
日本の原風景に出会える10の秘湯
温泉大国の日本には各地に温泉郷や温泉施設が点在しており、観光の定番スポットとなっている。
その中には人里離れた場所に、観光客も少ない「秘湯」と呼ばれる温泉がある。
日常から隔絶された空間の中で、ゆっくり温泉に浸かれるだけでなく、日本の原風景に出会える「秘湯」。
定番の温泉に飽きた方は、秘湯巡りに挑戦してみよう。
秘湯ってどんなところ?
アクセスが悪く人の往来が少ない場所にひっそりとある、穴場的な温泉地を「秘湯」と呼ぶ。
秘湯は山奥や岬の突端などにあり、昔ながらの建物や自然環境を守っているため、日本の原風景の中で、温泉に浸かって「何もない時間」を過ごせる。
「秘湯」という言葉は「秘湯を守る会」を立ち上げた、「岩木 一二三」によって造られた。

秘湯を守る会とは
バスも通らない不便な小さな山の温泉宿33軒が集まり、1975年に創立された「秘湯を守る会」。
現在は100以上もの温泉宿が「日本の秘湯を守る会」に入会しており、ガイドブックや公式サイト上で日本の秘湯を紹介している。
知る人ぞ知る!日本三大秘湯
日本に数ある秘湯の中でも、特に人気が高い秘湯は「日本三大秘湯」と呼ばれている。
まずは日本の秘湯を語る上で外せない「日本三大秘湯」を紹介していこう。
【青森県】谷地温泉
青森県の八甲田山の麓にある、豊かな自然に囲まれた一軒宿「谷地温泉」。
浴槽の底からぽこぽこと湧き上がる「足下自噴」と、泉質の異なる2種類の温泉が特徴だ。
開湯400年以上の歴史があり、古くから湯治宿として愛されてきた。
昭和レトロな雰囲気の客室と名物のイワナ料理も人気の理由のひとつだ。

【徳島県】和の宿 ホテル祖谷温泉
祖谷川を間近に臨む露天風呂や祖谷渓谷を180℃眺望できるテラスなどを備えた、まさに大自然を満喫するための宿。
祖谷川のほとりにある源泉かけ流しの露天風呂までは、専用のケーブルカーで行くことができる。傾斜角42度の断崖を、ゆっくりと大パノラマの景色を一望しながら下り、アトラクション気分も楽しめる。渓谷の湯、せせらぎの湯はいずれも祖谷川と一体になったかのようなロケーションで、川のせせらぎがよいBGMに。1日ごとに男女入れ替え制で、宿泊すれば両方の湯を楽しめる。


【北海道】ニセコ薬師温泉旅館
ニセコ温泉郷に点在する温泉旅館のひとつで、1891年から湯治場として知られてきた「ニセコ薬師温泉旅館」。
山々に囲まれた森の中にある昔ながらの温泉旅館で、そのロケーションと源泉掛け流し・足下自噴の温泉から高い人気を誇っていたが、雪の重さで建物が一部倒壊。
2014年5月末に閉館し、2024年時点でも営業は再開していない。
温泉は今も湧き出ているが、管理されていないため、入浴はお勧めできない。
温泉好きなら一度は訪れるべき秘湯7選
人里離れた場所にある秘湯はいずれもアクセスが悪く、電車ではまず行けない。
長時間バスを乗り継ぐか、長時間歩いてやっと辿り着く。
電波が入らない秘湯も多く、不便なことこの上ない。
ただ、普通の温泉地では味わえない到着した時の「達成感」や、不便さが生み出す贅沢な「何もしない時間」は格別だ。
数ある秘湯の中でも、温泉好きなら一度は訪れるべき秘湯を厳選して紹介しよう。
【秋田県】乳頭温泉郷・鶴の湯温泉
秋田を代表する秘湯、乳頭温泉郷のなかでも特に人気の高い温泉宿。
人里離れた山奥にあり、まるで武士の隠れ里のようなたたずまい。それもそのはず、ここはかつての秋田藩主の湯治場であり、現在客室となっている茅葺屋根の長屋は、2代目藩主佐竹義隆が湯治に訪れた際に、警護の従者の詰め所として使われたもの。
温泉は異なる泉質の異なる白湯、黒湯、中の湯、滝の湯の4つの源泉を8つの風呂で楽しめる。


【群馬】法師温泉 長寿館
温泉宿の本館と別館、湯殿「法師乃湯」が国有形文化財に指定されている「法師温泉 長寿宿」。
明治28年に建てられたモダンな建築が特徴で、湯殿も客室も陰影が美しく、趣深い。
温泉宿の玄関を入ってすぐ左にある囲炉裏では、旅行客が暖を取りながら談笑している。その光景は時代が遡ったかのように感じられるはずだ。
趣が異なる「法師乃湯」「玉城乃湯」「長寿乃湯」の3種類の湯殿が楽しめる。


【栃木】大丸温泉旅館
栃木県唯一の活火山「茶臼岳」の山腹に散在する那須温泉郷の最奥地に佇む一軒宿。
裏山に湧き出す湯の川を堰き止めて造られた、野趣あふれる大露天風呂が魅力のひとつだ。
源泉掛け流しの温泉は、保湿成分が高いことから「美人の湯」と称されている。
源泉の風味を閉じ込めた、珍しい焼酎温泉割りもぜひ試してほしい。

【栃木】奥鬼怒温泉
関東最後の秘湯と呼ばれる「奥鬼怒温泉」は、東京の奥座敷と称される「鬼怒川温泉郷」の中でも最奥部に位置している。
鬼怒川の渓流沿い、ブナの原生林に囲まれた「奥鬼怒温泉」は一般車両の乗り入れができないため、宿泊者送迎バスを利用するか歩いていくしかない。
人里離れた奥地には泉質の異なる4つの温泉「加仁湯」「手白沢温泉」「日光沢温泉」「八丁の湯」が点在している。
四季折々の自然景観と源泉掛け流しの温泉を心ゆくまで楽しもう。


【新潟】目の温泉 奥湯沢 貝掛温泉
「秘湯」でありながらも比較的手軽にアクセスできる「目の温泉 奥湯沢 貝掛温泉」。
江戸時代より眼病に効く温泉として知られる「目薬の湯」が特徴のひとつ。
毎分450〜650ℓと全国屈指の湯量を誇る、源泉掛け流しも魅力的だ。
標高700mの場所にあるため、夏も涼しくエアコンもいらないほど。
山木と渓流に囲まれており、夜は綺麗な星空が見える。

【熊本】黒川温泉 旅館 山河
阿蘇の奥地にある黒川温泉郷、そこからさらに離れた場所にある「黒川温泉 旅館 山河」。
日本の原風景のひとつである「里山」の中で、筑後川のせせらぎをBGMに、四季折々の自然景観を眺めながら、ゆったりした時間を過ごせる温泉旅館だ。
趣の異なる7つの温泉があり、うち2つは自然の中に佇む露天風呂。
貸切り風呂も3つあり、「黒川温泉 旅館 山河」だけで様々な温泉が楽しめる。

【長野】白骨温泉
長野県のほぼ中央に位置する信州・松本市の温泉地。日本の名勝、霊峰・乗鞍岳の東側山腹に湧き出る温泉で、深い樹林と湯川渓谷に囲まれた野趣あふれる湯どころだ。
大正時代には中里介山の長編時代小説内にて「五彩絢爛(けんらん)たる絶景」と称賛され、全国にその名が知らせることになった。以来、喧騒を逃れて季節のうつろいを感じ、大自然の恵みを享受したいと願う多くの湯治客に愛されてきた。

秘湯に入る上で知っておくべき3つのマナー
秘湯に限らず温泉には、暗黙のルールやマナーが存在する。
現地で説明されることも少ないため、気をつけるのも難しいだろう。
変なトラブルに巻き込まれず、快適に秘湯を楽しむためにも、これから紹介する3つマナーは守って入浴しよう。
入浴前に身体を洗い流す
温泉を汚さないために、入浴前のシャワーで身体の汚れを落とすことがマナーとなっている。
シャワーがない秘湯に訪れた場合は、温泉から桶などでお湯を汲み、身体を洗い流す「掛け湯」をしてから入浴しよう。
タオルをお湯に浸けない
浴場では身体を隠すためにタオルを巻いている人も多いが、そのまま入浴するのはマナー違反となるため、気をつけてほしい。水着での入浴が禁止されている温泉も多い。
どうしても身体を隠したい場合は、着たまま温泉に入れる「湯浴み着」を着用しよう。
ただ、「湯浴み着」を着用して入浴することも禁止されている場合がある。
水源地の場合はシャンプーや石鹸はNG
温泉が水源地となっている場所では、シャンプーやボディソープの使用が禁止されている場合がある。
浴場にシャンプーや石鹸がない場合は、自前のシャンプーなどを使用する前に温泉旅館のスタッフに使用しても良いか確認しよう。
日本の秘湯に関するよくある質問
Q
秘湯ってどんな温泉のこと?
アクセスが悪く、人の往来が少ない場所にひっそりとある穴場的な温泉地を「秘湯」と呼びます。
Q
秘湯に訪れる際の注意点は?
アクセスが悪いため、長時間バスで移動したり、歩いたりして秘湯に向かうことが多いです。電波が通らない場所も多いため、事前にアクセス方法をよく調べておくことをお勧めします。
Q
日本三大秘湯は?
青森の谷地温泉、徳島の祖谷温泉、北海道のニセコ温泉が日本三大秘湯です。ただ、ニセコ温泉は現在営業中止しています。
まとめ
秘湯に到着した時の達成感、不便さが生み出す贅沢な「何もしない時間」を過ごせる秘湯を厳選して紹介してきた。
温泉が好きな方や日本ならではの風情が好きな方は、秘湯に足を運び、日本の原風景に出会ってみてはいかがだろうか。