映画『蛍火の杜へ』で一躍有名になった上色見熊野座神社は、南阿蘇の森の奥深くにある。今回は朝早く熊本からわざわざ車で出発し、ツアー客が到着する前に訪れたことで、まるで異世界へ通じているかのような澄んだ静けさをようやく独り占めできた。
朝の山林には薄霧が立ち込め、参道をゆっくり進むと、両側には苔に覆われた100基近い石灯籠と天高く伸びる杉の木々が厳かに立ち並び、悠久の歴史を感じさせる。素朴な神社で参拝した後は、忘れずにさらに裏手の山道を進み、神話に伝わる石「穿戸磐」を訪れてほしい。下山しようと振り返った途端、階段にはにぎやかな団体客が押し寄せてきて、誰にも邪魔されないあの神秘的な時間を一足先に味わえたことが、より一層幸運に思えた。
下山後は、そのまま「高森田楽保存会」へ立ち寄るのがおすすめ。伝統的ないろりを囲み、地元の郷土料理を炭火で焼いて味わえる。炭火でじっくり焼いた阿蘇の川魚は皮がパリッとして身は柔らかく、濃厚な味噌を塗った里芋や豆腐と合わせると、素朴ながら忘れられない味わい。気さくで話好きな店主は、私たちが台湾から来たと知ると、ひときわ親切にもてなしてくれた。食べることが大好きな私は、帰る前に店自家製の田楽味噌を1瓶購入。台湾に戻ってからも、食材に塗って軽く焼くだけで、あの温かく素朴な地元の味をいつでも思い出せる。


























