選んで作られた歌集)の選者として知られる藤原定家(ふじわらのていか)も訪れたという。
熊野古道へのアクセス
和歌山観光の移動拠点となる「和歌山駅」を起点に、「熊野古道」におけるスタート地点へのアクセスを紹介しよう。
なお、どのルートで観光するかによってアクセスが異なるので注意してほしい。
今回は「和歌山駅」から最も近いルートへのアクセスを紹介する。
特急列車の方が運賃は高くなるが、短い所要時間で到着できる。
- 経路
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1. 「和歌山駅」からJR紀勢本線の特急くろしおに乗車し、「紀伊田辺駅」で下車
2. 熊野古道のルートのひとつ、中辺路へ徒歩で向かう - 所要時間
- 約1時間30分
熊野古道の最終目的地である「熊野三山」
「熊野三山」は「熊野本宮大社」と「熊野速玉大社」、「熊野那智大社」の3社を指し、「熊野古道」によって結ばれている。
「熊野古道」を使った熊野詣の目的地であり、文化遺産などにも登録されている文化的価値の高い神社と言える。
厳かな雰囲気を漂わせながらも、壮大で迫力のある姿が魅力だ。
ここからは、「熊野三山」と呼ばれる3社の魅力を詳しく紹介しよう。
1. 熊野本宮大社
家都美御子大神(けつみみこのおおかみ)が主祭神で、日本の第10代天皇・崇神天皇の時代に創建。2004年、ユネスコ世界文化遺産に登録。
古くから上流階級のみならず武士や庶民らからも信仰を集め、参拝者らが全国よりこの地を目指し、大人数がぞろぞろと列をなして進む様子から「蟻の熊野詣」と例えられるほどだったそう。
境内では、家都美御子大神をはじめ、夫須美大神(ふすみのおおかみ)や速玉大神(はやたまのおおかみ)を祀る檜皮葺の豪壮な社殿が出迎えてくれる。
2. 熊野速玉大社
「甦りの地」と呼ばれ、人生の節々で新たな1歩を踏み出すための勇気と覚悟の加護を求める参拝者らが後を絶たない大社。
熊野本宮大社、熊野那智大社と共に熊野三山と呼ばれ、全国に5000社ある熊野神社の総本宮である古社。2004年にはユネスコの世界遺産に登録された。
朱塗りの麗しい御社殿には、熊野速玉大神と熊野夫須美大神のご夫婦の神々を中心に、全部で18柱の神々をお祀りされている。
3. 熊野那智大社
遡ること紀元前662年、神日本磐余彦命(かむやまといわれひこのみこと/のちの神武天皇)が那智の滝を神として祀られたことを起源とする古社。
全国各地の熊野神社の総本社であり、熊野三山のひとつとしても知られている。崇敬の地であるだけでなく、人の縁や諸々の願いを結ぶ宮でもあることから、別名を「結宮」とも。
一般の参拝は自由にできるが、せっかく訪れたのであれば正式参拝(初穂料5000円)がおすすめ。参拝時間は約30分間で、本殿で神職による由緒等の説明も受けられる。
熊野古道の魅力が詰まった人気観光スポット5選
「熊野古道」には美しい自然景観を筆頭に、歴史的にも重要な魅力を持つ観光スポットが多く存在する。
「熊野古道」を訪れて歩く際には、これらの観光スポットにも足を運んでほしい。
ここからは熊野古道に数ある観光スポットの中でも、特に見逃せない場所を厳選して紹介する。参考にして観光プランを作ってほしい。
1. 圧倒されるほど大きなサイズと神聖な雰囲気を体感できる「那智の滝」
全国に4000社以上を数える熊野神社の総本社・熊野那智大社の神域内にある滝。
高さ133m・銚子口(流下する始点)の幅13m・瀧壺の深さ10mという日本屈指の大きなサイズで、流下する水量は毎秒1トンをこえる。
和歌山を代表する名勝であるのはもちろん、古来から「水は生命の母」を根源に掲げる那智山信仰の象徴的なスポットだ。
2. 熊野古道を代表する景色を見られる「大門坂」
「大門坂」は和歌山の那智勝浦町(なちかつうらちょう)にあり、「熊野那智大社」へと続く参道だ。
ルートとしては中辺路(なかへち)の一部となっている。
鎌倉時代(1185年~1333年)から残る640mほどの石畳の階段が広がり、当時の「熊野古道」の雰囲気を色濃く残す。
樹齢800年を超える杉に囲まれ、霊場とされる清らかな雰囲気を存分に感じられる場所だ。
有数のフォトスポットとしても魅力的なので、忘れずに記念撮影してもらいたい。
3. 清流が眼下に広がる絶景スポット「谷瀬の吊り橋」
1954年の復興期に、生活用のためのつり橋として村人の力によりかけられた歴史を持つ。雄大な自然の深い山々に囲まれており、日本有数の長さを誇る鉄線のつり橋。
上野地と谷瀬を結んでおり、その大きさは長さ297メートル、そして高さは54メートルに及ぶ。
現在では、十津川村を代表する観光名所となっている。
4. 歴史と風格を感じられる「青岸渡寺」
「熊野古道」の目的地である「熊野三山」の1つ、「熊野那智大社」に隣接しているのが「青岸渡寺」(せいがんとじ)で、「那須山」にある。
ユネスコの世界遺産である「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部で、歴史を感じる厳かな外観が魅力だ。
また、本堂後方にある朱色の三重塔と那智の滝が絶好のフォトスポットになっている。
5. 巨石が並ぶスケールの大きさに圧倒される「瀞峡」
「瀞峡」(どろきょう)は「吉野熊野国立公園」の一部で、いわゆる峡谷。
伊勢路(いせじ)ルートで「熊野本宮大社」に向かう途中の地点からほど近くにある。
国の特別名勝に指定され、高さ20mから50mに及ぶ巨岩が並ぶ姿は息を吞むほどの絶景だ。スケールの大きさに驚くこと間違いないだろう。
熊野古道を構成する5つの道
「熊野三山」を巡る「熊野古道」には、5つの道がある。
目にする景観が異なるのはもちろん、それぞれのルートで難易度も大きく異なる。
どのルートも1日では踏破できず、最低でも4日はかかる。熊野古道を踏破するなら、文字通り「旅」をする覚悟と準備が必要だ。
もしいずれかのルートを踏破したいなら、体力と日程をよく考えた上で、踏破するルートを選ぼう。
ここからは各ルートの魅力や見どころを詳しく紹介するので、ルート選びや観光プランを作る上での参考にしてほしい。
1. 中辺路
和歌山県の田辺市から山間部となる「熊野本宮大社」と「熊野那智大社」を通り、「熊野速玉大社」へと向かう行程で84kmほどの道のりになる。
難易度が高い区間が一部あるものの、全体的な難易度は低い。
道がしっかりと整備されているので、初心者にも向いていると言える。
ルートのほとんどがバスの走る道路と並んでいるので、状況次第でバスに乗れるのも嬉しいポイントだろう。
「熊野古道」の中で最も人気の高く、定番ルートと言える。
2. 伊勢路
伊勢路は三重の伊勢市にある「伊勢神宮」から「熊野三山」を目指すルート。
「伊勢神宮」から「熊野速玉大社」へは、総距離にすると170kmに及ぶ。
平安時代(794年~1185年)に活躍した、武士である平清盛(たいらのきよもり)も伊勢路を使って熊野詣をしていたとされる。
峠道の至る所から美しい海が望めるルートで、景色の変化を楽しみながら歩けるのが魅力だ。
歩きやすい区間もあり整備もされているが、総距離を考えると難易度は低くない。
ルートを踏破しようと思うと、少なくとも1週間は必要となる。
3. 小辺路
小辺路(こへち)は「高野山」と「熊野本宮大社」を結び、紀伊半島を南北に縦断するルート。
起点となる場所から目的地の「熊野本宮大社」までを70kmの最短距離で結ぶルートだが、峠が連なる山岳地帯を抜けるため難易度が高く、険しい道のりとなる。
登山の経験やスキルがないと踏破は難しい。
標高が高くなるため見晴らしが良く、ルート中に展望スポットが多くあるのが魅力。
余裕があれば、各展望スポットで眺望を楽しもう。
4. 紀伊路
「紀伊路」(きいじ)は京都市の「城南宮」(じょうなんぐう)から「淀川」を下り、田辺市に至るまでのルートを指す。
田辺市からは大辺路(おおへち)と中辺路に分岐する。
なお、紀伊路の終着点である田辺市の北新町には道標となる「道分け石」があるので、忘れずにチェックしてほしい。
道中には社寺が多く、歴史的な文化に触れながら進めるのが「紀伊路」の魅力。
道のり自体は長いものの、ほとんどの通路が補装されているので歩きやすいはず。
行程に余裕を持てれば難しくなく、初心者でも歩きやすいだろう。
5. 大辺路
田辺市から那智勝浦町にある「浜の宮」までを結ぶルートで、隣接する「補蛇洛山寺」(ふだらくさんじ)を終着点とすること説も。100kmほどと距離が長く、坂が多いのが特徴。そのため、やや難易度は高い。
トレッキングや登山に多少慣れている人に適していると言えるだろう。
峠道を筆頭に市街化や開発を免れた箇所が多く、かつての様相を色濃く残す点が見どころだ。
「枯木灘」(かれきなだ)や「熊野灘」(くまのなだ)などの一風変わった海の姿も魅力的で、美しい景観を眺められる。
熊野古道のお勧め観光シーズンは?
「熊野古道」におけるお勧めの観光シーズンは春と秋だろう。
この時期は気温的にも歩きやすく、草花も色づいて美しいのでお勧めだ。
春の桜と新緑、秋の紅葉の美しさは日本ならではの魅力と言える。
熊野古道の観光拠点にお勧めの温泉宿3選
この記事で紹介してきた通り、「熊野古道」を満喫しようと思うと1日では全く足りない。
でも安心してほしい。熊野には温泉郷があり、温泉宿が点在している。
ここからは「熊野古道」の観光拠点にするべき、魅力的な温泉宿を紹介しよう。
1. 旅館あづまや
フランスの作家で文化大臣もつとめたアンドレ・マルローが、「これぞ日本の宿」と絶賛したことであまりにも有名な温泉宿。
江戸時代の創業以来、高浜虚子や水上勉など数多くの作家、芸術家に愛されてきた、和歌山県を代表する名宿である。
「あづまや」はその「つぼ湯」の目の前に純和風の建築を構え、客室は22室。どの部屋も意匠にこだわり、露天風呂付きの特別室もある。
2. 山水館 川湯みどりや
熊野川の支流・大塔川沿いに広がる、熊野本宮温泉郷の一つの川湯温泉に建つ温泉旅館。
川湯温泉はその名の通り、川底から70度以上の源泉が絶えず湧き出しているため、川原を掘れば温泉が楽しめる全国でも珍しいスポットだ。
大塔川の河原には、宿泊客専用の露天風呂がスタンバイ。
館内の自家源泉を引いていて、川のせせらぎや小鳥のさえずりを聞きながらゆったり温泉に浸かろう。
3. わたらせ温泉
熊野本宮温泉郷の一つ・渡瀬温泉にあり、趣の異なる2つの宿泊施設と10の温泉施設を持つ温泉旅館。広大な芝生に囲まれた「ささゆり」は、広々とした和洋室が中心。「やまゆり」は、伝統的な和風造りの客室が中心で、落ち着いた雰囲気。
熊野古道に関するよくある質問
Q
熊野古道で初心者にお勧めのルートは?
中辺路は道がしっかりと整備されており、ルートがバスの走る道と並んでいるのでお勧めです。
Q
熊野古道は何県にあるの?
和歌山県、三重県、奈良県、京都府、大阪府にまたがるものの、終着点となる「熊野三山」は和歌山県にあります。
まとめ
この記事では「熊野古道」の観光スポットや5つのルートについて紹介してきた。
美しい景観を望みながら、神聖かつ清らかな雰囲気の中を歩いて散策できるのが「熊野古道」の何よりの魅力だ。
簡単なルートや一部の区間でも構わないので、ぜひ一度「熊野古道」へ足を運んでほしい。
また、和歌山県には「熊野古道」以外にもお勧めの観光スポットがたくさんある。
以下の記事で紹介しているので一緒にチェックしてほしい。