静謐な空間で禅の思想を感じられる「天龍寺」の観光ガイド

静謐な空間で禅の思想を感じられる「天龍寺」の観光ガイド

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筆者 : GOOD LUCK TRIP

京都に数ある観光スポットの中でも、高い人気を誇る「天龍寺」。
そのシンボルとも言える「雲龍図」と「達磨図」は、日本人なら一度は見たことあるはずだ。
高い知名度と人気を誇る「天龍寺」を思う存分楽しむために、知っておきたい歴史と見どころを紹介しよう。
見どころだけでなく歴史も知っておくことで、「天龍寺」をさらに深く楽しめるはずだ。

天龍寺ってどんなところ?

京都を代表する観光地・嵐山に位置する「天龍寺」。
1339年に室町幕府・初代将軍「足利尊氏(あしかが たかうじ)」が後醍醐天皇(ごだいごてんのう)を弔うために創建し、禅僧・夢窓疎石(むそうそせき)が開山した禅寺だ。
禅寺とは仏教の一派である、臨済宗や曹洞宗などの「禅宗」のお寺のこと。
「禅宗」の臨済宗天龍寺派の大本山(その宗派の最高位の寺院)が、「天龍寺」だ。
室町時代には京都の数ある禅寺のなかでも格式高い、「京都五山」の第一位に数えられた。
1994年には「古都京都の文化財」として、ユネスコの世界文化遺産に登録されている。
日本で最初の史跡・特別名勝に指定された「曹源池庭園」や、大迫力の「雲龍図」・「達磨図」など見どころが盛りだくさんで、京都を観光するなら外せない観光スポットのひとつだ。

天龍寺の成り立ち・歴史

武士から尊敬を集めていた禅僧・夢窓疎石の強い勧めから、ライバルと言える関係だった後醍醐天皇を弔うお寺を、室町幕府・初代将軍「足利尊氏」が創建。
「天龍寺」の名称は、足利尊氏の弟である「足利直義(あしかが ただよし)」が「天龍寺」の南の川に金色の龍が舞う夢を見たことから付けられたと言われている。
「足利尊氏」と天皇が寄進したものの、建築するには費用が足らなかった。
そこで中止していた「元」との貿易を再開させて費用を捻出し、1345年に完成。
完成した当時は今の10倍もの面積だったが、8回もの火災と明治時代に土地を奪われたことで、建造物や土地を失っていった。
それでも復興され続け、1935年には現在の「天龍寺」の景観へと整えられた。

日本で最初の史跡・特別名勝に指定された「曹源池庭園」
日本で最初の史跡・特別名勝に指定された「曹源池庭園」

天龍寺へのアクセス

京都の観光拠点となるJR京都駅から「天龍寺」へのアクセスをご紹介。
電車・バスどちらでもアクセス可能だが、バスは時間がかかるため、電車での移動がお勧め。
電車の場合は、JR山陰本線に乗って「嵯峨嵐山駅」に向かおう。
「嵯峨嵐山駅」からは徒歩約15分で「天龍寺」に到着。
電車での移動時間を含めて、30分〜35分程度でJR京都駅からアクセスできる。

天龍寺への参拝時間・参拝料

「天龍寺」の参拝時間と参拝料は、施設によって異なるため、下記の表を参考にしてほしい。
諸堂(大方丈・書院・多宝殿)と法堂の特別公開は、参拝休止日が設けられているため、観光する前に公式サイトで確認しておこう。

境内の施設 参拝時間 参拝料
庭園(曹源池・百花苑) 8:30~17:00(受付終了16:50) 高校生以上:500円・小中学生:300円・未就学児:無料
諸堂(大方丈・書院・多宝殿) 8:30~16:45 (受付終了16:30) 庭園の参拝料に追加で300円
法堂「雲龍図」特別公開 土日祝日のみ 9:00~16:30 (受付終了16:20) 500円

ここだけは絶対に外せない!天龍寺の見どころ5選

「天龍寺」の見逃せない見どころを、5つに絞ってご紹介。
この5つを見ずに「天龍寺」は語れない。

1. 五感で禅の思想を感じられる「曹源池庭園」

臨済宗の僧侶である「夢窓疎石」が手がけたとされている「曹源池庭園」は、日本で最初の史跡・特別名勝に指定された庭園だ。
度重なる火災によって、「天龍寺」の建造物は焼失し復興されているが、「曹源池庭園」は約700年前の原型を留めている。
「嵐山」・「亀山」の自然景観を、庭の一部として考えて作られた、奥行きがある雄大な景色はまさに絶景。
「曹源池」を中心に園内を散策して楽しめるように設計された「池泉回遊式庭園」となっているため、1箇所から眺めるだけでなく、池の周りを歩いて回ろう。
池の周りを一通り散策したら、お堂の中からの景色も楽しんでほしい。
お堂の軒先や柱などがフレームの役割を果たし、また違った趣を感じられるはずだ。
お堂の近くの木製ベンチやお堂の中で座って、ゆっくり景観を眺めるのもお勧め。
周囲の音や匂い、時折吹く風を五感で感じていると禅の思想に触れられるかもしれない。

堂内から眺める景色も美しい
堂内から眺める景色も美しい

2. 境内を彩る四季折々の自然

「曹源池庭園」やその一部として考えられている「嵐山」・「亀山」だけでなく、境内のいたるところで四季折々の美しさを感じられる。
春には「曹源池庭園」の奥にある、「多宝殿」を取り囲むシダレザクラやソメイヨシノが咲き誇る。
境内の石段を登った先にある「望京の丘」から一望できる、境内に植えられた約200本の桜と京都の街は絶景。

秋には「曹源池庭園」を紅葉が彩り、静謐で雅な空間を散策できる。
「曹源池庭園」の裏にある「紅葉のトンネル」は、特に人気の紅葉スポット。
冬の雪が降り積もる日には、水墨画のような美しさを見せる。
境内に雪が降り積もることは少ないため、四季折々の景観が見たい方は、春か秋に訪れるのがお勧めだ。

桜の見頃
例年3月下旬〜4月中旬
紅葉の見頃
例年11月中旬〜12月上旬
境内に咲き誇るシダレザクラは必見
境内に咲き誇るシダレザクラは必見
紅葉が彩る秋の「曹源池庭園」
紅葉が彩る秋の「曹源池庭園」
水墨画のような印象を受ける冬の「曹源池庭園」
水墨画のような印象を受ける冬の「曹源池庭園」

3. 一目見たら忘れられないインパクト「雲龍図」

「天龍寺」の代名詞と言える「雲龍図」。
天井に描かれた、縦10.6m・横12.6mの龍の絵は大迫力。
一度見たら、忘れられないだろう。
龍の目が絵の中心となる構図であり、どこから見ても龍と目が合うため、八方睨みの龍とも呼ばれている。
現在の「雲龍図」は1997年に、日本画家の加山又造画伯が手がけたもの。
明治時代の鈴木松年画伯が手がけた、雲に乗る龍の絵が飾られていたが、損傷が激しくなったため、一部が保存されて現在の「雲龍図」が描かれた。

「天龍寺」の代名詞である「雲龍図」
「天龍寺」の代名詞である「雲龍図」

4. 独特なタッチから生まれる不思議な迫力「達磨図」

「雲龍図」を天龍寺の代名詞とするなら、「達磨図」は天龍寺の顔となる絵だ。
台所兼寺務所の機能を持つ「庫裏」の玄関正面の衝立に描かれた「達磨図」は、禅宗の開祖・達磨大師をモチーフにしている。
「天龍寺」の住職だった平田精耕老大師の独特なタッチから、不思議な印象と迫力を同時に感じられるだろう。
「達磨図」はお守りにもなっているため、絵が好きになった方は、ご利益も期待できる「達磨図」のお守りも購入してはいかがだろうか。

独特なタッチが癖になる「達磨図」
独特なタッチが癖になる「達磨図」

5. 禅を味わう精進料理

境内には天龍寺直営の「篩月」があり、精進料理が食べられる。
精進料理とは肉と魚介類を使用しない、穀物・野菜・種子・海藻のみを使った、仏教の教えである「不殺生戒」に従った料理だ。
禅宗の修行の一つであり、精神と自然の調和から生まれる、心の自由を味わうために完成された調理法が用いられている。
ミシュランガイドには、価格以上の満足感が得られる料理として掲載された。

禅の思想を味わえる精進料理
禅の思想を味わえる精進料理

天龍寺周辺の観光スポット3選

天龍寺を満喫したら、嵐山の人気観光スポットを巡ろう。
嵐山には「まさに京都」と思える景観を見られるスポットが多く、京都を満喫するためには外せない場所だ。
これから紹介する3つのスポットは特に人気が高く、天龍寺からアクセスしやすいため、合わせて観光してみよう。

1. 嵯峨野竹林の小径

風光明媚な景色から、平安時代(794~1185年)から貴族や文人に愛され、別荘や庵が多く築かれた嵯峨野。
その地にある嵯峨野竹林の小径は、野宮神社から天龍寺北門を通り大河内山荘へと約400m続く散歩道だ。
青々とした竹が空へ伸びる美しい姿は、旅行雑誌の表紙、テレビドラマ、CMにもよく登場し、京都を代表する風景として知られている。地上から一直線に伸びる竹は、上に行くに連れて内側に倒れ込んでいるので、まるで竹のトンネルのよう。
天龍寺の北門から大河内山荘まではなだらかな坂道になっていて、竹林を見下ろせる坂の上は、撮影スポットとしても人気。

青々とした竹林が頭上を覆い隠すように生い茂る小径で、京都を代表する観光スポット
青々とした竹林が頭上を覆い隠すように生い茂る小径で、京都を代表する観光スポット

2. キモノフォレスト

「嵐山駅はんなり・ほっこりスクエア」の一角にある広場。京友禅の図柄を使った色鮮やかなポールが600本立ち並ぶ。ポールは広場だけでなく駅のホームや線路脇などにも設置されていて、嵐山駅全体がアート作品のよう。施設内には飲食店や土産物店、足湯(200円)もあり、観光客の憩いの場となっている。
キモノフォレスト」のデザインを手がけたのは、インテリアデザイナーの森田恭通氏。
大正時代から続く老舗・亀田富染工場による京友禅をアクリルポールで包み、林に見立てて配置している。
図柄は全部で32種類あり、お気に入りの柄を見つけながら散策や記念撮影を楽しむ人びとで賑わう。

京友禅を竹林に見立てた、フォトジェニックなアート空間
京友禅を竹林に見立てた、フォトジェニックなアート空間

3. 渡月橋

平安時代の9世紀前半に架けられたという橋で、何度も流出しているが、そのたびに架け直されてきた。
鎌倉時代の亀山上皇が橋の上を月が渡るように移動していったことからこの名がつけられたといわれている。
歌川広重や葛飾北斎をはじめ、数々の浮世絵にも取り上げられ、嵐山を代表する風景となった。
現在架かる橋は1934(昭和9)年にコンクリート製で造られたもので、車も通れる強度ある橋だが、伝統的な橋の架け方を踏襲し周辺の風景に調和するように欄干は木製が採用されており、時代劇などで定番のロケ地として使われるほど違和感がない。

葛飾北斎の版画にもなった、嵐山を代表する光景
葛飾北斎の版画にもなった、嵐山を代表する光景

天龍寺に関するよくある質問

Q

天龍寺の桜の見頃は?

A

桜の見頃は3月下旬から4月中旬です。

Q

天龍寺の紅葉の見頃は?

A

紅葉の見頃は11月中旬から12月上旬です。

Q

天王寺の見どころは?

A

数ある見どころの中でも、曹源池庭園・雲龍図・達磨図は必見です。

まとめ

京都で人気の観光地・嵐山の観光スポットの中でも、人気が高い「天龍寺」の歴史と見どころを紹介してきた。
歴史を知った上で「天龍寺」の見どころを巡れば、より深く「天龍寺」の魅力を楽しめるだろう。
「天龍寺」以外にも魅力的なスポットが多い京都では、どこから観光するか迷ってしまうかもしれない。
そんな時は京都の定番観光スポットやグルメを紹介している、こちらの記事もぜひ参考にしてほしい