【日本の世界遺産完全ガイド】魅力・見どころ・場所がこれだけでわかる!
日本には人々の心を魅了する、素晴らしい文化・建造物が全国各地に散らばっている。
なかでもその魅力が凝縮された世界遺産は、間違いなく訪日観光客にお勧めの観光スポットだ。
ただし、日本の世界遺産がどの地域にあり、どんな歴史を持つのかはっきりとわからない人も多いだろう。
この記事では、日本にある全26件の世界遺産の場所・見どころとともに紹介する。
今まで知らなかった日本の魅力を発見できるだけでなく、一度は行ってみたいと思えるはずなので、ぜひ最後まで読んでほしい。
目次
そもそも世界遺産とは?
世界遺産とは、1972年にユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づき、保護すべきリストに登録された、「顕著な普遍的価値」を有する文化財や自然、景観などを指す。
「顕著な普遍的価値」は国籍・地域・時代・世代に関わらず、さらに異なる理念・信仰を持つ人でも、同じように価値を感じられるものだ。
つまり世界遺産は各国の文化や自然の美しさを象徴する、人類共通の貴重な財産と言えるだろう。
世界遺産条約では、世界遺産の保護・保存を国際社会全体の責任と考え、未来への継承を目的としている。
現在も毎年新たな遺産が追加されており、2024年1月現在で1,199件(168の国と地域)の世界遺産がリストに連ねる。
世界遺産の分類
世界遺産は内容によって、以下の3種類に分けられている。
細かく表現する場合はそれぞれ「世界○○遺産」というように表記される。
現在の登録件数は文化遺産(933件)が最も多く、次いで自然遺産(227件)、複合遺産(39件)と続く。
種別 | 対象 | 代表的な世界遺産 |
---|---|---|
文化遺産 | 人類が作り上げた記念物、建造物群、遺跡、文化的景観など | 自由の女神(アメリカ)/タージ・マハル(インド) |
自然遺産 | 特異な地形や地質、貴重な動植物の生息地および生態系など | ガラパゴス諸島(エクアドル)/イルリサット・アイスフィヨルド(デンマーク) |
複合遺産 | 文化遺産と自然遺産の両方の価値を持つもの | マチュ・ピチュの歴史保護区(ペルー)/メテオラ(ギリシャ) |
日本には世界遺産がいくつある?
2024年1月時点で日本の世界遺産は26件。
内訳は文化遺産が21件、自然遺産が5件となる。
日本の世界遺産一覧
日本の世界遺産26件の資産名・所在地・区分を、以下の表にまとめた。
日本旅行で世界遺産を観光したい方は、ぜひ参考にしてほしい。
資産名 | 所在地 | 記載年 | 区分 |
---|---|---|---|
法隆寺地域の仏教建造物 | 奈良県 | 1993年 | 文化 |
姫路城 | 兵庫県 | 1993年 | 文化 |
屋久島 | 鹿児島県 | 1993年 | 自然 |
白神山地 | 青森県・秋田県 | 1993年 | 自然 |
古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市) | 京都府・滋賀県 | 1994年 | 文化 |
白川郷・五箇山の合掌造り集落 | 岐阜県・富山県 | 1995年 | 文化 |
原爆ドーム | 広島県 | 1996年 | 文化 |
厳島神社 | 広島県 | 1996年 | 文化 |
古都奈良の文化財 | 奈良県 | 1998年 | 文化 |
日光の社寺 | 栃木県 | 1999年 | 文化 |
琉球王国のグスク及び関連遺産群 | 沖縄県 | 2000年 | 文化 |
紀伊山地の霊場と参詣道 | 三重県・奈良県・和歌山県 | 2004年 | 文化 |
知床 | 北海道 | 2005年 | 自然 |
石見銀山遺跡とその文化的景観 | 島根県 | 2007年 | 文化 |
小笠原諸島 | 東京都 | 2011年 | 自然 |
平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群― | 岩手県 | 2011年 | 文化 |
富士山―信仰の対象と芸術の源泉 | 山梨県・静岡県 | 2013年 | 文化 |
富岡製糸場と絹産業遺産群 | 群馬県 | 2014年 | 文化 |
明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業 | 福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・鹿児島県・山口県・岩手県・静岡県 | 2015年 | 文化 |
ル・コルビュジエの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献 | 東京都 | 2016年 | 文化 |
「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群 | 福岡県 | 2017年 | 文化 |
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産 | 長崎県・熊本県 | 2018年 | 文化 |
百舌鳥・古市古墳群―古代日本の墳墓群― | 大阪府 | 2019年 | 文化 |
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島 | 鹿児島県・沖縄県 | 2021年 | 自然 |
北海道・北東北の縄文遺跡群 | 青森県・北海道・秋田県・岩手県 | 2021年 | 文化 |
金を中心とする佐渡鉱山の遺産群 | 新潟県 | 2024年 | 文化 |
引用:日本の世界遺産一覧
誰にでもわかりやすく解説!日本の各世界遺産の魅力と見どころ
日本の世界遺産ごとに、登録の背景や見どころ、構成する資産を登録された順番に詳しく紹介していく。
名所からあまり知られていないものまで様々だが、いずれも世界遺産の名にふさわしい魅力的な場所だ。
世界遺産を目的とした日本旅行を楽しむなら、紹介する内容を参考に旅行プランを立ててみよう。
【奈良】法隆寺地域の仏教建造物
「法隆寺地域の仏教建造物」は1993年に「姫路城」とともに、日本で初めて世界文化遺産に登録された。
主に以下の2つが登録の背景に挙げられる。
・世界最古の木造建築「法隆寺」は、仏教建築に見られる優れた設計と装飾美を表す傑作であり、独自に発展を遂げた日本の仏教文化を伝える財産として大きな影響を与えてきたこと
・飛鳥時代(592年~710年)の仏教伝来を示し、中国(東アジア)との交流も伺える重要な建造物という歴史的価値も持っていること
同地域は、「法隆寺」を含む48棟の建造物から構成されており、聖徳太子(しょうとくたいし)と深い縁がある。
金堂や五重塔などの壮大な文化財から、飛鳥時代の息吹を感じ取れるだろう。
これから「法隆寺地域の仏教建造物」を構成する、「法隆寺」と「法起寺」の魅力と見どころを紹介していく。
法隆寺
奈良県の生駒郡斑鳩町にある「法隆寺」は、1,300年以上の歴史を持つ由緒正しいお寺。
聖徳宗(しゅうとくしゅう/仏教宗派のひとつ)の総本山で、聖徳太子ゆかりのお寺としても知られている。
国宝・重要文化財の指定を受けた建造物が約3,000点あり、歴史的・文化的価値が非常に高い。
そんな「法隆寺」の見どころは、「法隆寺式伽藍配置(ほうりゅうじしきがらんはいち)」と呼ばれる独特な建造物の配置だ。
これらの建造物は飛鳥時代(592年~710年)の建築様式や仏教文化を伝える財産として、脈々と受け継がれてきた。
法起寺
「法隆寺」と同じく、奈良県の生駒郡斑鳩町にある「法起寺」。
聖徳太子七大寺のひとつに数えられるが、実際の創建は聖徳太子没後の638年、息子の山背大兄王(やましろのおおえのおう)が開基とされている。
聖徳太子の遺言を受けた山背大兄王が岡本宮を寺に変えたため、「岡本寺」・「池尻寺(地名から)」という別名を持つ。
そんな「法起寺」の見どころは、日本最古と言われる国宝の三重塔だ。
上層に向かって小さくなる独特の逓減(ていげん)構造で造られており、高さ24mからなる美しい姿が人々を魅了する。
また周辺は自然に恵まれ、春には桜、秋にはコスモスが咲き誇り、風情ある景観を作り出す。
その静寂な雰囲気に身を任せ、飛鳥時代に思いを馳せても良いだろう。
【兵庫】姫路城
1993年に「法隆寺地域の仏教建造物」などと共に、日本で最初の世界遺産として登録された兵庫県姫路市の「姫路城」。
1609年に武将・池田輝政(いけだ てるまさ)によって築かれた大天守は5層6階地下1階構造で、現存する江戸時代の建築の天守閣では最大の規模を誇る。
木造建築の最高傑作とも称される天守群などの建築物が良好に保存されており、日本独自の城郭構造を伝える城としても世界から評価されている。
【鹿児島】屋久島
鹿児島県佐多岬の南南西約60kmの位置にある屋久島も、1993年に世界自然遺産に登録された、日本初の世界遺産のひとつ。
周囲132km、面積505k㎡の島は、標高1,936mの九州最高峰の宮之浦岳をはじめ、1,000m超えの山が多い。島の9割が山林で、「洋上アルプス」とも称される。
豊富な降水量に恵まれ、日本の植物7割以上が存在し、固有種もみられるなど、豊かな森林生態系を形成。苔も多く、屋久島の森を美しい緑に染めている。
【青森・秋田】白神山地
秋田県北西部と青森県南西部にわたって広がる、約13haにも及ぶ広大な山岳地帯の総称。エリア内には、太古の昔より人為の影響をほとんど受けていない、世界最大級の原生的なブナ林が点在している。
多種多様な生物が生息・自生し、貴重な生態系が保たれていることから、1993年に世界遺産に登録された。
【京都】古都京都の文化財
京都は平安時代(794年~1185年)から江戸時代(1603年~1868年)まで、日本の首都だった。
1,000年近くに渡って、時代の中心として栄え続けた京都には、現在もなお歴史的に貴重な建造物が残っている。
そんな京都の精神性と美を象徴する17つの文化財(滋賀県の延暦寺も含む)を構成した、「古都京都の文化財」は1994年に世界文化遺産に登録された。
選出理由には、建築様式(国宝)や庭園様式(特別名勝)を今に伝え、時代・文化を代表する資産かつ保護に優れた状況が保たれている点などが挙げられる。
これらの文化財は、単なる観光地以上の価値を持ち、京都の長い歴史が深い感動を与えてくれるだろう。
続いて、「古都京都の文化財」を構成する主な資産の魅力と見どころを紹介していきたい。
上賀茂神社(賀茂別雷神社)
神代の昔、御祭神である賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)が本殿北北西の神山(こうやま)に降臨し、天武天皇白鳳6年の678年に地元豪族の賀茂氏が社殿を造営したことが創祀とされる、京都最古参の神社。
上賀茂神社の社名は通称で、正式には御祭神の名を冠した賀茂別雷神社という。豊かな自然に囲まれた広大な境内には60棟を超える社殿があり、2棟が国宝、41棟が重要文化財の指定を受けている。
音羽山 清水寺
778年に延鎮上人(えんちんしょうにん)により「清水寺」は開山され、798年に坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が仏殿を建立したと伝わる。
音羽山の中腹に広がる13万㎡の境内には、国宝と重要文化財を含め30以上の伽藍や碑がある。
春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪と季節ごとに違った景色に映える清水寺も見もの。
天龍寺
臨済宗天龍寺派の大本山。室町時代初期の1339年、足利尊氏が後醍醐天皇の菩提を弔うため、夢窓国師を開山に創建した。
室町時代には、京都の禅寺のなかでも格式高い「京都五山」の第一位に数えられた由緒をもつ。
後嵯峨天皇の亀山離宮跡地に広がる境内は、日本最初の史跡・特別名勝。
諸堂での見どころは、庫裏の玄関正面に置かれた大衝立の達磨図。
前管長である平田精耕老師の筆によるもので、禅宗の開祖・達磨大師の姿が独特のタッチと表現で描かれている。
古都京都の文化財を構成するその他の文化財
【岐阜・富山】白川郷・五箇山の合掌造り集落
1995年に世界文化遺産に登録された「白川郷・五箇山の合掌造り集落」は、日本の原風景とも言うべき美しい光景が広がる地域。
同集落では、厳しい冬の自然環境、社会的条件に適応するために数々の工夫を凝らし、独自の文化を育んできた。
なかでも、「合掌造り」と呼ばれる独特な建築様式(茅葺き屋根の家々が集まる風景)が有名だ。
急勾配の屋根は雪積もりを防ぐだけでなく、気候に順応すべく様々な機能美が兼ね備えられている。
また、住民同士の協力と助け合いの精神「結(ゆい)」が色濃く残るのも特徴のひとつ。
こういった伝統的な生活様式や貴重な景観が、世界遺産の基準を満たしたことが登録の背景である。
「白川郷・五箇山の合掌造り集落」を構成する資産の中から、観光スポットとして人気を集める場所を紹介しよう。
白川郷 (合掌造り集落)
日本の原風景が今なお残る美しい地域「白川郷」。
合掌造りの建物が最も多く残る地域で、大小あわせて現在100棟余りある(2016年)。
合掌集落の規模としては全国最大で、国の伝統的建造物群保存地区に選定されている。
その中心となる合掌造り集落群は、村の中央からやや北側に位置する荻町地区にある。
伝統文化を体験できる場所や歴史資料館などがあり、自然と共に生きる昔ならではの生活の知恵が垣間見える。
五箇山 相倉・菅沼合掌造り集落
富山県南西端、5つの谷間に点在する40の小さな集落から成る五箇山。
険しい山々に囲まれ、冬には2mを超える雪が降り積もる。
そんな豪雪地帯ならではの建築様式、急勾配の茅葺・切妻屋根が特徴の合掌造り家屋が今も多く点在。
相倉と菅沼の2集落が世界文化遺産に登録。
いずれの集落にも五箇山の生活や歴史を伝える民俗館や体験館のほか、民芸品店や郷土料理が味わえる飲食店などが点在している。
【広島】原爆ドーム
原爆ドームはチェコ出身のヤン・レツルの設計により、1915年4月5日に「広島県物産陳列館」として完成。
しかし、原爆投下の際には爆心地から160mの至近距離で被害を受けた。
むき出しになった鉄骨や、ボロボロになった外壁などが、被爆を受けた当時のままで残されており、いつからか「原爆ドーム」と呼ばれるように。悲惨な歴史を現代に伝える貴重な建物である。
広島県広島市の平和記念公園内にあり、1996年に世界文化遺産として登録された。
【広島】厳島神社
広島県廿日市市の宮島に位置する「厳島神社」。1996年に世界文化遺産に登録された。
593年に佐伯鞍職により創建されたのがはじまりと伝えられている。
境内の社殿のほとんどが国宝や、重要文化財に指定されている。海のなかに立つ大鳥居は2022年に3年半に渡る「令和の大改修」を終えて鮮やかな朱色に蘇り、より迫力のある姿を見せている。
【奈良】古都奈良の文化財
8つの資産からなる「古都奈良の文化財」は、1998年に世界文化遺産に登録された。
1,300年の歴史を誇る奈良は、“日本のはじまりの地”と言われる伝統的な地域。
奈良時代(710年〜794年)に国の中心として栄え、政治的・文化的に日本に変化をもたらした。
現在も「平城京」をはじめ、様々な神社仏閣・仏教・文化財が生活と密接に関わり、人々の生活に息づいている。
これらが登録の理由に挙げられるが、古都奈良の名義という点も特徴だ。
街全体が世界遺産と言っても過言ではなく、一つひとつが重なり合うように奈良の歴史を物語っていると捉えられるだろう。
「古都奈良の文化財」の主な構成資産の魅力、見どころを紹介する。
東大寺
奈良時代、聖武天皇の発願により造立された盧舎那大仏(るしゃなだいぶつ)は752年に開眼供養が行われた。以降40年近くの歳月をかけて伽藍を整えた、奈良を代表する寺院。
「奈良の大仏さま」として親しまれている盧舎那仏坐像が安置される世界最大級の木造建造物、大仏殿をはじめ、東大寺建築のなかで最も古い法華堂(三月堂)、国内最大の山門である南大門など境内には国宝建造物が多数。
元興寺
6世紀末、蘇我馬子によって明日香村に開かれた日本最古の本格的な仏教寺院である飛鳥寺が前身。その後平城京遷都によって平城京内に移され、名前も元興寺に改まった。
8資産群から成る「古都奈良の文化財」のひとつとして、旧僧坊である「極楽堂(極楽坊本堂)」と「禅室(極楽坊禅室)」が世界文化遺産に登録。
そのほかにも国宝に指定されている「五重小塔」をはじめ、様々な寺宝を抱える。
春日大社
奈良時代(710年〜794年)の初め、平城京の守護と国の繁栄のために茨城県の鹿島から武甕槌命が神鹿に乗って御蓋山に降り立ったとされ、768年に御蓋山の麓に御本殿を造営、武甕槌命、経津主命、天児屋根命、比売神の4柱の神様を祀ったことが始まりとされている。
社殿の多くは創建当初から配置が変わっていない。
20年に一度、御社殿を美しくする「式年造替」が行われ、国宝の御本殿4棟を含め摂社・末社62社のすべてが修理され鮮やかな朱塗りに生まれ変わる。
古都奈良の文化財を構成するその他の文化財
- 興福寺
- 春日山原始林
- 薬師寺
- 唐招提寺
- 平城宮跡
【栃木】日光の社寺
1999年に世界文化遺産に登録された「日光の社寺」は、日光市にある建造物と周辺の景観の総称を指し、「日光山内」・「二社一寺」という呼称も持つ。
「日光の社寺」に含まれる建造物は天才芸術家による傑作であり、権現(ごんげん)造りが江戸時代の神社仏閣の見本になった。
また、古くから日光は山岳信仰と神道思想が融合した独特の文化を受け継いでおり、自然と一体となった宗教空間を創り上げてきたことが、選出の背景にある。
徳川家康(とくがわいえやす)や、江戸時代の歴史と文化を紡ぐ、「日光の社寺」は深い感銘を与えるだろう。
ここでは主な資産の魅力と見どころを厳選して紹介する。
日光東照宮
日光東照宮は、江戸幕府初代将軍・徳川家康を祀る神社。
世界遺産「日光の社寺」散策のメインともいえるスポットで、国宝8棟、重要文化財34棟を含む55棟の豪華絢爛な社殿群を見られる。
日本各地から集められた名工により、建物には漆や極彩色がほどこされ、柱などには数多くの彫刻が飾られた社殿は必見だ。
日光二荒山神社
日光二荒山神社は、日光連山の主峰・日光三山を神体山として祀る神社。
福の神・縁結びのご利益でも知られる。
日光山内の入り口を飾る木造朱塗りの美しい橋「神橋」は、二荒山神社の建造物。世界遺産「日光の社寺」の玄関ともいえる橋になっている。
日光山輪王寺
日光山輪王寺はお堂や塔、支院全体の総称である。日光開山の祖である勝道上人が四本龍寺を建てたのが始まりと言われる。
「三佛堂」は日光山最大の規模を誇る木造建造物であり、千手観音・阿弥陀如来・馬頭観音の三体の仏像がまつられている。
【沖縄】琉球王国のグスク及び関連遺産群
「琉球王国のグスク及び関連遺産群」は沖縄に点在する9つの史跡からなり、2000年に世界文化遺産に登録された。
その理由として、琉球文化の歴史を象徴し、農村集落の自然崇拝の役割を担ったグスクが評価されたことが挙げられる。
ちなみに、”グスク”とは城や陵墓、聖域・御嶽(うたき)らを意味する沖縄(琉球)の方言だ。
15世紀~19世紀にかけて栄華を誇った琉球王国は、城壁・門・庭園など様々な部分に独特の様式が見られる。
関連する遺産は琉球王国時代の社会構造や考古学的遺跡を理解する上で、非常に重要かつ現在も沖縄県民の精神的なより所になっている。
「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する資産から3つに絞って、魅力と見どころを紹介したい。
首里城
沖縄県那覇市にある首里城公園内にある「首里城」。
鮮やかな朱色に彩られた日本で唯一の赤い城であり、沖縄のシンボル的存在である。
かつて1429年から1879年までの450年間にわたり存在した「琉球王国」の政治、外交、文化の中心地として威容を誇った首里城。
2019年10月31日の火災によって、「首里城正殿」は再び焼損。その他7棟の建造物も焼損した。
国内外から集まる支援金によって復旧・復興作業が行われ、2026年の復元を目指している。
今帰仁城跡
沖縄本島の北部、本部半島にある城跡。琉球が北山、中山、南山の3つの地域に分かれて勢力争いをしていた三山時代の北山王の居城で、築城は13世紀と伝わる。
現在も残る城壁の長さは約1.5km、高さは最も高い所で8mあり、城の規模は約7.9haと「首里城」に匹敵する広さ。
城内は10の郭からなり、城門から正殿などがあったとされる大庭まで石畳道が続いている。
玉陵
沖縄県那覇市に位置する玉陵(たまうどぅん)
1501年、琉球王国最盛期と名高い尚真王(しょうしんおう)の時代に建てられた陵墓。
首里城をモデルにしたという巨大な石造りで、遺骨が埋葬されている墓室が東西3つに分かれているのが特徴。
玉陵に眠る王族の名が刻まれた玉陵碑をはじめ、1501年創建当初の遺構がそのまま残っている。
琉球王国のグスク及び関連遺産群を構成するその他の文化財
- 座喜味城跡
- 勝連城跡
- 中城城跡
- 園比屋武御嶽石門
- 識名園
- 斎場御嶽
【三重・奈良・和歌山】紀伊山地の霊場と参詣道
「紀伊山地の霊場と参詣道」は、和歌山県・奈良県・三重県にまたがる3つの霊場とそれらに続く参詣道で構成される。
この地域は太古から「神の宿る場所」として崇められ、1,000年以上に渡って自然崇拝の信仰者を惹きつけてきた。
また、神道・仏教・修験道など多様な信仰が交わる場でもあり、日本人の文化的・精神的な発展において重要な役割を果たしてきた。
これらの自然と信仰が織りなす文化的景観を形成する事例は他になく、極めて高い価値を有している。
世界遺産の中で道が選ばれるのは珍しいが、以上のような背景から2004年に世界文化遺産に登録された。
「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する主な資産の特徴や、注目すべきポイントを紹介しよう。
熊野本宮大社
家都美御子大神(けつみみこのおおかみ)が主祭神で、日本の第10代天皇・崇神天皇の時代に創建。
古くから上流階級のみならず武士や庶民らからも信仰を集め、参拝者らが全国よりこの地を目指し、大人数がぞろぞろと列をなして進む様子から「蟻の熊野詣」と例えられるほどだったそう。
熊野古道
熊野古道とは、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、那智山青岸渡寺の総称)へと続く参詣道で、熊野信仰が高まると皇族らがこの道を使って熊野詣を行い、その流れはいつしか庶民にも広がったという。
ルートは大きく5つに分類。
そのうち「紀伊路」「中辺路」「大辺路」「小辺路」が「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産である。
日本の宗教・文化の発展と交流に大きな影響を及ぼした自然崇拝を起源とする熊野をマナー良く心穏やかに体感しよう。
吉野山
日本一の桜の名所として知られる吉野山。
春の吉野山は下千本から徐々に桜が開花してゆき、奥千本まで吉野山全体を美しく彩る。
秋には紅葉の名所としても知られる。標高差があるので、山頂から麓へと徐々に色づいていく様子を見ることが可能。
紅葉を楽しみつつ、寺社・仏閣巡りとともにハイキングも楽しむのもお勧め。
紀伊山地の霊場と参詣道を構成するその他の文化財
- 吉野水分神社
- 金峯神社
- 金峯山寺
- 吉水神社
- 大峰山寺
- 熊野速玉大社
- 熊野那智大社
- 青岸渡寺
- 那智大滝
- 那智原始林
- 補陀洛山寺
- 丹生都比売神社
- 金剛峯寺
- 慈尊院
- 丹生官省符神社
- 大峯奥駈道
- 高野参詣道
【北海道】知床
北海道の東北端に位置する「知床(しれとこ)」は、2005年に世界自然遺産に登録された。
オホーツク海に面す知床半島を中心とした、総面積約71,100ヘクタールもの広大なエリアには、美しい山・海・森・湖沼などが点在する。
これらの自然は動植物と密接に関わり、流氷がもたらす豊かな栄養分によって、独特の生態系が支えられているのが特徴。
また、シレトコスミレ・シマフクロウといった絶滅危惧種、マッコウクジラ・シャチなどの希少種も数多く生息しており、地球全体でも重要な場所だと評価され登録に至った。
そんな「知床」の魅力かつ見どころは、原始的な美しさを残す手つかずの自然の宝庫だ。
なかでも、絶景が望める「知床五湖」・「オシンコシンの滝」はお勧めしたい。
【島根】石見銀山遺跡とその文化的景観
2007年に世界文化遺産に登録された「石見銀山遺跡とその文化的景観」は、江戸時代前期に発展した銀山を含む周辺の景観。
戦国期の象徴とも言える同地域は、最盛期に世界の銀の1/3を産出しており、日本のみならず世界史を語る上でも欠かせない史跡と言えるだろう。
登録の背景には、以下の3つの観点が挙げられる。
1. ヨーロッパ諸国やアジアの文化、経済に影響を与えたこと
2. 銀生産に関わる工房や坑道やなどの遺跡の状態がよく、豊富に残されていること
3. 自然環境を破壊せずに鉱山運営・管理を行い、文化的景観を今に伝えていること
現在も周辺一帯には人々が生活し、暮らしが根付いているため、人の温かみや懐かしい雰囲気が味わえるのが魅力だ。
「石見銀山遺跡とその文化的景観」を構成する資産の中でも、ぜひ訪れてもらいたいスポットの見どころを紹介しよう。
石見銀山 大森エリア・銀山エリア
大森地区と銀山地区は、仙ノ山一帯に広がる採掘と経済の中心地であった。
大森地区は、銀山運営を基にした政治経済の中心地で、代官所や武家屋敷などが並ぶ。
銀山地区は、戦国時代から大正時代まで採掘から製錬までをすべて手作業で行っていた場所だ。当時の採掘坑道である900ヵ所にものぼる間歩や製錬所、鉱夫の住所跡や寺社などが数多く残る。
温泉津
豊かな自然に囲まれた港町「温泉津(ゆのつ)」は、江戸(戦国)時代から銀の積出港として栄えた温泉街。
最大の魅力はノスタルジックな雰囲気を醸し出す街並み。
同地域は重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、古民家や温泉宿が建ち並ぶ光景からは古きよき日本の風情が漂う。
かつての面影を感じながら散策するのにもピッタリだ。
また、独特な赤瓦や渋さが光る黒の瓦で作られた、特産の石州瓦が印象的な「温泉津温泉」も見どころのひとつ。
夕暮れ時や紅葉が彩る一帯の言葉にできない美しさが心を満たし、泉質の良さで知られる自然湧出の源泉が旅路の疲れを癒してくれる。
石見銀山遺跡とその文化的景観を構成するその他の文化財
- 代官所跡
- 矢滝城跡
- 矢筈城跡
- 石見城跡
- 宮ノ前
- 熊谷家住宅
- 羅漢寺五百羅漢
- 石見銀山街道鞆ケ浦道
- 石見銀山街道温泉津・沖泊道
- 鞆ケ浦
- 沖泊
【東京】小笠原諸島
東京都心からおよそ1,000キロメートル南南東に位置する「小笠原諸島」は、太平洋上に浮かぶ30ほどの島々からなるエリア。
この内、有人島は父島と母島のみで、集落地などを除いた陸域と一部の海域が世界遺産の区域に該当する。
なお、東京から父島までは定期船(3~6日に1便運航)で約24時間かかる。
「小笠原諸島」の最大の特徴は、誕生からこれまでずっと大陸から断絶している「海洋島」であること。
独自の進化を遂げた固有種が多く、カタツムリやムニツツジなど、小笠原にしか見られない動植物が生育・生息している。
「東洋のガラパゴス」とも称されるこの生態系が高い評価を受け、2011年に世界自然遺産に登録された。
見どころには、絶景スポット巡り・マリンアクティビティをお勧めしたい。
コバルトブルーの海に青い空は格別で、記憶に残る体験ができる。
【岩手】平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―
「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」は、岩手県の南西部・平泉に位置する遺跡群の名称である。
平泉には浄土思想(死後に極楽浄土に生まれる)に基づいた、遺跡群が良好に保存されている。
これは平安時代に奥州藤原氏によって栄え、仏国土(仏が住む国)の理想郷を創り出そうとした優秀な意匠で、他にはない日本で独自の発展を遂げたものである。
考古学的な価値、東アジア地域との文化交流を示す貴重な一群としての評価を受け、2011年に世界文化遺産に登録された。
現在も民俗芸能や宗教儀礼に脈々と受け継がれており、外観の美しさに加えて、息づく歴史と文化の深さに平泉の魅力が見えるだろう。
「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」を構成する資産の一部を詳しく紹介する。
中尊寺
850年に開かれた寺で、3,000点以上の国宝・重要文化財を所有。
かつて東北地方で続いた戦乱によって亡くなった人々の霊を敵味方なく慰め、平和な社会になるように、という強い願いが込められている。
敷地内にはいくつかの建物があるが、中でも「金色堂(こんじきどう)」は、建物や仏像が黄金色に輝き、一つの美術工芸品のような美しさで人気を集めている。
毛越寺
「特別史跡」と「特別名勝」、国から二重に指定されている毛越寺には、平安時代の仏教建築物の礎石などの遺構が数多く残っており、当時は堂塔40、僧坊は500を数え、中尊寺を超えるほどの規模であったといわれている。
浄土庭園もほぼ完全な状態で保存されており、およそ800年前の世界を感じられる貴重な場所。
平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―を構成するその他の文化財
- 観自在王院跡
- 無量光院跡
- 金鶏山
【山梨・静岡】富士山―信仰の対象と芸術の源泉
静岡県と山梨県にまたがる日本最高峰(標高3,776m)の富士山は、古くから繰り返す火山活動によって、人々の畏敬を集めてきた。
自然の一部ながらも人との共生を通じて、信仰・文化を発展させた神秘的な姿が富士山の稀有な特徴だ。
また、円錐形をした美しいシルエットは浮世絵師・葛飾北斎(かつしかほくさい)の「富嶽三十六景」を筆頭に、国内外の芸術家にインスピレーションを与えている。
こうして、2013年に「信仰の対象」、「芸術創作の原点」としての価値が認められ、「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」名義で世界文化遺産に登録された。
富士山を中心に「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」を構成する、主な資産の見どころを紹介しよう。
富士山
山梨県と静岡県に跨る富士山は、標高3,776mの日本一高い山。日本の象徴ともされる名山である。
昔から、火山活動を繰り返す富士山には神仏が宿るとされ、山頂を仰ぎ見て拝み、また噴火が鎮まると多くの修験者が山頂へ登り登拝するようになった。
また、円錐形の美しい形の山であり、数々の絵画や文学の題材にされてきた。
正確には富士山域が構成資産であり、山頂の信仰遺跡群、大宮・村山口登山道、須山口登山道なども含まれる。
富士山本宮浅間大社
富士山の御祭神・木花之佐久夜毘売命(このはなさくやひめのみこと)を主祭神とする、全国に1,300余ある浅間(せんげん)神社の総本宮。
その起源は紀元前27年まで遡り、現在の地に社が建てられたのは806年である。
約17,000坪の境内には、慶長9年(1604)に徳川家康により造営、国の重要文化財に指定される「浅間造り」と呼ばれる二階建ての珍しい「本殿」など見どころが豊富。
河口湖
富士五湖のひとつとして知られており、富士山の絶景が楽しめることから人気のスポットである河口湖。
湖畔には春には桜が咲き誇り、初夏には紫のラベンダー、秋には紅葉と、季節ごとに違った美しい景色が広がる。
また、富士五湖で唯一となる「島」と「橋」が存在することでも知られる。
富士山―信仰の対象と芸術の源泉を構成するその他の文化財
- 山宮浅間神社
- 村山浅間神社
- 須山浅間神社
- 冨士浅間神社(須走浅間神社)
- 河口浅間神社
- 冨士御室浅間神社
- 御師住宅(旧外川家住宅)
- 御師住宅(小佐野家住宅)
- 山中湖
- 忍野八海(出口池・お釜池・底抜池・銚子池・湧池・濁池・鏡池・菖蒲池)
- 船津胎内樹型
- 吉田胎内樹型
- 人穴富士講遺跡
- 白糸ノ滝
- 三保松原
【群馬】富岡製糸場と絹産業遺産群
群馬県富岡市を含む4都市群からなる、「富岡製糸場と絹産業遺産群」は2014年に世界文化遺産に登録された。
同遺産の存在をひと言で表すならば「日本の近代化の象徴」だ。
外国との交流が増えた明治時代(1868年~1912年)初期、絹産業に近代西欧技術を導入し、政府は生糸生産を主要産業として力を入れた。
最適な養蚕の環境と広大な土地を持つ富岡市に富岡製糸場が建てられると、当時は難しかった高品質で大量の絹の生産を可能にした。
世界との技術交流に貢献し、技術革新によって近代化を大きく進めたことが評価されている。
ここでは、「富岡製糸場と絹産業遺産群」を構成する主な資産「富岡製糸場」の魅力を紹介する。
富岡製糸場
富岡製糸場の歴史は古く、明治維新後まで遡る。
当時、明治政府は産業や科学技術の近代化を計画。その資金を調達するために力を入れたのが、生糸の輸出だった。そして1872年に日本初となる本格的な器械製糸場として、この「富岡製糸場」が建てられた。
敷地内には国宝に指定されている繰糸所、東置繭所、西置繭所のほか、重要文化財である蒸気釜所などがあり、その姿は設立当初からほぼ変わっていない。
富岡製糸場と絹産業遺産群を構成するその他の文化財
- 田島弥平旧宅
- 高山社跡
- 荒船風穴
【九州一部・山口・岩手・静岡】明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業」は、8県(岩手・静岡・山口・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島)に点在する遺産群。
いずれも日本の伝統技術と西洋諸国から導入した技術を融合させ、短期間(幕末から明治初期)で、産業化を成し遂げた歩みを示すものだ。
世界規模で見ても、非西洋国で初の産業国家の成功例であると認められ、2015年に世界文化遺産に登録された。
現在も稼働する遺産も含まれており、その歴史的価値は計り知れない。
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業」を構成する主な資産の見どころ、魅力を紹介していく。
萩城下町
1604年、毛利輝元が萩城を築いて以来、260年間にわたって36万石の城下町として栄えた町、萩。
白壁やなまこ壁(土蔵などに用いられる日本伝統の壁塗りの様式)、黒板塀の美しい町並みは、「江戸時代の地図がそのまま使える」と言われるほど江戸時代の町筋がそのまま残り、当時の風情が色濃く残る。
松下村塾
吉田松陰(よしだ しょういん)が江戸時代末期に主宰した私塾。
身分や階級に関係なく塾生を受け入れ、教えた期間はわずか1年余りだったが、久坂玄瑞、高杉晋作、伊藤博文、山県有朋、山田顕義、品川弥二郎など、明治維新と明治新政府に活躍した多くの逸材を輩出した。
松下村塾の建物は江戸時代末期当時のまま保存されている。
軍艦島(端島)
端島、通称「軍艦島」は、長崎港から約18kmの海上にある無人島。
島の周囲がコンクリートの岸壁で覆われ、高層アパートが建ち並ぶその外観が軍艦「土佐」に似ていることから「軍艦島」と呼ばれている。
この島では、1810年頃に石炭が発見されて以来、長い間石炭が採掘されていた。
1960年には約5,300人もの人が島に住んでいたが、国の主要エネルギーが石炭から石油へと移行したことにより、1974年1月に端島炭坑は閉山。同年4月には全ての居住者が島を去り、無人島となった。
老朽化が進む廃墟の島ならではの雰囲気に、多くの人々が魅了されている。
明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業を構成するその他の文化財
- 萩反射炉
- 恵美須ヶ鼻造船所跡
- 大板山たたら製鉄遺跡
- 旧集成館
- 寺山炭窯跡
- 関吉の疎水溝
- 韮山反射炉
- 橋野鉄鉱山
- 三重津海軍所跡
- 小菅修船場跡
- 三菱長崎造船所第三船渠
- 三菱長崎造船所ジャイアント・カンチレバークレーン
- 三菱長崎造船所旧木型場
- 三菱長崎造船所占勝閣
- 高島炭坑
- 旧グラバー住宅
- 三池炭鉱・三池港
- 三角西港
- 官営八幡製鐵所
- 遠賀川水源地ポンプ室
【東京】ル・コルビュジエの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献‐
2016年に世界文化遺産に登録された「ル・コルビュジエの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献‐」は、建築家・ル・コルビュジエの作品群。
主にフランスで活躍したル・コルビュジエは、「近代建築の三大巨匠」として知られ、近代建築・都市計画に大きな影響を与えている。
”近代建築の5原則(ピロティ、横長の窓など)”、”ドミノシステム”など、作品を通じて提案した新しい空間の利用法は社会問題の解決の糸口にもなった。
ル・コルビュジエが設計した東アジアにおける唯一の建築物という点などが評価され、東京にある「国立西洋美術館」も構成資産に選ばれた。
同美術館は、ゴッホ・ルノワール・ピカソといった巨匠の美術作品を鑑賞できるほか、建物自体の芸術価値も高く、見どころに尽きない。
【福岡】「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群
福岡県に位置する「「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群」は、古代から続く神聖な自然信仰の場として知られる。
そんな歴史的価値と信仰への純粋性・継承性が評価を受け、2017年に世界文化遺産に登録された。
特に1500年以上に渡り崇拝の対象となっている沖ノ島では、4世紀末から現代まで奉納品が受け継がれており、日本文化の形成に多大な貢献している。
一般人の立ち入りは原則禁止で、神秘的なベールに包まれている点も魅力だ。
ここでは、「「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群」を構成する主な資産である「宗像大社」の見どころを紹介しよう。
その他の構成資産には、「宗像大社沖津宮遙拝所」・「新原・奴山古墳群(しんばる・ぬやまこふんぐん)」が含まれる。
宗像大社
日本神話にも登場する日本最古の神社のひとつ。御祭神は天皇の先祖神である天照大神の御子神、宗像三女神。
日本各地に約6200社ある宗像神社、厳島神社、宗像三女神を祀る神社の総本宮だ。
皇室の繁栄、国家守護を司ってきており、現在では航海や道路の安全をはじめ、人生や芸事、健康などあらゆる「道」の最高神として古くから信仰を集めている。
宗像大社は沖ノ島にある「沖津宮」、大島の「中津宮」、宗像の「辺津宮」の海を隔てて結ばれる3宮から成り、それぞれが世界遺産の構成資産として登録されている。
【長崎・熊本】長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
長崎県および熊本県の天草地方に位置する「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、キリスト教禁教政策下で信仰を守り続けた人々の歴史を物語る貴重なエリア。
信仰の自由を求めて苦難に耐えた潜伏キリシタンたちの生活が息づき、日本ならではのキリスト教文化が今も残る。
250年以上も密かに信仰を継続し、独自の宗教的伝統を育んだ物証はほかにはみられず、普遍的価値があるとして、2018年に世界文化遺産に登録された。
12の構成資産は、キリシタンたちがどのように信仰を継続し、また禁教令解除後にどのように変化したかを示している。
ここでは主な構成資産を2つに絞って魅力を紹介しよう。
天草の﨑津集落
天草諸島の南西部に位置する「天草の崎津集落」は、禁教期に仏教・神道・キリスト教が共存し、潜伏キリシタンの信仰が密かに受け継がれた場所。
日本の渚百選・日本のかおり風景にも名を連ねる魅力を持ち、穏やかな海と緑豊かな自然に囲まれた風景が人々に静寂をもたらす。
見どころは同集落のシンボルとも言える「崎津教会」。
1934年に建てられた重厚感のあるゴシック様式の教会で、日本と西洋が融合した独特な雰囲気が漂う。
デザインの凝った外観の美しさに加えて、教会内部(拝観は要予約)は国内でも珍しい畳敷きで、鮮やかなステンドグラスが優しい光を放つ。
撮影は原則禁止されているため、神聖な空間はぜひその目に収めてほしい。
大浦天主堂
在留外国人のために建てられた大浦天主堂。
正式名称は「日本二十六聖殉教者聖堂」といい、1597年に殉教した二十六聖人に捧げられた教会で、殉教の地である西坂に向けて建てられている。
フランス人宣教師フューレ神父とプティジャン神父による設計、施工は小山秀之進で1864年に竣工。レンガ造りながら表面は漆喰塗りの和洋混在のゴシック教会である。
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産を構成するその他の文化財
- 原城跡
- 平戸の聖地と集落(春日集落と安満岳,中江ノ島)
- 外海の出津集落
- 外海の大野集落
- 黒島の集落
- 野崎島の集落跡
- 頭ヶ島の集落
- 久賀島の集落
- 奈留島の江上集落(江上天主堂とその周辺)
【大阪】百舌鳥・古市古墳群‐古代日本の墳墓群‐
大阪府堺市に位置する「百舌鳥エリア」と、羽曳野市・藤井寺市に位置する「古市エリア」に密集する古代日本列島を支配した王たちの古墳群。
2019年に大阪初の世界文化遺産に登録された。
古墳とは古墳時代(3世紀中頃から6世紀後半)に造られた土を高く盛り上げた墳丘を持つ墓のこと。百舌鳥・古市古墳群は4世紀後半から5世紀後半にかけて、古代日本の政治文化の中心地のひとつであった大阪平野に築造された。
バラエティ豊かな墳形や大小異なる古墳群は、いにしえの政治・社会の構造が表現された建築として歴史ロマンが詰まっている。
【鹿児島・沖縄】奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、九州の南端部から約1,200キロメートルに渡って、点在する琉球列島の一部。
総面積は4万2698ヘクタールにのぼり、鹿児島県と沖縄県にある全4島からなる。
いずれも亜熱帯雨林に覆われる特徴的な地域で、美しい自然と固有の生態系を形成している。
絶滅の恐れのある種の生息地を含み、生物多様性の保全にとって重要かつ意義深いとして、2021年に世界自然遺産に登録された。
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」から3島の見どころと魅力を紹介しよう。
奄美大島
鹿児島の離島で最大の島。亜熱帯植物に彩られた深い森とエメラルドグリーンのサンゴ礁の海が広がる。
ホエールウォッチングやダイビングをはじめとするマリンアクティビティが盛ん。希少動物が生息する大自然が大きな魅力。
徳之島
鹿児島の奄美群島に属する離島のひとつ。
ヨナマビーチの透明な海やムシロ瀬の壮大な岩場・海岸線、東シナ海と太平洋を同時に見渡せる金見崎展望所など、至るところに美しい絶景が広がる。
海に生息するサンゴ礁、ウミガメ、熱帯魚らの姿を観察できるのも魅力。
また約500年の歴史を持つ闘牛をはじめ、独特な食文化・地域性を形成する「長寿の島」としても有名だ。
西表島
沖縄県の八重山列島のひとつに数えられ、沖縄本島に次いで2番目に大きい「西表島(いりおもてじま)」。
約90%が亜熱帯の原生林に覆われており、天然記念物のイリオモテヤマネコをはじめ、希少で多様な動植物が生息する。
場所・天候・時間で異なる表情を見せるため、散策しているだけでも楽しめるだろう。
もちろん、マリンスポーツや植物園、水牛車ツアーなど、冒険心をくすぐるアクティビティも満載だ。
【北海道・青森・岩手・秋田県】北海道・北東北の縄文遺跡群
「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、縄文時代(紀元前約1万8000年頃〜紀元前300年)の文化を残す遺跡群。
資源・環境に恵まれた1道3県(北海道・青森・岩手・秋田)に点在する対象地域には、約1万年以上の間、採集・狩猟などにより生活した跡が見られる。
稲作が始まる前の縄文文化の構築、縄文人の豊かな精神性・知性が感じられる貴重な遺跡としての評価を受け、2021年に世界文化遺産に登録された。
「北海道・北東北の縄文遺跡群」を構成する主な資産である「三内丸山遺跡」の魅力を紹介しよう。
三内丸山遺跡
青森県青森市にある縄文時代の大規模集落遺跡。
縄文時代前期から中期(約5900~4200年前)の竪穴建物跡や掘立柱建物跡(いずれも大型を含め)、墓、捨て場、道路などが調査され、集落全体の様子や当時の自然環境などが判明している。
敷地内には復元された大型掘立柱建物(六本柱)や大型竪穴建物、竪穴建物などが建ち並んでいる。大型竪穴建物などは内部見学も可能だ。
北海道・北東北の縄文遺跡群を構成するその他の文化財
大平山元遺跡
垣ノ島遺跡
北黄金貝塚
田小屋野貝塚
二ツ森貝塚
大船遺跡
御所野遺跡
小牧野遺跡
入江貝塚
伊勢堂岱遺跡
大湯環状列石
キウス周堤墓群
大森勝山遺跡
高砂貝塚
亀ヶ岡石器時代遺跡
是川石器時代遺跡
【新潟】金を中心とする佐渡鉱山の遺産群
新潟県にある「佐渡鉱山」は400年以上に渡って、金と銀の採掘が続けられた遺産群。
かつて「黄金の国ジパング」と称された日本において特に重要な役割を果たした。
16世紀中頃から本格的な開発が始まり、江戸時代には日本最大の金銀山として幕府の財政を支えた歴史を持つ。
最盛期には約5万人が暮らす鉱山都市・相川が形成され、明治時代の日本の近代化にも貢献。
佐渡で確立された鉱山技術や経営方法は、他の国内鉱山開発にも大きな影響を与えた。
多様な技術が見られる遺跡群が良好な状態で残っていることが評価を受け、2024年に世界遺産に登録。
金を中心とする佐渡鉱山の遺産群を構成する文化財
- 西三川砂金山
- 鶴子銀山
- 相川金銀山
世界遺産に登録される可能性のある4つの候補地
「暫定一覧記載遺産」とは、将来的に世界遺産への登録を目指す資産候補の一覧を指す。
各国が推薦・計画する文化財・物件などを記載し、ユネスコに提出される。
リストには現在4件の日本の世界遺産候補地が含まれている。一覧は以下の表にまとめた。
資産名 | 所在地 | 区分 |
---|---|---|
古都鎌倉の寺院・寺社ほか | 神奈川県 | 文化 |
彦根城 | 滋賀県 | 文化 |
飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群 | 奈良県 | 文化 |
平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-(拡張) | 岩手県 | 文化 |
【神奈川】古都鎌倉の寺院・寺社ほか
神奈川県に位置する鎌倉は武家政権が初めて誕生した都市である。
約150年間に渡って鎌倉時代(1185年~1333年)が続き、江戸幕府が消滅した1868年まで栄えた武家文化の礎を築いた。
江戸は東京となって近代都市に生まれ変わったため、鎌倉が武家文化の歴史を色濃く残す唯一の地域となった。
「鶴岡八幡宮」・「建長寺」・「鎌倉大仏」といった遺産群は、武家政権の精神的支柱として非常に価値が高いとされている。
これらを背景に1992年に暫定リストに登録され、2013年には日本政府が単独で推薦するも、不登録が勧告された。
現在は「古都鎌倉の寺院・寺社ほか」名義で、世界遺産登録を目指している。
【滋賀】彦根城
別名金亀城(こんきじょう)とも呼ばれる彦根城は、1600年に関ケ原の戦いに勝利し、1603年に江戸幕府を開いた徳川家康の命により、徳川四天王の一人、井伊直政が築城を開始。
1604年から約20年の歳月をかけて1622年に直政の子、直継の代で完成した。
彦根山山上に佇む天守は、国内に現存する12城のうちのひとつで、1952年には附櫓や多聞櫓とともに国宝に指定。
天守内部の見学も可能で、琵琶湖までが一望できる最上階からの景色は必見だ。
約260年間続いた江戸時代の安定した社会秩序の政治の仕組みを象徴する城として、世界遺産の候補地となっている。
【奈良】飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群
「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」は、奈良県の飛鳥地方にある文化財・遺産群。
飛鳥時代から奈良時代にかけて日本の首都だった「飛鳥・藤原」には、「飛鳥宮跡」をはじめ、多くの重要な史跡や遺跡が残されている。
特別史跡の「石舞台古墳・キトラ古墳・高松塚古墳」も含まれており、古代文化や政治、宗教などの姿を生々しく伝える。
これらはわずか100年という短期間に、中央集権体制国家が日本で誕生したことを示す傑出した文化資産だという。
歴史的風土・考古学的遺跡の両者が織りなす文化的景観としても優秀と考えられるため、世界遺産に推薦された。
最短で2026年の登録を目指し、県・関係自治体が尽力している。
【岩手】平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-
2011年に世界遺産に登録された「平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-」だが、審議の過程で除外となった遺跡群も存在する。
岩手県ではさらなる価値を世界にアピールするために拡張申請している。
拡張内容には含まれる遺産群は、「柳之御所遺跡」・「達谷窟(たっこくのいわや)」・「骨寺村荘園遺跡」・「白鳥舘遺跡」・「長者ヶ原廃寺跡」の5つ。
いずれも平泉の多様な価値を広く伝える重要資産であるが、協議の結果「柳之御所遺跡」のみを推薦候補とし、他4資産は継続候補の扱いに決まった。
「柳之御所遺跡」は古くから、藤原清衡・基衡(ふじわらのきよひら・もとひら)の屋敷跡として伝えられてきた。
さらに1988年に開始した緊急発掘調査で、質と量が際立った堀や池、掘立柱建物跡の発見が相次いたことから、奥州藤原氏の「平泉館(歴史書・吾妻鏡に記される政庁)」に該当する可能性が高まっている。
日本の世界遺産に関するよくある質問
Q
日本には世界遺産がいくつあるの?
2024年7月時点で26件(文化遺産21件/自然遺産5件)の世界遺産が日本にあります。
Q
世界遺産が多い地域はどこ?
日本では3件が登録されている岩手県・奈良県・鹿児島県が最多です。
Q
今後、世界遺産に登録される可能性があるものを教えて
日本政府は「彦根城(滋賀県)」と「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群(奈良県)」を優先候補に選んでいます。
まとめ
この記事では、日本にある全26件の世界遺産の見どころを中心に紹介してきた。
人々が長い文化を紡ぎ、受け継いできた世界遺産には、何度でも訪れたくなる普遍的な価値がある。
変わらない大自然、郷愁を感じる街並み、独自の生態系など、一つひとつが異なる魅力を放っている。
その土地に足を踏み入れれば、地球の歴史を深く感じられるだろう。
気になった世界遺産にはぜひ一度は行ってほしい。